2014年度に報告された大規模計算機システムの研究成果の一覧です。



慣性核融合炉における高エネルギーイオンと第一壁の相互作用に関するシミュレーション

著者|高木 一茂
所属|大阪大学

概要:慣性核融合炉では燃料爆縮過程において高エネルギーのイオンが発生し、炉の内壁に直接照射される。イオン照射による炉壁の損傷を分子動力学計算を用いてシミュレーションする。
入射イオンと原子の運動を分子動力学(MD)によって記述し、電子—格子相互作用をランジュバン動力学によって記述する二温度MDモデルを用いた。入射イオン—原子相互作用にはクーロン衝突と電子的阻止能を考慮した。
この二温度MDコードを用いて、入射イオンの衝突に由来する格子欠陥の生成をシミュレーションした。

マルチスケールの熱流動シミュレーションに関する研究

著者|芝原正彦, 植木祥高
所属|大阪大学

概要:原子分子から工業機械内の現象に至るまでマルチスケール熱流動シミュレーションの展開を目的に下記の内容を実施した.微細構造がポテンシャルエネルギーに与える影響を第一原理計算ソフトウェアGaussianを活用して第一原理計算により調査した.これにより微細構造面がPt表面-H2O単分子間ポテンシャルエネルギーに与える影響を定量的に調査した.また,タービン内の熱流動現象の精緻な理解の獲得のため乱流伝熱場の数値解析を行った.それにはSX-ACEを活用して実施した.角柱回りのエントロピー生成量を評価し,数値解析モデル開発とその検証を行った.

光放射圧制御微小球レンズの運動解析

著者|山口 悠希
所属|大阪大学

概要:本研究はレーザトラッピングによる捕捉微小球を用いた表面観察に向け、試料面近傍における微小球の運動解析を行いその運動原理を明らかにすることを目的とする。そこで捕捉レーザ光によって生じる光放射圧を拡張Mie理論に基づく数値解析により算出した。また得られた光放射圧解析値を元に微小球の運動をシミュレーションした。その結果、試料面近傍では捕捉レーザの反射光強度が増大するため、特異な運動が生じることが明らかとなった。

低周波領域における人体ばく露評価のための高速数値解析手法に関する研究

著者|チャカロタイ ジェドヴィスノプ
所属|情報通信研究機構

内容:本研究では、時間領域有限差分(FDTD)法における解の収束性を時間ステップごとにトレース可能な計算手法を新たに提案し、その手法の妥当性を検討するとともに、無線電力伝送システム近傍における人体ばく露評価に適用した。

有限密度格子QCDシミュレーション/Finite density lattice QCD simulation

著者|永田桂太郎
所属|高エネルギー加速器研究機構

概要:有限アイソスピン化学ポテンシャルを持つQCDの相構造の解明を目的にu-, d-クォークに逆符号の化学ポテンシャルを導入したQCDの熱力学的性質をモンテカルロ法を用いて調べた. その結果、有限アイソスピン相図における閉じ込め/非閉じ込め相境界線の位置をmu/T~3程度まで同定した.

超音速燃焼を考慮した圧縮性粘性流れの数値解析法に関する研究
Numerical Study on Compressible Viscous Flow including Supersonic Combustion

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学

概要:空気中に噴出する低速水素噴流の拡散挙動を明らかにするために,化学種の質量保存を含む3次元非定常圧縮性粘性解析を行った.通常の圧縮性解析ではマッハ数が0.1を下回るとstiffになるため,化学種の質量保存を考慮しつつ固有値を操作する非定常前処理法を導入し,低速でも妥当な解析が可能となった.

