2017年度に報告された大規模計算機システムの研究成果の一覧です。



アーク溶接における溶融池形成予測シミュレーション

著者|荻野陽輔
所属|大阪大学大学院工学研究科

目的 アーク溶接プロセスにおける溶融池形状や温度履歴を予測するシミュレーションモデルを構築する.
内容 溶融金属の流動ならびに表面変形挙動を計算するモデルを開発し,熱源を設定することで溶融池形成現象をシミュレーションした.
結果 溶接姿勢や溶接対象物の形状に依存した溶融池形成現象をシミュレーションし,温度履歴などの情報をアウトプットすることができた.

Cooperation between holey graphene and NiMo alloy for hydrogen evolution in an acidic electrolyte

著者|Tatsuhiko Ohto
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

酸性水分解電極としての白金を代替する合金の開発が盛んに行われており、その中でNiMoは白金に近い水素発生能力を持つが、強酸に溶けてしまうという欠点がある。NiMoをグラフェンで被覆することで、その欠点を克服した電極材料の開発を目指す。穴あきグラフェンで被覆したNiMo表面と無被覆のNiMo表面において水素原子が吸着する際の自由エネルギー変化を計算した。

光と物質の相互作用、及びその産業応用に関する研究

著者|藤田和久
所属|光産業創成大学院大学

産業界でよく用いられる、パルス幅ナノ秒オーダーのレーザーを材料に照射した場合の、長時間( 1 ミリ秒程度)の熱応答を、シミュレーションにより評価する。

分子動力学シミュレーションによる水分子の配向相関とダイナミクス

著者|岩下拓哉
所属|大分大学 理工学部 共創理工学科 自然科学コース

水の物性研究は,現在においてさえも最先端の研究対象として重要な地位を占めている.特に,”液体中で水分子がどのように動いているのか?”という水そのものの根本的問題は未だに明らかになってはおらず,分子レベルでの物理的機構解明が基礎物理学の挑戦的課題として掲げられている.これは液体中のイオン輸送や生体内の生物学過程,電解質溶液の高度な制御など複雑なプロセスへの基礎的見地を与えるものであり,水の粘性に関わる分野横断的な学際的研究と密接に関わってくる.本研究では,水分子の配向に焦点をあて、その時間相関関数を計算し、どのように水分子が運動しているのかを定量化した.まだ計算は終了しておらず,今後誘電緩和実験結果との直接比較を行う予定である.

DNSを用いた乱流予混合火炎の数値計測の構築

著者|坪井 和也
所属|岡山大学

乱流予混合火炎において重要な特性のうち,火炎変位速度の計測精度を評価するため,DNSデータを用いて現実のレーザトモグラフィにより近い数値計測手法を構築する.
これまで,火炎面と定義される面をトレーサ粒子であるシリコン油滴の蒸発温度の等値面とし,火炎面上の油滴が蒸発する時間を算出して,油滴が蒸発する時間まで最初の時刻の火炎面上にあった油滴の局所流速と方向を繰り返し計算し,最終的に蒸発した点の集合を火炎面と定義していた.そこで,現実の計測により近い,未燃領域全体にトレーサ粒子を散布し,算出された油滴の蒸発点を火炎面と定義した.
その結果,数値計測とDNSそれぞれから求められた火炎変位速度の結合確率密度関数において,最頻値近傍の確率密度がこれまでの手法よりもやや高い値となり,相関もやや高くなった.

ショウジョウバエ胚消化管の左右非対称性に関与するX染色体上遺伝子の遺伝的スクリーニングによる探索と同定

著者|石橋朋樹, 前田知那美, 松野健治
所属|大阪大学 理学部

地球上の多くの生物は,様々な左右非対称な形態を示す.左右非対称性形成メカニズムは種によって様々であり,特に無脊椎動物では,左右非対称性形成機構の理解が進んでいない.本研究室では,遺伝学的に優れたモデル生物であるキイロショウジョウバエを用いて,無脊椎動物の左右非対称性形成機構を明らかにすることを目的とする.
本研究室では,キイロショウジョウバエの常染色体を対象として,胚消化管の左右非対称性の左右非対称性に関与する遺伝子の網羅的探索を行ってきた.一方で,性染色体は,遺伝学的な扱いの難しさから,遺伝子の網羅的探索を行うことが困難だった.我々は,1300系統のX染色体の突然変異体ライブラリを用いて,胚消化管の左右非対称性異常を指標として遺伝的スクリーニングを行った.これにより得られた20系統の突然変異体の全ゲノムシーケンスを行い,大規模計算機を用いて,全ゲノム解析を行った.その結果,20系統の突然変異体ユニークな突然変異を同定することができた.また,大規模計算機を用いて,これらの突然変異に対してアノテーションを付与し,責任遺伝子の同定を試みた.その結果,全ての突然変異体に対して,5遺伝子程度まで責任遺伝子の候補を絞り込むことに成功した.

レーザーアブレーション領域における強磁場中の非局所熱伝導の特性

著者|朝比奈隆志
所属|大阪大学工学研究科環境・エネルギー工学専攻

レーザー核融合における爆縮過程では、レーザーアブレーション領域における非局所熱伝導は爆縮の駆動にかかわる重要なエネルギー輸送過程である。近年では高速点火方式において強磁場を印加する手法が盛んに研究されている。本研究ではParticle-In-Cell法を用いたシミュレーションにより強磁場下における非局所熱伝導の振る舞いを解析した。

主流の脈動を伴う平行平板間乱流熱伝達の直接数値シミュレーション

著者|小田 豊
所属|関西大学システム理工学部

エンジン筒内の熱損失を高精度に予測する乱流伝熱モデルの開発を目標に,その基礎的な乱流場である脈動を伴う乱流熱伝達場を対象として,乱流熱輸送に関わる基礎統計量を取得した.H29年度はエンジンの低回転数域に対応する脈動条件(周波数10Hz)において平行平板間の脈動乱流熱伝達の直接数値計算を実施した.その結果,脈動の位相によって運動量/熱輸送のアナロジーに変化が生ずることが分かった.

超音速流中での縦渦崩壊に関する研究

著者|比江島俊彦
所属|大阪府立大学 工学域 航空宇宙工学分野

超音速縦渦のマッハ数,旋回強さ,軸流速度欠損を変えて空間発達を調べ,衝撃波を伴わない超音速流中での渦崩壊現象の発生を初めて数値計算結果から確認した。また,その発生条件を理論的に導いた。

キロテスラ級磁場下における超高強度レーザープラズマ相互作用の物理

著者|畑 昌育
所属|大阪大学 レーザー科学研究所

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

Gas adsorption effects on energetics and electronic properties of doped graphene: A first-principles study

著者|藤本義隆
所属|東京工業大学理学院

第一原理密度汎関数理論に基づき、グラフェンへのガス吸着の吸着エネルギーや電子特性などを計算した。 その結果、一酸化窒素分子や二酸化窒素分子がグラフェンの両面に吸着することが分かった。また、吸着分子の種類や数に依存し、仕事関数など電子特性が変化することが明らかになった。

自由噴流の混合制御に関する数値シミュレーション

著者|辻本公一
所属|三重大学大学院工学研究科機械工学専攻

DNS(Direct Numerical Simulation)により,2つの噴流を配置した自由・衝突噴流を間欠的に噴出させるダイナミック制御や、多数噴流を配置した衝突噴流の計算を行い,流動特性および混合/伝熱特性を定量的,定性的に評価した.その結果,制御した衝突噴流の場合,噴流間に生じた吹き上げが抑制され,噴流間の伝熱性能が大きく改善されること,制御された自由噴流の場合,噴流間隔を変化させた結果,混合性能が大きく改善されること,多数(19本)の噴流を配置した場合、吹上げ,横断流れの2つの流れの組み合わせによって多重化された噴流内部に異なった流れ構造が形成され,これに応じた伝熱特性が現れることを明らかにした.

