マラリア原虫の進化過程
氏名:有末 伸子¹,久米慶太郎²,本間 一¹,橋本 哲男³
所属:東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学講座¹,筑波大学 医学医療系²,筑波大学 生命環境系³
概要:マラリアは蚊が媒介する感染症であり、年間に2億人以上が感染し、60万人以上が死亡する。感染源であるPlasmodium 属原虫についてゲノムレベルの大量の配列データを用い、マラリア原虫の進化系統樹を高精度に解析した。オリジナルに解読した3種にPlasmoDB https://plasmodb.org/)で公開されている24種のゲノムデータを加えた27種のマラリア原虫について、全種にオロソログが存在する3,952遺伝子について個別にMAFFTによりアライメントを作成し、それらを結合して1,195,631アミノ酸座位のデータセットとした。系統解析のプログラムパッケージであるRAxMLにより最適であると考えられたGTR+Γモデルにより系統樹を推定した。すべての枝がブートストラップ値100%である信頼性の高い系統樹が推定された。アフリカ起源 VS アジア起源で議論が続いている三日熱マラリア原虫P. vivax はマカクを宿主とするマラリア原虫種からなるグループの中ではなく外側、アフリカの旧世界ザルを宿主とするP. gonderi の次の分岐に位置づけられ、これはP. vivax がアフリカ起源であるとする説を否定しない位置づけであった。今後はマラリア原虫の種分岐の年代推定も行いつつ地理的拡散の歴史を辿る予定である。
Posted : 2024年03月31日