仮想心臓モデルによる心臓電気現象シミュレーション
Simulation study of cardiac electrical excitation using virtual heart model

著者|稲田慎, 原口亮, 芦原貴司, 中沢一雄
所属|国立循環器病研究センター, 滋賀医科大学

目的:スーパーコンピュータ上に仮想心臓モデルを構築し,電気生理学的シミュレーションを行うことで致死性不整脈のメカニズム解明や,予防・診断に役立たせることを目的としている.内容:心筋細胞の電気的興奮に伴う電気現象(活動電位)を再現することが可能なユニットを約2000万個組み合わせて心室形状モデルを構築した.モデルには,心室壁内における電気生理学的性質の不均一性(心室較差)を組み込んだ.本研究では,心臓疾患の一つであるBrugada症候群を想定し,右室流出路に電気的興奮の伝導障害がある場合の興奮伝播の変化を検討した.その結果,伝導障害の進行の程度や障害領域の大きさや部位が,不整脈の誘発性や持続性に影響を与えることが明らかになった.

2重魔法数原子核の飽和性

著者|宮城宇志, 阿部喬, 岡本良治, 大塚孝治
所属|東京大学, 九州工業大学

概要:研究内容の概要: 本研究の目的は、原子核の基本的な性質である飽和性を現実的な核力に基づいて理解することである。我々は第一原理的な計算手法の1つであるユニタリ模型演算子法(UMOA)を用いて、2重魔法数原子核である4He, 16O, 40Ca, 56Niの基底状態エネルギーと荷電半径の数値計算を行いこれらの原子核の飽和性について議論した。計算には2体散乱などを高精度で再現する現実的な核力の1つであるCD-Bonnポテンシャルを用いた。得られた計算結果から実験データを再現するような経験的公式と同様の傾向を再現することができた。

超高強度レーザーとプラズマとの相互作用による高エネルギー電子発生のシミュレーション

著者|畑 昌育
所属|大阪大学

内容:高エネルギー電子の発生点よりも後方に希薄プラズマが存在し,密度差がある場合に電子特性がどう変化するかについて,一次元電磁粒子コードにより調べた.先行研究では,レーザーの強度が1020 W/cm2, パルス長(FWHM)が300 fsであったが,本研究では,少し強度を下げて長パルスにした場合(1019 W/cm2, tflat = 2000 fs)について調べた.

MHz帯ワイヤレス電力伝送システムにおける人体ばく露評価に関する研究

著者|和氣加奈子
所属|情報通信研究機構

内容:本研究では、2種類のMHz帯ワイヤレス電力伝送システムを設計し、解剖学的な数値人体モデルを用いて、様々なばく露条件における人体内部に誘導される電界や人体に吸収される電力などを時間領域有限差分(FDTD)法によって求めた。

グラフェンナノリボンにおける光電場変調 のシミュレーション

著者|宮本良之
所属|産業技術総合研究所

内容:グラフェンナノリボンへのレーザー照射によって、グラフェンナノリボン近傍の光電場変調を⾒ることにより、TH発振素子への応⽤を検証した。

ナノスケール炭素物質複合構造体の電子物性解明
Electronic properties of Nanocarbon hybrid structures

著者|岡田 晋
所属|筑波大学

内容:密度汎関数理論に基づく第一原理計算からCNT、グラフェンナノリボンの電界下における振る舞いの解明を行った。特に、欠陥を有するCNTへの電界によるキャリア注入の欠陥構造、廃校依存性の解明、グラフェンナノリボンの外部静電界への応答特製の解明を行った。

次世代トランジスタのシミュレーション

著者|森 伸 也,鎌倉 良成,美里劫 夏南
所属|大阪大学

概要:次世代新材料トランジスタの性能予測を行うため,原子論・量子論的効果を考慮することが可能な,非平衡グリーン関数法に基づくデバイスシミュレータの開発を行っている.これまでは,PCクラスタで動作させるプログラムの開発を行ってきた.今後,第一原理計算との接続を図るため,平成27年1月より3月まで,等価モデルに基づくナノワイヤトランジスタの弾道輸送シミュレータを,SX-ACEに移植する作業を行った.細かな調整の後,SX-ACE上でプログラムが正しく動作することを確認した.

