2022年度に報告された大規模計算機システムの研究成果の一覧です。



First principle studies on C-C bond formations in electrochemical CO2 reduction reactions

著者|Kazuhide Kamiya
所属|Research Center for Solar Energy Chemistry, Graduate School of Engineering, Osaka University.

O2電解による有価物質生成におけるキープロセスであるC-C結合生成反応は銅系触媒のみが高い活性を有する。本課題では第一原子分子動力学を用いて、この銅系触媒のC-C結合生成に関する作動原理の解明を目指した。金属銅上では中間体COの吸着エネルギーが適度な値を有することで、CO二量化反応とそれに続くプロトン移動反応の活性化エネルギーが小さく抑えられていたことが明らかになった。

致死性不整脈の発生メカニズムの理解とその制御方法の確立

著者|津元 国親
所属|金沢医科大学 医学部

心室性致死性不整脈を発症する際、きっかけとなる応答(トリガー応答)が発生することが知られている。本研究は、トリガー応答の生成メカニズムを明らかにし、不整脈誘発危険度を定量化することで、不整脈の発症予防・制御の方法論の開発を目的とする。ヒト心室筋細胞の数学モデルを元に、6 × 6 cmの心筋シートモデルを構成し、早期後脱分極(Early afterdepolarization: EAD)として知られる再分極異常を生じる心筋細胞群(クラスタ)を含む組織における興奮伝播ダイナミクスをコンピュータシミュレーションにより検討する。様々なEADクラスタ存在条件下でトリガー発生機序を検討した。心室組織内にEADクラスタサイズ、クラスタ間距離に依存した特定形状の再分極不均質性を示す組織領域が現れると、不整脈を惹起するトリガー応答が生成されることを見出した。

無衝突プラズマ衝撃波のシミュレーション

著者|花野正浩¹, 坂和洋一², 佐野孝好²
所属|大阪大学 大学院理学研究科¹, 大阪大学 レーザー科学研究所²

2次元粒子シミュレーションコードPICLSを用いて,高強度レーザー駆動プラズマイオン加速の物理機構を明らかにすることを目的とした.臨界密度程度のCHプラズマにパルス幅=27 fs, 規格化されたレーザー 強度= 30 の高強度レーザーを照射することにより,イオンを加速した.その結果,C6+イオンがMagnetic Vortex 加速を経てmagnetic pressure によって駆動された無衝突衝撃波加速にいたる,2段階加速をすることが明らかになった.

薬用低分子構造に着目したインスリン解離における共溶媒和自由エネルギー解析

著者|肥喜里 志門
所属|大阪大学 基礎工学研究科

  氏名:肥喜里 志門 所属:大阪大学 基礎工学研究科 概要: 2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

量子ソフトウェア開発と多体問題への応用

著者|宮腰 祥平、上田 宏
所属|量子情報・量子生命研究センター

近年、量子計算機の自由度を活かした量子多体系のシミュレーションが注目を集めている。特に現在の量子計算機の事情とマッチした浅い量子回路で適切な量子状態を表現する手続きの構築が重要となっている。このような背景のもと、縦磁場と横磁場が共存する量子Ising模型における強磁性状態の時間発展ダイナミクスのシミュレーションを対象に、非平衡状態に対する最適な量子回路表現を探究した。任意の量子状態を表現するマルチ量子ビットゲートによる行列積状態の構造を起点として、それらを少数の2量子ビットゲートに分割した際に自然と得られるダイアモンド型の量子回路表現についてシミュレーションを行なった。その結果、ダイアモンド型の量子回路を用いたシミュレーションでは同数のゲートを持つ他の量子回路アンザッツと比較してより長いシミュレーション時間を再現することがわかった。

AIを用いたタンパク質間相互作用の迅速スクリーニング

著者|河口真一
所属|大阪大学 生命機能研究科

生命現象の根幹であるタンパク質の働きは、多くの場合、相互作用を通じて発揮される。大規模なタンパク質間の相互作用候補について、AIによる複合体予測を行い、生化学的実験へのボトルネックを緩和することが期待されている。本研究では、生殖細胞に存在するタンパク質集積体(ヌアージュ顆粒)に局在する20種類のタンパク質間について、AlphaFold2を用いた複合体予測を行った。Spn-EとTejというタンパク質ペアの場合、Tejタンパク質のC末側ドメインがSpn-Eと相互作用することが予測された。その他にも、高いスコアを示すタンパク質ペアが得られており、in silicoスクリーニングの有効性が示された。

The Elucidation of Non-equilibrium States of Heterogenous Catalysis by Data-driven Multiscale Simulation: A Case Study of Methanol Synthesis

著者|Harry Handoko Halim, Ryo Ueda, Yuki Yamada
所属|Graduate School of Engineering, Osaka University