航空機渋滞モデルのインタラクティブ大規模可視化

著者|安福健祐
所属|大阪大学サイバーメディアセンター

航空機渋滞モデルのシミュレーション結果およびCARATSオープンデータ等の実際のフライトデータから航空機の軌跡やその他の情報を効果的に可視化するため、本センターの24面大型立体表示システムに対応した。一般的なディスプレイよりも大型で12Kという高解像度のタイルドディスプレイウォールを用いることで、画面に日本全体を表示しても、視野全体で個々の航空機の動きを直観的に把握することができた。また、ステレオ立体視にも対応しており、平面図視点で表示しても、航空機の高低差を立体視によって確認することができた。

仮想心臓モデルによる心臓電気現象シミュレーション

著者|稲田慎[1], 原口亮[2], 芦原貴司[3], 中沢一雄[4]
所属|[1]姫路獨協大学医療保健学部,国立循環器病研究センター, [2]兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, [3]滋賀医科大学循環器内科・不整脈センター,国立循環器病研究センター, [4]国立循環器病研究センター

目的:スーパーコンピュータ上に仮想心臓モデルを構築し,電気生理学シミュレーションを行うことで致死性不整脈のメカニズム解明や,予防・診断に役立たせることを目的とした研究を行っている.内容:心筋細胞の電気的興奮に伴う電位変化(活動電位)を再現することが可能なユニット約2000万個を組み合わせて心室形状モデルを構築した.モデルには,心外膜から心内膜にかけての電気生理学的性質の不均一性を組み込んだ.本研究では,遺伝性の心臓疾患の一つであるBrugada症候群を想定し,心筋組織内の電気的興奮伝導障害の領域を設定し,伝導障害と心室性不整脈の誘発性および持続性との関係について検討した.その結果,伝導障害領域から正常な心筋組織への不規則な電気的興奮の広がりが不整脈発生のきっかけになることが明らかになるとともに,伝導障害領域が不整脈の持続性にも関与していることが明らかとなった.また,不整脈の誘発性や持続性は,伝導障害領域の部位,伝導障害領域の大きさ,障害の程度などが影響することも明らかとなった.

両面研磨加工におけるウェーハ厚さむら抑制のための加工条件最適化

著者|福井 克成
所属|大阪大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 榎本研究室

半導体デバイスの性能および生産性向上のため,基板材料であるシリコンウェーハの両面研磨加工では表面を高平坦に仕上げる,すなわち厚さむらを極めて小さくすることが強く求められている.そこで本研究では,ウェーハ-研磨パッド間およびウェーハ-キャリアホール内壁間の摩擦と,ウェーハ-研磨パッド間の圧力分布を考慮した両面研磨加工モデルを構築し,そのモデルを用いて加工条件を最適化し,実際に厚さむらを安定して抑制できることを加工実験により明らかにした.

高強度レーザーによる高密度プラズマの加熱シミュレーション

著者|千徳 靖彦
所属|大阪大学 レーザー科学研究所

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

THE EFFECTS OF ROOFTOP WIND OF AN INTERFERENCE BUILDING TO PRINCIPAL BUILDING

著者| Doan Sy Long
所属|Institute of Urban Innovation, Yokohama National University

There is no detail standard to design wind effect of high rise buildings due to position of another building. Wind tunnel test is still an important method to design wind in urban area. However, it is costly and difficult operation. Most of research has been done on side effects. Flow over top is a non-stationary complicated path. Noted that a research of this over rooftop wind has not been concerned so far. Taniike (1992) mentioned that the principal building received more angular momentum which was generated from the shed vortices of upstream building. In research of Kawai, Okuda et al. (2012). the unsteady rooftop wind generates the arch-type vortex which stretches in a stream-wise direction near the tip of the vortex. Due to this downstream moving of vortices over top of model, this research aims to find effects from roof top wind from a reference building to principal building. The wind tunnel test is conducted in Yokohama National University by both rigid and elastic cases. Later, a CFD simulations based on open-source program OpenFOAM is simulated with support of Octopus supercomputer, Cybermedia Center, Osaka University. The same input and set-up in the wind tunnel will be performed. The comparation results of two parts would give much information on phenomenon of wind and how accurate of simulation.

宇宙の大規模構造と銀河形成

著者|長峯 健太郎
所属|大阪大学 大学院理学研究科

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

SX-ACE を用いた格子 QCD による軸性ベクトル中間子の質量計算

著者|若山 将征
所属|大阪大学 核物理研究センター

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

最密充填パッチコロイドにおける回転自由度の秩序化

著者|吉野 元
所属|大阪大学サイバーメディアセンター

パッチコロイドとはコロイド粒子の一部を金属などでコーティングすることで作られる、異方性を持ったコロイド粒子である。工学的にも、ソフトマター物理の観点からも興味深い系である。本研究では、最密充填まで密度を高めた状態での、この系の回転自由度の秩序化を明らかにする。具体的には、秩序相への相転移の性質、また秩序状態への緩和過程の性質にいて明らかにすることを目的とした。パッチコロイドの回転自由度に対して、モンテカルロシミュレーションに基づく系統的な数値解析を行った。この系は格子系であるために、ベクトル化計算が有効で、劇的な計算高速化ができた。シミュレーションの結果、熱平衡状態においては連続相転移(3-state Potts模型の普遍クラス)が起こることがわかった。緩和過程においては、べき則に従うドメイン成長則が観測され、種々の動的スケーリング則が成立することを明らかにした。

有限温度・有限密度の場の理論の研究

著者|河野 宏明
所属|佐賀大学大学院工学系研究科物理科学専攻

(a) 符号問題のない虚数化学ポテンシャルと実数アイソスピン化学ポテンシャルのある場合の格子QCD計算を行った。また、その結果を現象論模型によって解析した。結果として、PNJLタイプの現象論模型による記述は、高温では悪くないが中間温度・低温ではあまりよくない事がわかった。(以前より高い精度の解析を行った。)一方で、現象論模型の改良についての研究も行った。(b)符号問題が小さいと期待されるZ3対称なQCDの格子計算を試みた。また、現象論的な解析も行った。