Chiral Symmetry breaking, instantons, and monopoles

著者|長谷川 将康
所属|Joint Institute for Nuclear Research

概要:カイラル対称性の自発的やぶれとインスタントン、モノポールの関係を明かにするために、QCDの第一原理計算をDi Giacomo教授(ピサ大学)と共に行っている。
そして、QCD真空中のインスタントン数とモノポールの関係を定量的に示した。現在、カイラル対称性とモノポールについて、さらに詳しく研究を行っている。

DEMシミュレーションによる添加粒子径が粒子層の充填率向上に及ぼす影響

著者|吉田幹生, 高月亮太, 三隅敦司, 茶島圭介
所属|岡山大学

内容:2次元DEMプログラムを用いて微小粒子添加法を再現し,錠剤成形プロセス等で重要となる圧密充填時の付着性改善効果に対して添加粒子径が及ぼす影響を検討した。

2次元シミュレーションに基づいたレーザー核融合
液体壁炉チェンバー内のプルームの挙動の評価

著者|古河裕之
所属|大阪大学

概要:レーザー核融合液体壁炉概念設計「KOYO-fast」においては、厚さ3mmから5mmの液体リチウム鉛が第一壁に沿って滝状に流下する構造、「液体壁」を形成して第一壁を保護している。液体壁は液体から中性気体、部分電離プラズマへと相変化を伴いながらアブレーションする。アブレーションにより生成されたプルーム(気体、液体、固体などの塊)中には、ナノクラスターが生成されること等が予想される。

超高強度レーザーとプラズマの相互作用

著者|田口俊弘
所属|摂南大学

目的:高速点火核融合おいて重要である相対論的電子ビームと高密度プラズマの相互作用を解析するためのハイブリッドコードの開発,および衝突電離過程の入った粒子コードの開発

高速点火レーザー核融合のコア加熱効率向上を目的とした外部磁場による高速電子コントロール

著者|城﨑 知至
所属|広島大学

概要:高速点火レーザー核融合では、相対論レーザープラズマ相互作用で生成する高速電子ビームにより爆縮コアを瞬時に点火温度まで加熱する。高速電子ビームは非常に大きな発散角を持っており、高効率加熱にはビームガイディングが必須である。本研究では、kTクラスの縦磁場印加による高速電子ビームガイディング法について、2次元PICシミュレーションにより評価を進めている。

道路橋用アルミニウム合金材の実用化に向けた研究

著者|西井智紀
所属|大阪大学

概要:アルミニウム合金は軽量で耐食性が優れているため,アルミニウム合金材を道路橋に適用することで,耐震性の向上およびコスト削減を図ることを目的とする.長方形板のせん断耐荷力を基礎とし,桁のせん断耐荷力算定式を仮定した.せん断を受ける桁に対して,FEMによる弾塑性有限変位解析を行い,その解析値と耐荷力曲線を比較することで同式の妥当性を検討した.図に示すように,解析値が耐荷力曲線より上側にプロットされている.このことから,仮定した同式で桁のせん断耐荷力が与えられる.

レーザーを利⽤した酸化グラフェン還元の シミュレーション

著者|宮本良之
所属|TASC

内容:強電界短パルスレーザーの波形と強度を想定した電子・格子ダイナミクスのシミュレーションを⾏う

Canonical approach による有限密度格子QCD シミュレーション
Canonical approach to finite density lattice QCD

著者|福田龍太郎, 中村純, 岡将太郎
所属|東京大学, ETH Zurich, 大阪大学, 立教大学

概要:canonical approach をもちいてWilson fermion における有限密度QCD の数値シミュレーションを行い、圧力、粒子数、感受率の密度依存性を議論した。有限密度格子QCD には「符号問題」が存在するため、通常では低密度領域でのみその物理予言性が期待できるが、canonical approach はその問題を回避する1つの手段である。本研究結果は先行研究と無矛盾であり、先行研究よりも高密度領域での熱力学量の計算にも成功した。

