第一原理計算による炭酸カルシウムの陽イオン固溶機構の解明
氏名:松永克志
所属:名古屋大学
概要:炭酸カルシウムCaCO3にはカルサイト、アラゴナイトなどの結晶多形が存在する。水溶液合成においてこれら各相の生成割合は、不純物となる2価陽イオンの種類や濃度に依存することが報告されている。しかし、この現象の起源は明らかとなっていない。本研究では第一原理計算を用いて、2価陽イオンの固溶状態を解明することを目的とした。カルサイトおよびアラゴナイトに様々な濃度の2価陽イオン(Mg2+, Sr2+など)を置換固溶させ、そのときの固溶エネルギーを求めた。Sr2+の場合、カルサイト中への固溶エネルギーが常に正であるのに対し、アラゴナイト中のそれは常に負であった。したがって、Sr2+はアラゴナイトに容易に取り込まれると考えられる。一方、Mg2+ではカルサイト、アラゴナイト共に固溶エネルギーは正であったため、どちらの結晶においてもMg2+は固溶しにくい。本研究より、Sr2+がアラゴナイト生成をより促進すると考えられる。
Posted : 2025年03月31日