創薬におけるスパコンの講演会の実施

著者|志水 隆一
所属|NPO法人バイオグリッドセンター関西

創薬におけるスパコン「京」の産業利用を推進しており、利用者である製薬企業の担当者のための講演会の開催

直接撮像法による若い恒星周りの太陽系外惑星探査、および気球搭載型遠赤外線干渉計望遠鏡の開発

著者|須藤 淳
所属|大阪大学 理学研究科 宇宙地球科学専攻

SEEDS (Strategic Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru)プロジェクトによる太陽系外の巨大ガス惑星の探査、および気球搭載遠赤外線干渉計FITE(Far-Infrared Interferometric Telescope Experiment)の開発。
内容:すばる望遠鏡を用いて年齢が1億年程度の恒星を撮像観測したデータを解析した。また、開発中のFITE構体の強度を計算するため構造解析を行なった。
結果:2009年10月から2015年1月までで40天体を観測し褐色矮星を3つ(うち1つは新規発見)を発見した。また、FITEは2018年5月のオーストラリアでの打ち上げに向けて開発を進めている。

低次元ナノ物質複合構造体の電子物性解明

著者|岡田晋
所属|筑波大学 数理物質系

本プロジェクトでは、各種異種物質ならびに外部電界と広義複合構造を形成した低次元ナノスケール物質に着目し、複合構造形成下における電子物性の変調の可能性を密度汎関数理論に基づく第一原理計算の手法と有効遮蔽媒質法を組み合わせることにより明らかにした。
 本年度は、グラフェンをチャネルとした電界効果トランジスタにおいて、荷電不純物がグラフェンへのゲート電場による電荷蓄積に現象に及ぼす影響を明らかにした。ここでは、不純物はAlナノ粒子でシミュレートし、それをグラフェン面上に吸着させ、対向電極から電荷の注入を試みた。その結果、Alナノ粒子が電極側に存在している場合、グラフェンのフェルミレベルのピン留めを誘起し、トランジスタ特性を阻害することを明らかにした。また、グラフェン端の仕事関数や電子物性の化学官能基種依存性を明らかにした。その結果、グラフェン端の電子物性は吸着された化学官能基種に強く依存することが示された。特に、水酸基化されたグラフェンでは、端に沿った真空領域に電子が染み出すような特異な状態が発現することを予言した。
ラフェン複合系に対する電子状態計算から、グラフェンへの電界効果電荷蓄積において、欠陥や吸着不純物の影響が大きいことを明らかにした。

細胞膜の面内圧力分布に対するセン断応力の影響

著者|奥山直人
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科 衝撃科学共同研究講座

細胞の力学的作用に対する応答に関連して、細胞膜にセン断応力が印加された場合の細胞膜面内圧力分布を計算し、セン断応力が面内圧力分布にどの程度影響するかを明らかにする。
粗視化分子動力学計算法(Marrink et al.,2007)を用いて、細胞膜(DOPC脂質膜)に比較的小さいセン断応力を印加した定常状態を作成し、その状態での時間平均によって、膜厚方向(z方向)の面内圧力分布を算出し、セン断応力の影響を見積もる。面内圧力分布の算出は、GROMACS-LS(http://mdstress.org/index.php/gromacs-ls/)プログラムを用いて、ユニットセルの膜厚方向を、441分割(dz=0.1nm)して算出した。時間平均は、800nsec(dt=0.04ps×20000000steps)のトラジェクトリを追跡し、等時間間隔で面内圧力分布を算出し、平均した。
セン断速度を0~4GHzまで増加させると、面内圧力分布の陰圧ピークの絶対値は減少する傾向を示したが、その相対的減少幅は3~7%程度であり、面内圧力分布に対するセン断応力の影響は小さいことが分った。また、その他の膜物性である、粒子密度分布、膜厚および単位脂質分子当りの膜面積も、セン断速度の増加に対して、ほとんど変化しなかった。

両新媒性ジアリールエテン誘導体における分子会合体の挙動に対する理論的研究

著者|佐藤竜馬
所属|筑波大学 計算科学研究センター

ジアリールエテンは繰り返し耐久性や熱的安定性に優れた分子として、高密度光記録媒体や分子応答性スイッチング素子への応用が期待されている。近年、両新媒性ジアリールエテン誘導体に対する光応答性が調べられ、異なるpoly-(ethylene glycol)鎖(PEG鎖)毎に異なる会合体を作ることが示された。しかし、どのような違いによって異なる会合体を形成しているかは明らかになっていない。
本研究では、分子動力学計算と量子化学計算を用いて各ジアリールエテン誘導体の挙動を調べた。MD計算から得た構造に対してSAXSを計算した結果、それぞれの誘導体において隣り合うジアリールエテン同士のパッキングに違いがあることを明らかにした。

マイクロ熱工学に関する分子シミュレーション

著者|芝原正彦,植木祥高,藤原邦夫
所属|大阪大学大学院機械工学専攻

ナノ・マイクロメートルスケールのエネルギー輸送現象を原理的に理解して制御することを目的として,ナノ構造が蒸発,凝縮および凝縮時の熱抵抗に与える影響を,分子動力学法を用いて調査した.そのために大規模可視化対応PCクラスタを用いた

MPS法による開いたキャビティを過ぎる非圧縮流れの数値シミュレーション

著者|吉田尚史,早川真行,豊田兼司
所属|信州大学工学部

非圧縮流れを粒子法で解くMPS法を用いて二次元非圧縮流れの開いたキャビティを過ぎる流れの自励振動現象をシミュレーションすることを目的とする.アスペクト比2.0のキャビティについて,はく離せん断層が自励振動する現象がMPS法で計算できた.

Density Functional Theory Study of Band gap tuning with S-doped BaSnO3 and first-principles design of ultra-thin LaSrCoO3-(LSCO) based catalysts for the oxygen evolution reaction

著者|Dan Ricinschi
所属|Innovator and Inventor Development Platform, Tokyo Institute of Technology

We have performed density functional theory calculations to predict the electronic structure of S-doped BaSnO3 (BSO) and complex p-type oxides, which are of great technological interest for energy conversion. The band gap predicted from the electronic structure calculation should provide a good performance of S-doped BSO for visible light absorption, due to volume expansion and changes of strength in Ba-O chemical bonding that shifts the DOS peaks deeper inside the valence band. We have also evaluated the electronic charge distribution inside LSCO films grown on La-doped BSO substrates and contribution of interface depletion layer to the enhanced electrochemical activity of LSCO. The latter appears to be caused by the large acceptor doping in the LSCO layers that imparts holes throughout the entire heterostructure, due to a favorable depletion widths that allows facile charge transfer across the electrolyte-film interface

二次元オープンキャビティ流れの異なる振動モードの底面駆動能動制御

著者|吉田尚史
所属|信州大学工学部

開いたキャビティを過ぎる二次元自励振動流の振動制御を目的とする.キャビティアスペクト比を2.0から4.0まで変化させた無制御の計算を行い,振動モード変化を確認した.キャビティ底面駆動能動制御を適用した計算を行い,異なるいずれの振動モードに対して自励振動を停止させる制御が可能であることを明らかにした.