歯茎摩擦音/s/の口腔単純形状モデルを用いた空力音響解析

著者|吉永 司
所属|大阪大学

概要:歯茎摩擦音/s/とは,日本語のシを除くサ行を発音する際に発生する音であり,舌と歯茎の隙間からジェット流を発生させることにより発音する.口腔内での音の発生メカニズムを調べることにより,発音障害の治療等に活かすことができる.本研究では,口腔形状を単純化したモデルを用いて空力音響シミュレーションを行うことにより,口腔内での音の発生メカニズムを調べた.単純形状モデルは,CT画像により計測した被験者の/s/発音時の口腔断面積を元に作製した.シミュレーションは,ソフトウェアFrontFlow/blue-Acoustics(RSS21)を使用し,流体解析と音響解析を組み合わせた分離解法により行った.単純形状モデルに呼気流量を流入した際に発生した音は,歯茎摩擦音/s/の特徴である4 kHz以上の高周波数域の音を再現した.この時,舌と歯茎による狭窄流路から発生したジェット流は,上下前歯の隙間を通過する際に大きく乱れ,口唇表面に音源を形成することが明らかとなった.

海面加熱下における海洋表層混合層深度のスケーリング

著者|吉川 裕
所属|京都大学

概要:海洋表層混合層の深度は大気海洋相互作用や気候変動などに対して鍵となるパラメタ―である。しかし、その混合層深度の風や海面加熱率といった外力に対する依存性は不明であった。そこで海洋表層乱流のラージエディシミュレーションを行い、混合層深度の全球分布を再現するとともに、外力(風や海面加熱率)に対する依存性を調べた。その結果、海洋混合層深度は、Zilitinkevich (2002)が提唱する安定大気境界層のスケーリングに従うことが明らかになった。

レーザープラズマ解析用輻射流体シミュレーションコードの高速化手法に関する研究

著者|里 圭人
所属|大阪大学

内容:線型方程式解法を変更し、計算時間への寄与を調べる。並列化手法を用いて、計算の高速化を図る。

格子QCDによるクォーク数密度の計算

著者|髙橋 純一
所属|九州大学

概要:クォーク数密度(nq)は有限化学ポテンシャル(μ)領域の量子色力学(QCD)において最も基本的な物理量の一つである。このnqを格子QCD計算で求めるのが目的である。格子QCDは実数μ領域に符号問題を持つ。その回避法の一つである「虚数μ領域からの解析接続」を用い、実数μ領域のnqを求めた。別の回避法が使われた先行研究での結果と比較し、二つの方法の間で無矛盾な結果となるか調べた。

合金系表面編析の酸素環境下における相関解析

著者|笠井 秀明, 中西 寛, Saputro Adhitya Gandaryus, Febdian Rusydi, 岡 耕平, Alaydrus Musa, Fadjar Fathurrahman, 岸田 良, 土谷 亮
所属|大阪大学

概要:大気環境中におかれた材料は表面上での化学反応によって腐食される。その一端を担う酸素分子による酸化反応は、最も基本的で重要な反応の一つである。そこで本研究では、反応活性の低い金原子を含む合金系材料における、酸化反応の進行と表面偏析の相関を調査した。様々な条件において第一原理電子状態計算を用いて表面エネルギーを計算し安定状態を計算した。その結果、銅-金系合金の清浄表面においては、金原子が表面第一層に偏析した。酸素分圧の上昇に伴い、酸素が吸着し、銅原子の表面析出が起こった。これらはXPSによる実験結果と良い一致を示す。また、銅原子が表面に析出することで、材料が安定化することが示された。

異なる金属量における星形成過程の解明

著者|町田正博, 中村鉄平, 橘田英之
所属|九州大学

内容:星はガスのかたまりから誕生する。初期宇宙と現在の宇宙での星が誕生する環境の大きな違いは金属量である。初期宇宙ではほぼ水素とヘリウムのみが存在したのに対して現在の宇宙では質量としては僅かであるが金属(Li以降の元素)やダストが存在しており、こられがガスの熱進化(すなわち星形成過程)を支配している。この研究では星が誕生するガス雲の金属量を変えてシミュレーションを行った。

