大規模連立一次方程式の解法について : 反復法

概要

    本セミナーでは, 大規模連立一次方程式を求解する反復法のうち代表的な Krylov 部分空間法について解説し, 大型計算機 OCTOPUS を用いて Intel MKL ライブラリーに含まれるCG法/GMRES法の利用法と, 直接法を部分的に利用する additive Schwarz 法による前処理を紹介します.
     

目次

    ・Krylov 部分空間法の概観と CG法/GMRES法の前処理付アルゴリズム
    ・不完全LU分解による前処理
    ・グラフ分割プログラム METIS による疎行列の分割と直接法ソルバーを組み合せたadditive Schwarz 法前処理の実現
    ・疎行列データ格納形式, CSR
    ・Intel MKL ライブラリーに含まれる Reverse Communication Interface (RCI) による CG法/GMRES法の利用法
    ・OCTOPUS でのライブラリーのリンク方法
     

こんな方におすすめです

    ・流体, 構造, 電磁場解析などの数値シミュレーションで連立一次方程式を解きたい方
    ・C, Fortran によるプログラム経験がある方
     

備考

    ・座学および実習からなるセミナーです.
    ・ネットワークに接続可能で, ターミナルソフトのインストールされたノートPCをお持ちください
    ・スーパーコンピュータ OCTOPUS を1週間自由に使える「無料お試しアカウント」付きです.
     

反復法について

    工学や物理学での流体, 構造, 電磁場解析など数値シミュレーションでは偏微分方程式を離散化して生じる大規模な連立の線形あるいは非線形の方程式を解く必要があります. 非線形問題は Newton 法などによって線形化することで, 最終的に大規模な疎行列からなる連立一次方程式を解くことになります.
     
    疎行列解法には LU 分解により構成される直接法と共役勾配法などに代表される反復法があります. 直接法は非線形性が強い問題から得られた行列, あるいは異なる物理係数により条件数が大きい行列などの反復法が苦手とする行列に対しても安定して求解できますが, 計算量が多い問題点があります. 一方, 反復法は計算量は少なく大規模な問題を求解できますが, 反復計算の収束は問題に強く依存し現実的な時間内に収束しない場合もあります.
     
    本セミナーでは反復法の代表的手法である Krylov 部分空間法をとりあげます. 部分的に直接法を前処理として導入することで, 収束を加速することを目指します. Krylov 部分空間法は初期の近似解に対する残差に疎行列を繰り返し作用させることで生成される部分空間に解を求める方法で, 正定値対称行列向けのCG法, 非対称行列向けのGMRES法などがあります. 連立方程式の両辺に疎行列の逆作用を近似する操作を施すことで収束を加速する前処理の選択が重要です. GMRES 法は Krylov 部分空間法の中で最も安定した収束を実現する方法ですが, 反復が多くなると計算コストが増大する問題点があります. 全体の係数行列を部分行列に分解して, 部分的に直接法により近似解を構成する additive Schwarz 法はグラフ分割を利用することで, よく知られている前処理手法である不完全LU分解と同様に, 行列データのみを利用して構成できます. additive Schwarz 法の近似能力は不完全LU分解に比べはるかに高いため, GMRES 法を少ない反復回数で収束させることができ, 実用的な解法にすることができます.

 

資料


開催日 :11月21日(水) 13:15 - 17:00 (13:00 受付開始)
講師  :サイバーメディアセンター (講師 : 鈴木 厚 招聘准教授)
開催場所:吹田キャンパス, サイバーメディアセンター 1F サイバーメディアコモンズ
種類  :座学, 実習
定員  :30名
申込締切:11月19日(月) 17:00

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