光ファイバ中の誘導ブリルアン散乱によって生成されたナノ秒光パルスの変調不安定性

著者|松本正行、宮下原弥、木曽一志
所属|和歌山大学システム工学部

誘導ブリルアン散乱(SBS)は互いに逆方向に伝搬する光波間の増幅・非線形過程であり、高出力・大電力のパルス圧縮が比較的容易に実現できる。本研究では、ファイバ中のSBSを用いたパルス圧縮に関して、自然ブリルアン散乱およびファイバ中のKerr非線形性がパルス圧縮の安定性に及ぼす影響を明らかにした。さらに、ファイバの異常分散性とKerr非線形性の相互作用がもたらす変調不安定効果によるスペクトル幅拡大の可能性を調べた。

粗面都市境界層における気象擾乱を含んだ流入変動風の作成―空間フィルタリング・リスケーリング手法の展開―

著者|河合英徳, 田村哲郎
所属|東京工業大学

建築耐風設計や街区・建築環境予測をLESで行う上で気象擾乱を含んだ流入条件を作成するために、地表近傍において高周波変動が少ないメソ気象モデルWRF-LESの解に変動成分を付加する方法として、粗面のドライバ領域に空間フィルタリング・リスケーリング手法を用いた準周期境界条件を課す方法を提案し、WRF-LES解析結果への高周波変動成分の付加を試みた。その結果、本方法を用いることで粗面都市境界層においてもWRF-LES解析で得られる流速の平均的なプロファイルを保ちながら,高周波の変動成分を付加することが可能であることが確認できた。

フォトニック共振器中の共振器内の電磁界シミュレーション

著者|森藤正人
所属|大阪大学 工学研究科

目的 フォトニック結晶を用いたレーザ素子作製の指針とすべく、様々なフォトニック構造について電磁界シミュレーションを行い最適構造を探った.特に、大面積でありながら強い光閉じ込め性能を示す円形共振器とそこから光を取り出すための導波路との光結合強度について詳細に調べた。
概要 時間領域有限差分法(FDTD法)により、円形共振器内で生じた光が導波路を通して領域外へと移動していく様子をシミュレーションし、導波路幅、共振器半径等の構造パラメータに対して結合強度がどのように変化するかを調べた。
結果 導波路と共振器との結合強度に関する知見は、光多重通信と呼ばれる単一の導波路に複数の共振器を結合させる技術の基礎となるものである。本研究により一つの導波路に対して10個程度の共振器をつなぐことができることが分かった。この成果により、従来のものより小型で高性能な光多重通信素子作製の可能性を示すことができた。

相対論的Vlasov–Maxwell系の自乗量保存スキーム開発

著者|白戸 高志
所属|東北大学 工学研究科 航空宇宙工学専攻

運動論プラズマの数値計算では保存則を満足することが困難であり、しばしばシミュレーションの妥当性に致命的な結果をもたらしてきた。本研究では、離散方程式が満たすべき数学公式に着目し自乗量保存スキームを開発し、SX-ACE 上で実施した数値実験により保存則を完全に満たすことを世界で初めて実証した。

スネイルターゲット内面へのレーザー照射の三次元PICシミュレーション

著者|LAW King Fai Farley
所属|大阪大学 レーザー科学研究所

LFEXレーザーに照射されたスネイルターゲットで発生した反平行磁場による粒子加速機構をシミュレーションで検証する。
内容 三次元Particle In Cell(PIC)コードを利用し、実験より縮小させた計算空間スケールで、スネイルターゲットの軸方向に加速されたイオンを調べた。
結果 反平行磁場によって加速されたと思われるイオンがシミュレーションでも観測され、実験結果を定性的に再現させることに成功した。

津波シミュレーションプログラムのOCTOPUSへの移植と高速化

著者|撫佐 昭裕
所属|東北大学サイバーサイエンスセンター

2011年の東日本大震災の教訓を踏まえ,津波浸水による被害を短時間で予測するため,SX-ACEにおいて津波シミュレーションプログラムを開発と高速化を行ってきた.将来,SX-ACEだけでなく,他のスーパーコンピュータでも短時間で被害予測ができるように,OCTOPUSへの移植と高速化を実施した.
移植においては,ソースコードの改変を行うことなく,正常に動作することができた.また,Xeonプロセッサの性能を引き出すためにAVX512命令を活用できるように,コンパイル指示行を利用して高速化を実施した.図(左)に示したように約1.7倍の性能向上を達成した.そして,Xeon Gold1CPU とSX-ACE2CPUがほぼ等しい性能であることを確認した(図(右)).

大規模シミュレーションで見る宇宙初期から現在に至る星形成史の変遷

著者|樋口 公紀
所属|九州大学 大学院理学府

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

Adaptive Resonance Theory

著者|横山晴道,荒木拓也
所属|NEC

高速分散処理フレームワークFelissのSX-ACEでの開発環境整備を行い、APIを利用したMatrix Library や Machine Learning Algorithm Libraryの動作を検証した.その後、ART2 Clusteringアルゴリズムを実装し、SX-ACEで実行した.

並列プログラム生成系Flintにおけるメモリ参照効率のよいSX-ACEプログラムの生成

著者|置田 真生,石田 祐二郎,萩原 兼一
所属|大阪大学 大学院情報科学研究科

Flintは生体機能を表現する数理モデルを入力として,並列実行可能なシミュレーションコードを生成する.多様な並列環境に応じた実行効率の高いシミュレーションの実現を目指している.本研究の目的は,SX-ACE上で実行効率の高いコードを生成するようFlintを拡張することである.Flintは不規則な参照パターンを含むプログラムに対するベクトル化効率を最大化するため,配列の間接参照を多用したコードを生成する.依存関係を明示することで間接参照のベクトル化が可能であるが,直接参照と比較するとメモリ参照のコストが大きい.
そこで本研究では,参照パターンを解析し不必要な間接参照を自動的に削減する手法を提案する.さらに,間接参照が減少するようにデータ配置とベクトル化されるループ内の参照順を最適化する.
心筋細胞の膜電位モデルから生成したコードに対して,提案手法はSX-ACE上の実行時間を最大25%削減した.手法の適用前後で,メモリバンド幅ピーク性能比は15%から20%に向上した.

海洋中の乱流と混合に関する数値実験的研究

著者|吉川 裕、牛島 悠介、藤原 泰、萬年 隆裕
所属|京都大学大学院理学研究科

海洋表層では風により発生する乱流により、活発な鉛直混合が生じ混合層と呼ばれる鉛直一様な層が形成される。この混合層の深さは、海面熱フラックスの日変化に影響されることが、前年度までに行ったラージ・エディ・シミュレーションにより明らかになっている。混合層深度は海面水温を通じて気候に影響を与えることから、日変化の影響下での混合層深化過程を適切に再現するパラメタリゼーションスキームの構築が、大規模な海洋そして大気の循環場の再現には必要である。そこで、既存のパラメタリゼーションスキームの妥当性をラージ・エディ・シミュレーション結果をもとに評価した。その結果、既存のスキームでは上記の過程を適切に再現できないことと、その原因は運動エネルギー拡散過程のパラメタリゼーションにあることを明らかにし、さらにそのパラメタリゼーションの改善方法を提案することができた。

熱流体物理の未解決問題の数値解析研究

著者|内藤 健
所属|早稲田大学 理工学術院基幹理工学部機械科学・航空学科

スーパーコンピュータを利用して様々な問題の熱流体数値解析がおこなわれているが、例えば、直管内で乱流遷移する位置と入口乱れ強さの関係を解明できる数値解析や理論は存在してこなかった。当方では、確率論的Navier-Stokes方程式とその境界条件の理論を新たに提案し、それに基づいて、現象の解明を可能にしてきている。
また、それを用いて、高効率ロケットエンジンの性能検討を行ってきている。