乱流および多相流のシミュレーション

著者|梶島岳夫, 竹内伸太郎, 大森健史
所属|大阪大学

概要:空力騒音、二相乱流、二相伝熱、流体構造連成解析、気液界面および濡れの現象を対象として、差分法、有限要素法、分子動力学法による解析方法を適宜開発している。

双対超伝導描像に基づくクォーク閉じ込め機構の研究

著者|関口 昂臣
所属|高知大学

概要:クォークなどの間に働く強い相互作用は量子色力学(QCD)によって記述されると期待されているが、そのQCDにおいてクォークの閉じ込め機構は解明すべき重要な問題である。その閉じ込め機構に対し有効的なアプローチの一つとして、クォーク・反クォーク間のポテンシャルが、線形ポテンシャルを形作り、その本質的な役割をmagnetic monopole が担っているとする双対超伝導描像が知られている。

超高強度レーザーによる多様な量子ビーム発生

著者|中村龍史
所属|福岡工業大学

概要:超高強度レーザーと物質と相互作用では、輻射反作用が無視できなくなり、高強度ガンマ線として輻射による散逸が起こる。本研究では、レーザー駆動ガンマ線と物質との相互作用を解明とした新しいシミュレーションコードの開発を行った。具体的には、電磁場とプラズマとの相互作用を扱う粒子コードに、高エネルギー光子の物質中での伝播をモンテカルロ手法により取り込んだ新しコードを開発した。

熱的安定度を伴う大気境界層のLES解析

著者|藤岡祐太郎
所属|東京工業大学

概要:別の計算領域で作成した中立大気境界層を流入条件として用い、温度成層による浮力効果を付加し、流れの構造の変化を検証した。いずれもLESによる非定常解析により行った。浮力効果により速度の鉛直成分の変動が著しく抑制されたが、一方で間欠的に現れる比較的強い乱れが見られた。また、中立境界層で見られた地表面近傍のストリーク構造は下流へ向かうにつれて弱められている。渦構造については、中立時に存在した各方向の渦が消滅し、主に縦渦(流れ方向渦)が残るという結果となった。

水面波と成層流体の数値シミュレーション

著者|花崎秀史, 平田基徳, 小川貴臣
所属|京都大学

概要:水面波の運動の解析において,表面張力効果を表すBond数(Bo)が0<Bo<1/3の範囲については弱非線形理論が適用できない.そこで,その範囲の非線形水面波の運動特性を検討するため,物体によって励起される水面波に対して直接数値計算を行った.系統的にBoを変化させて数値計算を行うことで,非線形波と分散波の相互作用を明らかにした.

150 MHz帯業務用無線端末による体内植え込み型心臓ペースメーカ周辺のSAR解析

著者|齊藤一幸
所属|情報通信研究機構

内容:本研究では,FDTD法を用いた数値計算により,ペースメーカ植え込み部周囲における,電磁波エネルギーの吸収量であるSARについて解析を行った。ここでは,0.1 mm角のボクセルで構成されたノーマルモードヘリカルアンテナモデルを用いた。

高Z 物質をドープした慣性核融合ターゲットの爆縮性能解析

著者|白戸 高志, 大西 直文
所属|東北大学

概要:レーザー核融合では燃料球にレーザーを照射することで高密度に圧縮することを目指すが、流体不安定性により微小な擾乱が急速に成長して非球対称な爆縮となり、核融合反応の効率が低下してしまう。我々は燃料球に原子番号の大きな物質(高 Z 物質)をドープすることで流体不安定性を抑制することを目指して数値解析を行っている。

密度成層流体における強制乱流の直接数値シミュレーション

著者|沖野真也
所属|京都大学

概要:塩分成層に代表される, 高プラントル数(Pr)の密度成層流体における乱流現象の解明を目的とし, Pr=6の密度成層流体における強制乱流の直接数値シミュレーションを実施した. その結果, 運動エネルギーとポテンシャルエネルギー間のエネルギー交換により, 運動エネルギースペクトルの高波数成分が増大することを見出した. これは, パッシブスカラーに対して成立するBatchelorのスケーリングがアクティブスカラー(密度成層に寄与するスカラー)に対しては成り立たないことを意味する.

