乱流せん断層で発生する渦キャビテーションの予測と乱流変調の観察

 

氏名:太田 貴士

所属:福井大学

概要:本研究では,簡易型のキャビテーションモデルを援用して,気液相変化による密度変化を考慮した圧縮性気液二相流の乱流の直接数値シミュレーション(DNS)を実行し,せん断層における乱流渦に起因するキャビテーションを再現した.そして,キャビテーションで発生する気泡の変化による乱流渦の変化を局所的および大局的な観点から観察し,乱流変調の特徴を明らかにすることを目指した.なお,本研究の解析対象は,噴流の一部の流れに注目したせん断流れの解析であることを意図している.本数値シミュレーションの結果として,次のことがわかった.
 乱流せん断層のDNSでキャビテーションモデルを有効にしたところ,乱流せん断層で形成されるRib渦とRoll渦の両方に起因する渦キャビテーションが発生した.次に,局所的な観点から,気泡が発生し,膨張することで,気泡に対応するRib渦とRoll渦の両方が弱められ,その後,気泡が収縮することで,液体の単相のままの流れ場と比べて,気泡が発生する流れ場では,気泡周辺の渦構造が異なり,さらに,Rib渦とRoll渦は気泡の周辺で再び発達した.すなわち,大局的な観点から,気泡が発生し,Rib渦とRoll渦の両方が弱くなるときより,気泡が収縮し,両方の渦が強くなるときに,流れ場が大きく変調し,単相のままの流れ場より,乱流の強度がより強くなった.このように,本研究の成果として,渦キャビテーションがRib渦とRoll渦のそれぞれに与える影響を定量的および定性的に観察できた.

 

論文掲載,発表実績:

(国内研究会等発表論文)

  • 都築 昇悟, 太田 貴士, ”粘弾性流体乱流のためのLESモデルの開発とその適用範囲の検証”, 日本機械学会 2023年度 年次大会, Sep. 2023
  • 皆本 慧, 太田 貴士, ”過冷却液体の乱流のDNSにおける凝固組織構造の形成メカニズムの解明”, 日本機械学会 第36回計算力学講演会, Oct. 2023
  • 上野 玄稀, 太田 貴士, ”水素予混合燃焼を伴う壁乱流DNSにおける火炎構造とNOx生成の関係の解析”, 第21回日本流体力学会中部支部講演会, Nov. 2023
  • 浅野 柚, 太田 貴士, ”キャビテーションが発生する乱流クエット流れのDNSにおける非定常渦キャビテーションの維持メカニズム”, 第37回数値流体力学シンポジウム, Dec. 2023
  • 永井 智也, 太田 貴士, ”一様に溶融する壁面に沿う乱流境界層における乱流変調のメカニズムの解明”, 流体工学シンポジウム(第72回北陸流体工学研究会), Dec. 2023
  • 道坂 大介, 太田 貴士, ”粘塑性流体乱流における組織的構造の特徴の解明”, 流体工学シンポジウム(第72回北陸流体工学研究会), Dec. 2023
  • 黒田 陸真, 太田 貴士, ”回転する円柱の表面に沿う乱流の抵抗低減条件の導出”, 流体工学シンポジウム(第72回北陸流体工学研究会), Dec. 2023
  • 法邑 拓真, 太田 貴士, 中澤 勇亮, ”乱流境界層の非定常構造の影響による固体壁振動の解析”, 日本機械学会 北陸信越支部 2024年合同講演会, Mar. 2024
  • 野呂 覚, 太田 貴士, 上野 玄稀, ”数値シミュレーションによる水素-空気予混合燃焼を伴う壁乱流の予測の検証”, 日本機械学会 北陸信越支部 2024年合同講演会, Mar. 2024
  • 浪井 稀羽, 太田 貴士, 浅野 柚, ”渦キャビテーションの発生を伴う乱流せん断層のDNSにおける乱流変調の観察”, 日本機械学会 北陸信越支部 2024年合同講演会, Mar. 2024
  • 増山 遼大, 太田 貴士, 皆本 慧, ”異なる数値シミュレーション方法による粗面に沿う乱流の予測結果の比較”, 日本機械学会 北陸信越支部 2024年合同講演会, Mar. 2024

 




Posted : 2024年03月31日