MOシミュレーションによる有機低分子の吸光波長予測

著者|諏訪志典[1]、川嶋裕介[1]、川下理日人[2]、田雨時[1]、高木達也[1]
所属|[1]大阪大学大学院薬学研究科、[2]近畿大学理工学部

プローブ分子によるイメージング技術が生命現象の解明に大きく貢献してきているが、そのプローブについては近赤外線吸収を示すような化合物が望まれている。そこでMOシミュレーションによる新規構造の導出のために、新規有機色素及びその誘導体について、量子化学計算により構造の違いによる吸光波長の変化の再現を行う。10構造の化合物に対してGaussain09を用いてMOシミュレーションを行った。DFT法によって電子基底状態における構造の最適化、TD-DFTを用いて一電子励起状態におけるエネルギーを求め、その差を取ることで吸光波長を予測した。計算レベルには真空中でB3LYP/6-31G(d)を用いてクロロホルム中の測定値と比較した。回帰分析を行ったところ相関係数が0.79と高い値が得られた。1と3、6、7のような同位置の置換基間での違いによる影響を反映できていることから、有効な手段であることが確認された。

厳密な Z3対称性を持つ量子色力学による格子計算

著者|開田 丈寛
所属|九州大学 大学院理学府

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

Hi-QHDコードによる新材料FinFETのデバイスシミュレーション解析

著者|鍾 菁廣[1], 森 伸也[1], 降旗 大介[2]
所属|[1] 大阪大学工学研究科, [2] 大阪大学サイバーメディアセンター 

次世代の3次元構造を持つ新材料半導体デバイスの開発に向けて, 新材料を用いたデバイスの輸送特性をデバイスシミュレーションによって予測する。
新材料として期待されているIII-V族半導体(InGaAs, GaSb)をチャネル材料に持ったFinFETの短チャネル効果のシミュレーション解析を行った。
III-V族FinFETでは, Finの構造により, ドレイン電界による障壁低下効果はSiと同程度であるが, サブスレッショルド係数は, 有効質量・誘電率の違いにより量子閉じ込め効果の度合いが変化することで劣化することを明らかにした。

格子量子色力学を使った高密度物質の研究

著者|河野 宏明
所属|佐賀大学 理工学部

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

ゴム材料中のナノ粒子構造に対するディープラーニング画像認識モデルの 分散学習による高速最適化技術手法の検討

著者|萩田 克美
所属|防衛大学校 応用物理学科

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

法線ベクトル追跡型非接触ナノ形状測定装置の開発

著者|木崎嶺
所属|大阪大学 工学研究科

非球面や自由曲面形状を持つ、形状自由度の高い光学素子を高精度に測定する技術が必要とされてきている中で、非接触かつ参照面等を必要としない測定手法の開発を行っている。我々は、試料表面の法線ベクトルを取得し形状を導出する非接触ナノ形状測定装置を開発し、現在までに、非球面や自由曲面等の測定をサブナノメートルの繰返し性で測定できることを確認しており、R=1000 mm凹球面ミラーの測定では、10回の繰返し性を数十pmで測定することができた。現在は装置の不確かさの見積もりを行うため研究を進めている。

ソフトウェアテストのためのテスト設計

著者|土屋達弘
所属|大阪大学大学院情報科学研究科

組み合わせテストとよばれるソフトウェアテスト手法において,故障検出とその特定を可能にするテスト集合を設計する.このような特性を有するテスト集合は,ロケーティングアレイという数学的構造と見なすことができる.本研究では,ロケーティングアレイの探索を充足可能性問題(SAT)として表現し,SATソルバーを利用してこれを求めた.実験の結果,いくつかのケースにおいて,これまで知られている範囲で,最小のロケーティングアレイを発見できた.

超音速燃焼を考慮した圧縮性粘性流れの数値解析法に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

液体ロケットタンク破壊時の燃料噴流と超音速気流の干渉メカニズムを把握することを目的として,化学種の質量保存を含む3次元非定常圧縮性粘性解析を行った.その結果,再循環領域,後流領域,上流側せん断層において水素燃料の分布する渦構造が捉えられ,再循環領域内から発生する馬蹄渦が着火・保炎の主なメカニズムになり得ることが分かった.

見かけの動的接触角と局所の動的接触角

著者|大森健史
所属|大阪大学工学研究科機械工学専攻

分子動力学法を用いた解析結果から局所の動的接触角の支配原理を抽出すると同時に,Navier-Stokes方程式とCahn-Hilliard方程式に基づく数値解析により,既往研究では個別の議論しかなされていなかった見かけの動的接触角と局所の動的接触角の関係について明らかにした.

反射性鱗片状粒子による乱流の可視化

著者|栗田 朋幸、後藤 晋
所属|大阪大学 基礎工学研究科

状粒子を用いた流れの可視化は室内実験でよく行われる。この可視化で現れる明暗の模様は流れのどのような情報を反映しているか一般によく分かっておらず、これを明らかにすることが本研究の目的である。そのために、乱流中で大量のフレークを追跡する数値シミュレーションを実行し、実験と同様の模様を再現した。数値シミュレーションで再現した明暗の模様と乱流中に存在する渦の分布を比べることで、明暗の模様は渦の存在を反映することが分かった。

乱流燃焼の直接数値シミュレーション

著者|太田 貴士
所属|福井大学

直接数値シミュレーションの技術を用いて,乱流と燃焼現象のような複雑な物理現象の関わりを調べて,メカニズムを解明することによって,乱流の予測方法の開発と乱流制御の実現を目指している.特に,詳細反応機構を用いた水素燃焼と乱流構造の発達の関係に注目して,渦構造の変化が燃焼の促進と抑制に及ぼす影響を明らかにした.

爆轟現象の解明とその応用に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

水素/空気予混合気に対する詳細化学反応モデルを使用して,3次元の非定常圧縮性非粘性解析を行った.今年度はデトネーションを応用した回転デトネーションエンジンのエアロスパイクを有する形状について解析を実施し,推進性能を評価した.

