過冷却条件の液体乱流における凝固組織構造の形成メカニズムの解明

 

氏名:太田貴士

所属:福井大学

概要:本研究では,液体乱流の過冷却凝固における凝固組織および凝固要素の構造の形成メカニズムの解明を目指した.そのために,壁乱流の直接数値シミュレーションとフェーズフィールド法を組み合わせて,過冷却条件において発達した壁乱流が凝固する様子を再現した.このとき,研究成果が計算条件の設定に依存しないことを示し,過去の研究に対して,計算領域の大きさと格子解像度の設定を見直した.さらに,固液混相の流れ場における流体の粘度の設定法を改良した.そして,乱流構造と凝固組織形態の関係性を観察し,過冷却条件の液体乱流における凝固組織構造の形成メカニズムを解明した.以上のような研究過程において,独自の解析手法の実現により可能になった大規模数値シミュレーションで凝固組織の形成メカニズムと乱流構造の関係性を調べたことにより,次の成果を得た.
 過冷却凝固開始時に発達した壁乱流における高速ストリークとヘアピン渦の存在によって,その後の凝固要素の分布が決まる.すなわち,乱流特有の空間スケールである粘性長さスケールで特徴づけられる乱流構造に応じた凝固組織が形成される.そして,形成された凝固組織は,乱流構造を選択的に変化させ,変化した乱流構造に対応して,新たな凝固要素が形成される.また,析出した凝固要素は,過冷却流体の影響を受け,特徴的な形状に成長する.これらの液体乱流中で形成される凝固組織の構造的特徴は,流れ条件に依存せず,異なるレイノルズ数においても,同様の傾向が見られる.以上のことより,凝固組織構造と乱流構造の関係性から,液体乱流における凝固組織構造の形成メカニズムを解明した.これらの成果の発展には,乱流構造の空間的な特徴と関連づけて,流れ場の熱伝達特性や流動抵抗の変化,材料強度に関する問題などの工学的な課題の解決に寄与できる.

 

論文掲載,発表実績:
(学術雑誌掲載論文)

  • Takashi Ohta, Futaro Shirahata, "Friction drag model for axial turbulent flow along the surface of a circular cylinder based on the universal characteristics of wall turbulence", Journal of Fluid Mechanics, Vol.1000, pp.A35, Dec. 2024

 

(国内研究会等発表論文)

  • 野呂 覚, 太田 貴士, 永井 優河, 酒井 康行, "異なる条件の予混合燃焼における火炎伝播を伴う壁乱流の層流化プロセスの解明", 日本流体力学会 年会2024, Sep. 2024
  • 皆本 慧, 太田 貴士, "過冷却条件の液体乱流で形成される凝固組織構造の特徴の予測", 日本流体力学会 年会2024, Sep. 2024
  • 浪井 稀羽, 太田 貴士, "キャビテーションの影響による乱流せん断層の特徴", 流体工学シンポジウム(第74回北陸流体工学研究会), Dec. 2024
  • 増山 遼大, 太田 貴士, 皆本 慧, "異なる粗さモデルで再現した粗面乱流の統計的特徴の比較", 流体工学シンポジウム(第74回北陸流体工学研究会), Dec. 2024
  • 法邑 拓真, 太田 貴士, "壁乱流の流れ場と固体壁内部の直接数値シミュレーションの実現", 流体工学シンポジウム(第74回北陸流体工学研究会), Dec. 2024
  • 井野口 亮太, 太田 貴士, 浅野 柚, "高解像度DNSによるクエット乱流における渦キャビテーションの発生メカニズムの解明", 日本機械学会 北陸信越支部 2025年合同講演会, Mar. 2025

 




Posted : 2025年03月31日