銅炭素複合材料における電子伝導シミュレーション
Electron Transport Simulation of Carbon nanotube-copper composite

著者|小野裕己, 中村 賢
所属|高度情報科学技術研究機構

概要:2013年に産業技術研究所のチームにより、カーボンナノチューブ(CNT)と銅の複合材料(CNT-Cu)が銅と同程度の電気伝導度を有し、かつ銅の約100倍の電流容量を併せ持つ優れた性質を有することが発見された。しかし現在までのところ構造や電気伝導機構の大まかな推計に留まっており、今後さらに深い解析が望まれる。そこで本研究では、自己無撞着電荷拡張ヒュッケル法と非平衡グリーン関数法とを併用し、 (5,5)CNTに2個の銅原子を付着させた系での抵抗値の温度依存性を検討した。

混相流数値シミュレーション
Numerical Simulations of Multiphase Flows

著者|杉山 和靖
所属|大阪大学

概要:東京大学情報基盤センターOakleaf (Fujitsu FX10)で開発を進めてきたVOF法/MTHINC法に基づく気液二相流コードを,SX-ACEで動作確認を行なった.単体版コードは正常に動作するものの,MPI並列版のコードが正常に動作しないため,有意な計算結果を得るに至っていない.

極超音速縦渦の遷移過程に関する研究

著者|比江島俊彦
所属|大阪府立大学

概要:極超音速流中における縦渦の微小攪乱に対する空間発達を調べ,生成される組織渦構造や小規模渦の特性を流れ場より解析した。

粒子法による低密度アブレーションプラズマのシミュレーション研究

著者|山内智輝
所属|大阪大学

概要:慣性核融合炉壁のアブレーションなど、密度変化の激しい現象の計算をするのは容易ではない。そこで、新たな計算方法の探求が必要となり、SPH法という計算方法の密度変化が大きい場合における評価を行った。

壁面とその近傍での熱化学的過程を考慮した水素-空気乱流予混合火炎のDNS
DNS on hydrogen/air turbulent premixed flames with thermochemical process nearby a wall surface

著者|坪井 和也
所属|岡山大学

概要:本研究は、輸送・発電用燃焼器内での燃焼現象をより正確に計算でき、燃焼器の開発や設計ツールとして利用可能な新たな乱流燃焼モデルを開発するため、燃焼器内の様々な条件を可能な限り考慮した、水素-空気詳細反応機構を用いた乱流燃焼場の直接数値計算(DNS)を実行して、壁面近傍での乱流燃焼場の基礎的特性に関する解析を行い、燃焼器内でのより正確な乱流燃焼機構の解明を目指すものである。圧縮性Navier-Stokes方程式を支配方程式とするDNSを、本システム上で実行した。その際、水素-空気詳細化学反応機構並びに水素-酸素表面反応機構、壁面近傍の物質拡散に加えて、500Kの等温非滑り壁を考慮した。その結果、二次元乱流予混合燃焼場においてDNSを実行し、化学的過程を考慮する壁面が断熱壁の場合と等温壁の場合とでは、壁面近傍の吸着種の分布が異なることを明らかにした。

浮力場における鉛直渦に基づく突風作用に関するDNS解析

著者|佐久間 悠人
所属|東京工業大学

目的:防災学的観点から見た竜巻が,人々の生活に直接的被害をもたらす地表近傍での突風がどのように発生するかを解明するために,竜巻発生時の地表面から積乱雲下にかけての竜巻状渦の数値解析を行い,まだ明らかになっていない地上付近での竜巻の生成機構についての研究を行った.