乱流および多相流のシミュレーション

著者|梶島岳夫, 竹内伸太郎, 大森健史, 岡林希依
所属|大阪大学 工学研究科 機械工学専攻

空力騒音、二相乱流、二相伝熱、流体構造連成解析、気液界面および濡れの現象を対象として、差分法、有限要素法、分子動力学法、差分格子ボルツマン法による解析方法を適宜開発している。

The phase transition of the quark confinement and deconfinement, magnetic catalysis, and the structure of the QCD vacuum

著者|長谷川 将康
所属|Joint Institute for Nuclear Research, Bogoliubov Laboratory of Theoretical Physics, Moscow, 141980, Russia

Nf = 2 + 1の動的クォークを含むQCD真空に強い磁場を入れて、磁場がクォーク閉じ込めと非閉じ込め相転移、カイラル対称性の自発的破れと回復に与える影響を大型計算機を用いて調べている。Monopoleは、クォーク閉じ込め機構にとって重要な役割を果たし、また、instantonはカイラル対称性の自発的破れを誘発すると考えられている。我々は、QCD真空に磁場を入れ、Abelian monopoleの密度とinstanton密度を計算した。そして、monopole密度は、磁場の影響によって増えるが、instanton密度は、磁場の影響をあまり受けないことがわかった。現在、格子体積を大きくして、統計数を増やして解析を行っている。

リガンド活性化能を予測するMDシミュレーション系の構築

著者|土屋裕子, Gert-Jan Bekker, 中村春木
所属|大阪大学 蛋白質研究所

リガンド結合により活性化する蛋白質に着目し、この蛋白質に結合可能な低分子化合物の蛋白質活性化能を予測するシミュレーション系の構築を目指す。
 異なる活性化能を示す3種の既知リガンドを蛋白質にそれぞれ結合させ、蛋白質上の着目する構造領域(この構造変化がリガンド結合および蛋白質機能に関係すると考えられる)の変化を促進するため、200psシミュレーションを実行後、着目する構造領域の変化が最も大きいスナップショットをトラジェクトリから選択し、このスナップショットを初期構造として次の200psシミュレーションを開始した。この操作を1プロダクトランあたり100回繰り返した。着目する構造変化および蛋白質-リガンド結合変化の調査より、リガンドの活性化能と構造変化および相互作用変化との関係性を検討した。
 構造変化の度合いはリガンド種により有意な差が見られ、また蛋白質-リガンド相互作用変化も異なる傾向を示した。強活性化リガンド結合型では、構造変化を強いた蛋白質領域を含む蛋白質-リガンド相互作用の多くが5回の全てのプロダクトランにおいて維持された。一方非活性リガンド結合型では、全プロダクトランにおいて相互作用形成数は大きく減少し、さらにプロダクトラン毎に異なる相互作用変化の傾向を示した。この結果は、活性化能と構造変化および相互作用変化との関連性を示唆するものであり、リガンドの蛋白質活性化能の予測や新規リガンドデザインに発展できるものと考えている。

三角柱セルを用いたFDTD法におけるCFRPパネルの電磁界・熱分布解析

著者|梅田 晃央
所属|同志社大学大学院 理工学研究科

炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)は鉄などの金属に比べ非常に軽量・強いことから航空分野をはじめ様々な分野で利用が広がっている。しかしながら航空機が被雷した際にCFRPの構造上の理由から熱的スパークなどによる事故が発生することが憂慮されている。このことよりCFRP製機体に適切な耐雷設計を施すため
にCFRPの電気的特性を明らかにすることが重要である。

直接法による半導体シミュレータ向け連立方程式解法の高度化

著者|鈴木 厚
所属|大阪大学 サイバーメディアセンター

半導体問題を記述するDrift-Diffusion方程式は静電場と電子,正孔密度分布を記述するが,拡散係数の指数関数依存性により拡散方程式を離散化した際の行列の条件数が極めて大きい.倍精度演算では計算精度が不足する場合に, 連立方程式ソルバーの直接法コードがベクトルCPUのSX-ACEで4倍精度演算を実行できるよう拡張する.DissectionコードはC++テンプレートを用いるため浮動小数点データに柔軟性がある.上位と下位の二つの倍精度実数で表現するdouble-doubleデータを4倍精度とする.Fortran90にはNEC製のALSQUADを,C++にはQD ライブラリーを用いる.行列演算のBLAS ライブラーは Fortran90 のインライン展開を用いてベクトル化を行う.自由度数568,455,非零要素数8,330,429の疎行列で実行性能を比較した.SX-ACE標準のreal(kind=16)/long double型はベクトル化できない.ASLQUAD/QDライブラリーの type(quad)/dd_real 型はベクトル化が可能であり, 倍精度演算では同等の速度を実現するIntel製CPUに対して4倍精度演算では3倍程度高速である.

生体電子移動反応のシミュレーション

著者|鬼頭宏任
所属|筑波大学計算科学研究センター

緑膿菌(PA)と好熱性細菌(HT)由来のシトクロム(Cyt) c蛋白質のキメラ・ヘテロ・二量体は、それぞれの活性中心に酸化還元機能を持つヘム補因子を有するため、二量体間の電子移動を起こすと考えられる。この研究では、GPU加速化された分子動力学(MD)シミュレーションプログラムNAMDを、Tesla P100が1ノード当たり4機搭載されたOCTOPUS上で用いて、このCyt c二量体の構造熱揺らぎを調べた。MDスナップショットの構造に対するX線結晶構造からの平均二乗偏差(RMSD)を計算すると、溶媒中では複数の準安定構造を持つことが分かった。

日本の全世帯の位置情報付き仮想個票データの統計データからの生成

著者|原田 拓弥、杉浦 翔、村田 忠彦
所属|関西大学 大学院 総合情報学研究科(原田 拓弥、杉浦 翔)、関西大学 総合情報学部(村田 忠彦)

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

水素・重水素・トリチウム分子凝縮系の未知物性の解明 ―量子分子動力学法によるアプローチ―

著者|金 賢得
所属|京都大学 大学院理学研究科

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

界面超伝導状態における磁場の効果

著者|兼安 洋乃
所属|兵庫県立大学大学院 物質理学研究科

Sr2RuO4-Ru共晶系におけるスピン三重項界面超伝導状態について、磁場誘起カイラル転移と電流における磁場の効果を研究した。共晶系モデルに対するGinzburg-Landau方程式を数値的に解き、p波界面超伝導状態の秩序変数及び電流の磁場依存性を調べた。結果として、界面超伝導状態における垂直磁場誘起カイラル転移、及び共晶系特有の磁化構造と電流の空間分布を数値計算から明らかにした。

Analysis of stress tensor in lattice QCD numerical simulation

著者|北沢 正清
所属|大阪大学 理学研究科

We studied spatial distribution of the stress tensor in the quark-antiquark system in SU(3) Yang-Mills theory. The stress tensor is constructed with the aid of the gradient flow. The formation of the flux tube is confirmed in terms of the stress distribution.

導電率テンソルを用いたFDTD法による実寸サイズのCFRPパネルの電流分布解析

著者|上野 航暉
所属|同志社大学大学院 理工学研究科

炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)は近年様々な分野において利用がされているが,航空宇宙分野,特に航空機においては重量比で約50%のCFRPが利用されてきている。しかし,CFRPは各層の構造上,炭素繊維と樹脂による著しい導電率異方性を有している。このような各層の構造を正確に模擬し,解析を行うことは機体の翼胴を結合させている金属製ファスナ近傍に雷電流が集中することによる熱的スパークを検討する際には重要である。本研究では,CFRPパネルへ雷電流を注入したときの電流分布解析を,FDTD法(Finite Difference Time Domain)を用いて行った。

開いたキャビティを過ぎる三次元非圧縮流れにおける渦構造のシミュレーション

著者|吉田尚史,鈴木智洋,成田翔
所属|信州大学工学部

開いたキャビティを過ぎる三次元自励振動流の渦構造を解析することを目的とする.キャビティアスペクト比1.5と2.0について直接数値シミュレーションを実行し,自励振動と渦構造を可視化した.1.5は振動しないが2.0は自励振動した.キャビティ内の渦構造の違いが振動の有無に関係する結果が得られた.

