マルチGPU環境における大規模神経回路シミュレーション高速化の検討

 

氏名:寺西勇裕,置田真生,伊野文彦

所属:大阪大学 大学院情報科学研究科

概要:本研究の目的は大規模なスパイキングニューラルネットワーク(SNN)シミュレーションの高速化である.マルチGPUを用いた大規模なSNNモデルの実行において,性能低下の主な要因となる通信処理を効率化し,総実行時間を削減する.提案手法は神経回路の特性に着目し,即時に伝達する必要のない神経活動に関する通信を遅延させ,GPU上の計算とオーバラップする.通信の一部を計算処理で隠蔽することでシミュレーション性能の向上を目指す.マカク視覚野モデル(400万ニューロン)に提案手法を適用し,正しいシミュレーション結果を得られることを確認した.提案手法によって,通信におけるデータ転送の約99%を隠蔽できたが,当初期待していた性能向上は達成できなかった.この原因は,GPU間の計算負荷の不均一によって生じた通信の待ち時間を隠蔽できないためだと判明した.今後は負荷分散の改善に取り組み,本手法と組み合わせることで高速化を期待する.

 




Posted : 2023年03月31日