Global warming is world class problem that becomes more worrying over the years. A promising solution comes from the conversion of CO2 (i.e., greenhouse gas) to higher-value chemical such as methanol which can be achieved by heterogenous catalysis. The advantage of this conversion is two-fold: reducing the amount of CO2 in atmosphere and producing methanol which can be used to generate electricity through fuel cell. Understanding the non-equilibrium states (i.e., states when transformation occurs) of catalytic process of methanol synthesis is the key factor in designing the best catalyst. However, observing the non-equilibrium states is inaccessible in most experiments due to the atomistic size and time scale of the events. Though computational approach such as molecular dynamics (MD) can observe detail atomistic events, it suffers from huge tradeoff between speed and accuracy.
In the emergence of data science, it is possible to accelerate the MD simulation while maintaining high accuracy of Density Functional Theory (DFT) level. This can be achieved by machine-learning the energy and forces of atomic structures defined in a set of DFT data. Armed with this framework, we conducted direct observation of non-equilibrium states of initial stage of methanol synthesis including the three main reactants: CO2, CO, and H2 gases. In all cases, we interacted the molecular reactant with Cu surface and directly observe the non-equilibrium events, resulting in the following findings.
(i) CO induces the formation of active Cu clusters on Cu stepped surface by increasing frequency of single adatom detachments from step edge.
(ii) The successful hydrogenation of CO2 is affected by the initial conditions of the gas such as vibrational modes, vibrational energy, incident angle, and incident target. The best conditions leading to the successful hydrogenation is tabulated.
(iii) The accurate modelling of Cu nanoparticle interaction with hydrogen gases is ongoing.

分子動力学法による塑性変形の散逸エネルギーに関する分子動力学的研究

著者|李 響
所属|大阪大学大学院工学研究科

To provide a precise prediction of Taylor-Quinney coefficient (TQC), which is the friction of the conversion of external deformation work to heat during plastic deformation, molecular dynamic simulations of plastic deformation were performed. We constructed single-crystal atomic models of pure metals (Fe, Al, Ni, Cu, Ag, Mg) with various crystal structures (BCC, FCC, HCP), on which simple shear strain was applied at a constant, extremely high shear strain rate. A new numerical model of the calculation of TQC using the energy stored in crystal defects during the deformation was suggested and was used to calculate the TQCs during the simulation. The correlation of TQC with stacking fault energy (SFE) was also discussed. As a result, the curves and predicted values of TQC were obtained in agreement with existing numerical models and experimental data. TQC also showed a dependence on crystal orientation and SFE.

爆轟現象の解明とその応用に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

水素/空気予混合気に対する詳細化学反応モデルを使用して,3次元の非定常圧縮性粘性解析を行った.障害物を有する実スケールの閉鎖管(RUT形状)内を伝播する火炎から爆轟への遷移の数値解析を行い,デトネーションへの遷移における格子解像度の影響や2次元と3次元の差異を評価した.

Studies of classical and quantum many-body problems: tensor network approach

著者|Yasuhiro Akutsu
所属|Graduate School of Science, Osaka University

高次特異値分解を用いたテンソル縮約法(HOTRG)や密度行列くりこみ群(DMRG)を用いて2次元・3次元多体問題の解析を行った。特に、2次元HOTRGにおける特異値分布とDMRGの密度行列固有値分布間の一般的関係に基づき考案した、対象系の非臨界性判定法を2層ダイマー模型に適用し、この系が層間相互作用の強さによらず非臨界的であることを示唆する結果を得た。

Ginzburg-Landau方程式とEliashberg方程式による超伝導状態の解析

著者|兼安 洋乃
所属|山陽小野田市立山口東京理科大学 共通教育センター

UTe2のゼロ磁場での超伝導状態とその安定化機構を調べるために、Eliashberg方程式の解析を行った。f,d軌道のオンサイトクーロン斥力が超伝導安定化に及ぼす効果を調べるため、摂動論による超伝導有効相互作用を用いてVertex補正を含めた解析を行った。この他に、不均一なchiral状態の磁場による履歴現象を調べるために、Ginzburg-Landau方程式の解析を行った。
WIEN2kの計算で得た電子状態を表すタイトバインディング模型について、f,d軌道にオンサイトクーロン斥力を設定する。オンサイト斥力に対する摂動から得られた3次までの超伝導有効相互作用を用いてEliashberg方程式を解析し、安定となる超伝導状態を調べた。Eliashberg方程式を超伝導転移温度において線形化した固有値方程式を数値的に解き、超伝導対称性における固有値の比較を行った。この他に、不均一超伝導のGinzburg-Landau方程式による数値解析を行い、chiral状態と超伝導電流の温度と磁場による変化を調べた。
解析から、ゼロ磁場の超伝導状態について、Vertex補正項の超伝導安定化に対する効果を示した。又、不均一なchiral状態の温度・磁場依存性から磁場による履歴現象を示した。

深層学習による物理モデリング・シミュレーションフレームワークの展開

著者|谷口 隆晴
所属|神戸大学 システム情報学研究科

  氏名:谷口 隆晴 所属:神戸大学 システム情報学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

界面での分子の挙動解析

著者|古林 卓嗣
所属|大阪大学 工学研究科 NTN次世代協働研究所

(目的)鉄表面での硫化物の挙動を明らかにする。
(内容)第一原理計算パッケージを利用し、想定される鉄表面上の硫化物構造のエネルギーを計算し、反応経路探索を行った。
(結果)鉄表面で硫化鉄が分解し硫化鉄が生成される過程に関する知見を得た。