水素燃焼の数値シミュレーション

著者|神谷朋宏
所属|岐阜大学大学院工学研究科

高圧で液体水素が貯蔵されているタンクに穴が開いた場合,高圧の水素が雰囲気へと高速噴射され,気液間の相互作用により微粒化する.その後,蒸発および空気と混合を経て水素空気の混合気体ができる.そのため,液体水素の数値シミュレーションを行うためには,微粒化を精度よく予測する必要がある.そこで,本研究では,液体が気液間の相互作用により微粒化されていく過程を数値解析し,微粒化を予測するモデルを提案することを目的とする.

ニュートン流体・粘弾性流体の壁面せん断流の遷移過程

著者|[1]塚原 隆裕,[1]河田 卓也,[2]國井 康平,[2]猪岡 翔,[2]山田 裕也,[2]高木 健吾,[2]明智 ゆき,[2]田中 椋,[2]仁村 友洋,[2]山崎 広哉,[2]新田 圭,[2]冨岡 武,[1]平戸 健介,[1]柳沢 高広,[1]福田 雄大
所属|[1]東京理科大学 理工学部機械工学科, [2]東京理科大学 大学院理工学研究科 機械工学専攻

壁面せん断流の亜臨界乱流遷移において,その遷移過程と発現構造は複雑で,理論的アプローチが困難である.特に,ポリマー溶液などの粘弾性流体という非ニュートン流体となれば,ポリマー応力などの付加的応力やレオロジー特性時間(緩和時間)に依存してより複雑な遷移過程を呈する.本研究では,Giesekus粘弾性モデル流体流れの直接数値シミュレーションを行い,低レイノルズ数下での粘弾性による流動構造の変化や(ニュートン流体を含む)乱流遷移過程の変化を調査した.

フォトニックナノジェットを利用した微細加工に関する研究

著者|上野原努
所属|大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

フォトニックナノジェット(Photonic nanojet: PNJ)は直径数ミクロンの誘電体マイクロ球にレーザ光を照射した際に発生する高強度のビームである.PNJのビーム径は数百ナノメートルと小さい.また,PNJはその小さいビーム径を保ったままほとんど発散することなく数ミクロンの距離を伝搬する.これらの特徴からPNJはナノメートルスケールの3次元微細加工技術に応用可能であると考えられる.PNJの強度分布制御は加工を制御していく上で重要な課題である.そこで,Finite difference time domain (FDTD) 法を用いた電磁場解析によって強度分布シミュレーションを行い,加工の制御性について明らかにする.

マルチPWレーザーパルスとアンダーデンスプラズマの相互作用

著者|矢野 将寛
所属|大阪大学 工学研究科

目的 ブラックホール近傍の電子の挙動を模擬する,非常に大きな加速度を持つ電子をプラズマ中に生成すること.
内容 マルチPWレーザーパルスとアンダーデンスプラズマの相互作用を3次元Paricle-in-cellシミュレーションによって計算した.
結果 クーロン爆発によって,パルス進行方向に垂直な方向のプラズマ波が誘起される.その波とパルス進行方向の波の干渉によって電子バンチが生成されるという新しい電子バンチ生成過程が明らかになった.

超強磁場下でのレーザープラズマ相互作用に関する粒子シミュレーション

著者|佐野孝好
所属|大阪大学レーザー科学研究所

キロテスラ級の磁場中では、右回り円偏光のレーザー(ホイッスラーモード)
が物質の中を伝播し、直接プラズマと相互作用を行うことができる。このよう
な状況をプラズマ粒子シミュレーションを用いて模擬し、プラズマ加熱や粒子
加速の効率を定量的に評価した。 その結果、レーザーが相対論的強度になる
と、幅広い範囲の磁場強度でも電子サイクロトロン共鳴による吸収が非常に効
率的になることがわかった。また、強磁場下では、ブリルアン散乱が起こるこ
とで、電磁波からイオンに直接エネルギー変換できる可能性が示された。

高濃度に固体粒子を含む流れの数値シミュレーション

著者|辻拓也,田中敏嗣,鷲野公彰
所属|工学研究科機械工学専攻 

高濃度に固体粒子を含む流れでは,粒子スケールで起こる固体粒子間の衝突や,粒子-流体間の直接的な流体力学相互作用が,気泡やクラスターなどのメゾスケール構造の形成を引き起こし,さらにこれらの自発構造がより大きいスケールでの対流運動を誘起するなど,典型的なマルチスケール構造を持ちます.実際の工業的な応用では,多くの場合二相間の熱・物質輸送を伴い,さらには粒子サイズの不均一性や,非球形性が問題となることが多く,高精度な予測を行うには多くの物理因子を考慮する必要があります.本研究では,これらの素過程となる種々の現象のモデル開発に取り組んでいます.

素粒子・原子核物理学の数値的研究

著者|RCNPグループ
所属|大阪大学核物理研究センター

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理であ
る量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関
連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパー
コンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究に使われている。そ
の内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン
物理現象論の数値的な解法である。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作
用、有限温度・密度における真空の性質、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・ハドロン物理現象論
3-4核子系の精密計算、ハドロン生成反応の理論解析に基づくハドロン共鳴

(iii) 核構造
原子核密度汎関数法、ハイパー核

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

混相流数値シミュレーション

著者|杉山 和靖
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科

VOF法/MTHINC法,Boundary Data Immersion法に基づく気液二相,流体構造連成コードのMPI並列版のコードを開発し,動作確認を行なった.SX-ACEを使用してのプロダクトランは行なわなかった.

高構造物雷撃に伴う電磁界のFDTD解析

著者|荒木 翔平
所属|同志社大学大学院 理工学研究科

高構造物は雷撃を受ける確率が高いため,雷電流を直接測定する手段として古くから利用されている。最近では,落雷位置標定システムの落雷捕捉率の評価,位置標定誤差の評価,測定電磁界ピーク値に基づく雷電流ピーク値推定式の妥当性の検証や較正にも利用されている。これらのことから,雷撃を受けた高構造物の過渡特性や放射される電磁界について実験や数値解析により検討を行っておくことが重要である。本研究では,雷撃を受けた東京スカイツリー内の雷電流と放射電磁界のシミュレーションを,FDTD法(Finite Difference Time Domain)を用いて行った。

An elastic dumbbell model with Harisenbon-type configuration in multi-scale analysis of polymer-diluted turbulent flow

著者|Kiyosi Horiuti
所属|Department of Mechano-Aerospace Engineering,Tokyo Institute of Technology

目的 
流体中を流動する高分子において通常仮定されている溶媒の変形への高分子の反変性に対し、本研究では de Gennes仮説に基づいて、共変性を導入した非追随性強度可変型モデルの構築を図る.このモデルでは、高分子の伸長につれてその渦層に対する配向がハリセンボンの針のような変遷を行い、弾性効果を最大化するような運動を行う.
内容 
高分子をdumbbellモデルで近似し、そのBrownian dynamics simulation と溶媒のDNSを結合する多重スケール数値計算を行った.
結果 
図は高分子の配向の時間発展を示す.反変型の配向から共変型の配向に遷移しその過程が概周期的に反復されるが、最大の高分子エネルギーの生成は共変型の配向において得られる.

