分子シミュレーションと機械学習を用いた相変化・界面現象の解明

 

氏名:平塚将起

所属:工学院大学

概要:浮遊状態にある水―エタノール液滴における蒸発速度は,実験により明らかにされている.しかしながら,実際には液体は常に蒸発を行うため,その初期挙動を観察するのが難しいのに加え,蒸発している分子やその詳細を観測するのは難しい.実際に目に見える液滴が徐々に蒸発する際,その直径はミリからミクロへ,ミクロからナノへと変化する.そこで,本研究では,初動の短い時間(~10 ns)の蒸発過程を観測した.さらに,各蒸発分子数を調べ,蒸発の前後での濃度変化など各種数値を評価した.
エタノール濃度が高いほど蒸発数は増加し,蒸発が速くなることが分かり,先行研究と同じ傾向を示した. 蒸発過程としては,先行研究同様に混合溶液はのみ非線形的な傾向を観察できたが,純粋なエタノール・水は一定に蒸発をしていった.水蒸気の分子数は飽和水蒸気量よりもはるかに多かったが,水蒸気が存在するとき蒸発は遅くなり,先行研究と同じ傾向をすることを確認できた.水蒸気が存在すると,凝縮する分子に加え,蒸発分子数が抑えられるため,総合して蒸発は遅くなっているが分かった.また,凝縮する分子数は,エタノール濃度が高いほど凝縮する分子数は増加した.飽和水蒸気量を超える水分子を用いたため,純粋な水では,蒸発分子数より凝縮する分子の方が多く,液滴が大きくなった.
濃度(質量分率)変化は湿度が存在する場合の方が変化率は低くなることが分かった.これは,本研究では,水蒸気分子数が多かったためにセル内の圧力が上昇したことで,エタノールの蒸発が抑えられたからだと考えられる.構造については,エタノールが存在する場合には,エタノールが表面を覆うような構造が確認できた.親水基と疎水基を持つエタノールが水の周りを囲むように結合するためだと考えられる.

 




Posted : 2025年03月31日