医薬品候補化合物の副作用発症を予測する数理モデルの創成

著者|Yushi Tian1, 川下理日人2,3, 高木達也2,3
所属|1 大阪大学大学院 情報科学研究科 組合せ数学講座、2 大阪大学大学院 薬学研究科 情報・計量薬学分野、3 大阪大学微生物病研究所附属遺伝情報実験センター ゲノム情報解析分野

概要:医薬品の重篤な副作用は医薬品開発現場及び臨床現場で問題となっている。医薬品の化合物構造と重篤な副作用の発症との関連性を見出したら、薬学方面のみならず、社会経済方面にも貢献できるため、副作用を予測できる数理モデルの創成を目的とした。現在、医薬品医療機器総合機構 ( PMDA )の副作用データベースを使用し、重篤性が高い副作用を対象として選出した。化合物の構造情報(分子記述子)を計算し、副作用の有無との関連性を検討している。ニューラルネットワーク法をベースとする、記述子情報及び他の副作用の有無の情報を用いて、発症有無を判別できる方法を検討している。

粘弾性流体における壁乱流の直接数値解析
Direct Numerical Simulation of Viscoelastic-Fluid Wall Turbulence

著者|塚原 隆裕, 嶺岸 卓也, 池上 明人, 井上 俊, 数野 信夫
所属|東京理科大学

概要:本研究では,粘弾性流体の平行平板間乱流および複雑流路内乱流について,直接数値解析(DNS)を行った.乱流摩擦抵抗の低減効果をもたらす粘弾性流体は工学上重要な非ニュートン流体の一種だが,その乱流状態における流体挙動や乱流構造の変化には未だ未解明な点は多い.本解析により,乱流の微細渦に対して,流体の粘弾性の力学的反応および渦の時間的変化を調べた.これにより得られる知見やDNSデータベースは,粘弾性流体のモデリングやハンドリング技術の高度化に資するものである.

衝突噴流冷却の伝熱促進に関する非定常乱流熱伝達のシミュレーション
Numerical Simulation on Heat Transfer Enhancement of Impingement Jet Cooling

著者|小田 豊
所属|関西大学

概要:本研究は、輸送・発電用燃焼器内での燃焼現象をより正確に計算でき、燃焼器の開発や設計ツールとして利用可能な新たな乱流燃焼モデルを開発するため、燃焼器内の様々な条件を可能な限り考慮した、水素-空気詳細反応機構を用いた乱流燃焼場の直接数値計算(DNS)を実行して、壁面近傍での乱流燃焼場の基礎的特性に関する解析を行い、燃焼器内でのより正確な乱流燃焼機構の解明を目指すものである。圧縮性Navier-Stokes方程式を支配方程式とするDNSを、本システム上で実行した。その際、水素-空気詳細化学反応機構並びに水素-酸素表面反応機構、壁面近傍の物質拡散に加えて、500Kの等温非滑り壁を考慮した。その結果、二次元乱流予混合燃焼場においてDNSを実行し、化学的過程を考慮する壁面が断熱壁の場合と等温壁の場合とでは、壁面近傍の吸着種の分布が異なることを明らかにした。

単分子-単分子間における電子移動の理論的検討
Theoretical investigation on electron transfer between single molecules

著者|西野 智昭
所属|大阪府立大学

概要:我々は最近,単分子-単分子間に生起する電子移動の初めての計測法を開発した.このような電子移動は,機能性分子を水素結合などの化学的相互作用を合目的に用いて自己組織的に集積するボトムアップ型の分子デバイスに密接に関与している.本手法により,水素結合を介した単分子間電子移動が,共有σ結合を介した電子輸送よりも有利であるなど興味深い知見が得られている.本研究では,単分子間電子移動についてより深い理解を得るため第一原理計算に基づく理論検討を行うことを目的とした.

