所属：阪大サイバーメディアセンター

概要：不純物などの外的乱れなしで起こるスピングラス転移が、Y2Mo2O7というパイロクロア酸化物において30年ほど前から実験的に知られており、興味が持たれてきた。そのメカニズムは、理論的には未解明であった。我々はこの系におけるガラス転移に関する微視的理論模型を導出し、その性質を大規模モンテカルロシミュレーションによって明らかにした。具体的には、OCTOPUS上で、MPIを用いたノード内(48コア)並列計算を行った。用いた手法はレプリカ交換モンテカルロ法で、プロセス毎に温度の異なるレプリカのシミュレーションを行いつつ、プロセス間で温度の交換を行うというものである。本研究の結果、Y2Mo2O7においてスピンと軌道自由度が同時にガラス転移を示すことを発見した。

論文掲載,発表実績:
（学術雑誌掲載論文）

• Kota Mitsumoto, Chisa Hotta and Hajime Yoshino, Phys. Rev. Lett. 124, 087201 (2020).

（その他）

• 光元亨汰, 吉野元　「ランダムネスを含まないフラストレート磁性体におけるスピングラス転移の平均場理論」
  日本物理学会、岐阜大学、2019年9月13日.
• Kota Mitsumoto, Chisa Hotta and Hajime Yoshino, "Spin-glass transition without quenched randomness in a dynamically distorted pyrochlore magnet", Frontiers of statistical physics, Univ. Tokyo, June 7th, 2019.
• Kota Mitsumoto, Chisa Hotta and Hajime Yoshino, "Simultaneous spin and orbital glass transitions in a model frustrated pyrochlore magnet without quenched disorder", Computational Approaches to Quantum Many-body Problems 2019, ISSP Univ. Tokyo, August 5th, 2019.
• Kota Mitsumoto, Chisa Hotta and Hajime Yoshino　"Simultaneous spin and orbital glass transitions in a model frustrated pyrochlore magnet without quenched disorder" 2019 International Workshop on Glass Physics in Beijing
  ,ITP-CAS (Beijing, China), Sept 26th, 2019.