Large eddy simulation of wind loads on solar panels

著者|Jingxue Wang
所属|Tokyo Polytechnic University, Wind Engineering Research Center

It is urgent to investigate the wind loads on solar panels with the rapid growth of solar photovoltaic industry. The wind pressure characteristics on flat-roof-mounted solar panels behave differently compared with those on flat roofs, and have a complexity due to the turbulence induced by building, inclined solar arrays and of course, approaching turbulence in the atmospheric boundary layer. Large eddy simulation (LES) using PISO algorithm in OpenFOAM is performed to study the underlying aerodynamic mechanisms responsible for wind loads on solar panels for two normal wind directions  =0 and 180. The approaching flow turbulence generated by spires and blocks agrees well with those of wind tunnel test. The pressures on solar panels and those of the roof which they are mounted are firstly compared and validated by wind tunnel results. The wind pressure coefficients of LES are within an accuracy of 20%~30% compared with the results of wind tunnel tests. The general flow fields, including the mean velocity profiles and turbulence fluctuation intensities of solar panels and flat roof are compared. The significance of large-scale separated and reattached flow caused by roof’s edge and local flow structure near the solar panels is examined.

Nanoscale Dehydrogenation Observed by Tip-Enhanced Raman Spectroscopy and its Theoretical Calculation

著者|Agung Setiadi, Megumi Akai-Kasaya, Yuji Kuwahara
所属|Department of Precision Science and Technology, Graduate School of Engineering, Osaka University

This study demonstrates a tip-enhanced Raman spectroscopy (TERS)-induced chemical reaction by immobilizing molecules with a self-assembled monolayer on a Au(111) surface. The Raman spectrum of an isolated molecule and their derivatives were calculated to compare with the TERS spectrum. The intensities of the Raman spectra were converted from the calculated Raman activities using an equation which is available in the Chemcraft software. Raman spectra of an isolated pristine [7]TH-aldehyde molecule, and of the isolated [7]TH-aldehyde molecule with the L-mode localized at the side (L1), center (L2) and on all three benzene rings (L3) were calculated and compared to the experimental results. According to the calculated spectra, the L1- and L2-modes result in peaks at 1996 and 2012 cm-1, respectively. By the comparison to the experimental results, it is deduced that one side benzene ring which protruded upwards close to the tip had undergone hydrogenation induced by pyrolysis with the tip acting as both local heat source and catalyst.

沿岸域における高解像流動水質シミュレーション

著者|中谷 祐介, 石橋 春佳, 大城 光, 中 友太郎
所属|大阪大学 大学院工学研究科 地球総合工学専攻

三次元沿岸海洋モデルFVCOMを用いて,①閉鎖性の高い港湾域における発電所取放水を利用した流動制御と水質改善の効果評価,②河川感潮域の流動・水質に及ぼす沿岸地形改変の影響解析,③感潮河川網における浮遊物質の挙動解析を行った

都市域に形成される組織構造の特性に関する基礎的検討

著者|河合英徳、巣山裕記、佐久間悠人、田村哲郎
所属|東京工業大学

高層建築物群が散在する東京の市街地など不均一な粗度条件を持つ都市境界層の乱流構造を把握するための予備的な検討として、粗度ブロックが並ぶ解析領域を対象としたLESを実施し、流れ場の乱流構造に関して確認した。その結果、2種類の粗度ブロックの配置を対象としたLESから、都市キャノピー内部の流れの構造特性とキャノピー上部にできる組織構造を把握した。

脳動脈瘤コイル塞栓術における局所的なコイル充填率が血流の滞留度合に与える影響

著者|大谷 智仁[1],新藤 拓也[2],伊井 仁志[1],和田 成生[1]
所属|[1]大阪大学 大学院基礎工学研究科, [2]大阪大学 基礎工学部

直交格子法を用いた数値流体計算により,血管内治療用コイルが留置された脳動脈瘤内の血流動態をシミュレートした.これにより,瘤と母血管との接続(ネック)部における局所的なコイル充填率の違いが,瘤内血流の運動エネルギの値に大きく影響することがわかった.

電離層電子密度の動態に関するシミュレーション

著者|山中千博
所属|大阪大学大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻

スーパーコンピューターを用いた大規模シミュレーションを実施し、電離層電子密度が変化する過程を様々な条件下で検討した。

放射流体シミュレーションによる多価ビスマス放射の数値的評価

著者|[1]東口武史,[1]原広行,[2]藤岡慎介,[2]長友英夫,[3]佐々木明,[4]砂原淳
所属|[1]宇都宮大学大学院工学研究科, [2]大阪大学レーザーエネルギー学研究センター, [3]量研機構関西光研,[4]レーザー技術総合研究所

炭素の窓軟X 線 (波長:> 4.4 nm)・水の窓軟 X 線 (2.3 ~ 4.4 nm) は波長が短く,同時に光子エネルギーも大きいことから,材料科学,生体応用などの様々な分野で期待されている.
本研究では,放射流体シミュレーションの妥当性を確保し,水の窓軟X 線光源のモデリングを行うことを目的としている.ここでは,83Bi をベースにモデリングを進めた.この結果を拡張することにより,83Bi におけるホットスパーク実験の放射流体シミュレーションも構築できるようになるものと考えている.

構造関数モデルを用いた二次元乱流噴流のLES

著者|吉田尚史,土屋俊樹,岡本航侑
所属|信州大学工学部

構造関数モデルを用いたLarge Eddy Simulationで二次元乱流噴流の発達を調べることを目的とする.レイノルズ数2000, 6000, 10000の二次元乱流噴流をLESで計算し,統計量を実験値と比較し解析した.構造関数モデルは数値的に安定で,時間平均速度や乱れ強さは実験値と一致する結果が得られた.

道路橋用アルミニウム合金材の実用化に向けた研究

著者|清水弘樹
所属|大阪大学大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 大倉研究室

アルミニウム合金は軽量で耐食性に優れているため,アルミニウム合金材を道路橋に適用することで,耐震性の向上およびコスト削減を図ることを目的とする.縦補剛されたウェブを有するアルミニウム合金桁の曲げ耐荷力を与える基礎として,そのウェブである縦補剛された長方形板に対して,FEMによる弾塑性有限変位解析を行い,終局状態での面内曲げ耐荷力を調べ,近似曲線を求めた.図に示すように,縦補剛されて長方形板の面内曲げ耐荷力は,同一の幅自乗断面積,すなわち同一の断面積を有する無補剛板の面内曲げ耐荷力を大きく上回る.

有限温度・有限密度2カラーQCD の相図と超流動性の解明

著者|伊藤 悦子
所属|大阪大学 核物理研究センター

平成29年度公募型利用制度で採択された課題です。

噴流-エッジ系における自励振動流のシミュレーション

著者|吉田尚史,松村竜典
所属|信州大学工学部

噴流がエッジに衝突すると噴流が上下に発振する.噴流エッジ間距離を変え振動の変化を調べることを目的とした.噴流ーエッジ間距離を1から14まで1間隔で変化させた計算を行い,エッジがない二次元噴流と比較した.エッジがない二次元噴流では下流で不安定によって振動するのに対し,エッジがある場合は上流から明確な渦の巻き上がりが発生し自励振動した.