高シュミット数相分離乱流での自己組織化構造
Self-organized structure in turbulent flow with high Schmidt number

著者|高木洋平
所属|大阪大学

概要:多成分流体では、高温の熱力学的安定状態から急冷させることにより、スピノーダル分解と呼ばれる相分離が発生する。実在系の高シュミット数流体に対してシミュレーションを行い相分離による自己組織化構造の形成過程を調べた。支配方程式はNavier-Stokes式、連続の式であり、有限差分法によって離散化して解いた。相分離を考慮するためにCahn-Hilliard方程式を同様に解き,相分離による外力項をNavier-Stokes式に追加して計算を行った。従来の低シュミット数の解析と比較し、実在系における自己組織化構造を抽出した結果、実在系のような高シュミット数流体では相分離の効果がエネルギースペクトルの慣性小領域で顕著に見られ、相分離による粗大化と渦層のような乱流構造が強く相関することがわかった。

数値シミュレーションによる人体の電波吸収特性評価

著者|長岡 智明
所属|情報通信研究機構

目的:人体に対する電波ばく露量を高精度に推定することを目的に、高精細数値人体モデルを用いた電磁界シミュレーションを実施

自由噴流の混合制御に関する数値シミュレーション

著者|辻本公一
所属|三重大学

内容:DNS(Direct Numerical Simulation)により,自由噴流ならびに衝突噴流において噴流出口を回転制御し、回転周波数の違いが及ぼす噴流の構造変化や,混合状態に対する影響を調査し,流動特性および混合特性を定量的,定性的に評価した.

直接撮像法による若い恒星周りの太陽系外惑星探査
Direct Imaging Search for Extrasolar Planets around Young Stars

著者|小西 美穂子
所属|大阪大学

内容:すばる望遠鏡を用いて、年齢が1億年程度の恒星(Pleiades open cluster, Ursa Major moving group, Octans-Near associationのメンバー星)を撮像観測した。

重元素多価イオンプラズマによる軟X線光源 〜 EUV 光源プラズマの放射流体解析と CR モデルの改良

著者|原 広行
所属|宇都宮大学

目的:レーザー生成プラズマを用いて生物細胞観察用水の窓軟X線顕微鏡用光源を高出力化するためには,重元素における衝突・輻射 (CR) モデルと放射流体数値解析を組み合わせて,光源を評価する必要がある.重元素多価イオンのCRモデルと放射流体数値解析の精度が必要である.

Immersed Boundary法を用いた複雑境界を持つ3次元流体シミュレーション

著者|柳川 琢省
所属|名古屋大学

概要:mmersed Boundary法はカーテシアン座標系でも任意の形状を持つ物体境界を扱うことができる手法であり,これを用いて高速点火レーザー核融合で用いられているコーン付ターゲットの爆縮シミュレーションを行い,コーンの存在が爆縮に及ぼす影響を評価する.

遠隔観測・LESに基づく耐風設計用鉛直風速分布の再評価と乱れの不確定性の定量化

著者|片岡浩人
所属|大林組

内容 :実在市街地内の気流分布を対象とした風洞実験結果によるLES結果の検証

爆轟現象の解明とその応用に関する研究
Study on Fundamental Phenomena of Detonation and Its Application

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学

概要:水素/空気予混合気に対する詳細化学反応モデルを使用して,3次元の非定常圧縮性非粘性解析を行った.今年度はデトネーションを応用した回転デトネーションエンジンの推進性能について解析を行い,ノズル性能の評価を行った.このノズルを使用することで,大幅な推力向上に加えてノズル出口の周期的な振動が押さえられることが明らかになった.

シリコンウェーハ研磨加工における エッジ・ロールオフ抑制に関する研究

著者|佐竹 うらら
所属|大阪大学

概要:半導体デバイスの基板材料であるシリコンウェーハには極めて高い平坦性が求められ,特に,ウェーハ製造の最終仕上げで行われる研磨加工で生じるエッジ・ロールオフ(ウェーハ最外周の表面形状のだれ)は,その抑制が強く求められている.そこで,エッジ・ロールオフ抑制に有効な工具(研磨パッド)の仕様を明らかにすることを目的に,加工量分布をおもに決定する加工面の接触応力分布を,MSCアプリケーション Marc2014を用いた構造解析により求め,研磨パッド仕様との関係を検討した.その結果,ウェーハ最外周まで均一な接触応力分布を得る すなわちエッジ・ロールオフを抑制するには,変形量が小さな研磨パッドが有効であることがわかった.