ポリロタキサンにおける環状分子のスライドダイナミクス解析

著者|眞弓 皓一
所属|東京大学 物性研究所

  氏名:眞弓 皓一 所属:東京大学 物性研究所 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

直接数値計算を用いた沸騰熱伝達における対流可視化

著者|矢吹智英¹,Yohei Sato²,畑中健太¹,庄野竜生¹
所属|九州工業大学¹,Paul Scherrer Institute²

沸騰熱伝達における壁面の対流熱伝達機構を調べるために,二相流CFDソルバーであるPSI-BOILを用いて水の飽和プール沸騰を数値シミュレーションした.結果として実験同様に対流熱伝達が壁面熱輸送の大部分を担っていることが示された.今後,本計算で得られた熱流動場,壁面熱伝達率を解析することで,対流熱伝達機構を詳細に調べていく.

結晶構造中の溶質原子の局所環境

著者|設樂 一希
所属|ファインセラミックスセンター

転位対構造中に溶質原子を加えた構造モデルの第一原理計算を行った.溶質のサイトとして転位付近のサイトを列挙し,モデル内で対称性的に独立な構造全てについて計算を実施した.格子歪に基づく弾性相互作用はCの方が大きいにも関わらず,OおよびNの転位との会合エネルギーはCと比較して大きく,弾性相互作用以外の電気的な転位-溶質間相互作用力が働いていることを示した.

ディープラーニング手法を用いた一細胞レベルエンハンサー検出法の開発

著者|村上 賢
所属|大阪大学蛋白質研究所細胞システム研究室

組織は多種多様な細胞が環境に応答し、それぞれ異なる遺伝子発現を示すことによって機能している。そのためにはエンハンサーとよばれる遺伝子発現の制御領域が細胞ごとに異なる活動を示す必要がある。しかし現在の手法ではエンハンサー領域を一細胞レベルで同定することは不可能である。そこで深層学習手法とシングルセルデータから一細胞レベルでエンハンサー領域を決定する手法を開発する。まず遺伝子近傍のシングルセルATAC-seqデータから遺伝子発現を予測するニューラルネットワークを構築し、その後、予測結果に大きく影響を与えるATACピーク領域を解析し、エンハンサーとして決定した。結果としては、遺伝子発現をATAC-seqデータから予測しやすい遺伝子と予測しにくい遺伝子が存在し、予測しやすい遺伝子は細胞種特異的な機能をもち、しにくい遺伝子はハウスキーピング遺伝子が多いことがわかった。エンハンサーの決定能を公開データを用いて検証したところ既存の手法より高いF1スコアを示した。

トポロジカル絶縁体における電子構造のシミュレーション

著者|湯川 龍
所属|大阪大学 大学院工学研究科

トポロジカル絶縁体表面には高移動度の金属層が形成される。その電荷密度分布が外部摂動により変化する様子を明らかにするため、密度汎関数理論に基づく大規模計算を実施した。2×2×6 quintuple layerのトポロジカル絶縁体を真空層で挟んだスラブ構造を用いて計算を行った。その結果、表面から1 nm以上深くまで表面状態の電荷密度が分布していることが確認された。さらに、外部摂動でその分布が大きく変わる様子を捉えた。本結果は外部摂動により表面状態スイッチングが可能であることを示唆している。

Identification of Cofactor Specificity-Contributing Residues in Enzyme

著者|Sou Sugiki, Teppei Niide, Yoshihiro Toya, Hiroshi Shimizu
所属|Department of Bioinformatic Engineering, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University

任意の酸酵素の補酵素特異性に影響するアミノ酸残基を機械学習モデルで調査し、補酵素特異性に関わる重要残基の位置を立体構造予測により推定することを目的とした。酸化還元酵素の全てのアミノ酸残基を説明変数として機械学習を実施することで、補酵素特異性に関わるアミノ酸残基を同定し、同定された残基は立体構造のどこに位置するかをタンパク質の構造予測により推定することに取り組んだ。その結果、機械学習モデルよりある酸化還元酵素の補酵素特異性に関わるアミノ酸残基の同定に成功した。同定されたアミノ酸残基の位置をRosettaソフトウェアを用いた構造予測により位置を推定したところ、補酵素との相互作用部位だけでなく、その立体的に外側の領域も重要であることが明らかとなった。

量子古典混合アルゴリズムによる量子化学計算とその並列化

著者|水上 渉
所属|大阪大学 量子情報・量子生命研究センター

近年、古典コンピュータと量子コンピュータがそれぞれ得意なところを担当する量子古典混合アルゴリズムが注目を集めている。本研究では、並列計算を用いることでこの量子古典混合アルゴリズムのシミュレーションの高速化を図った。具体的には、量子古典混合アルゴリズムの代表格である変分量子固有値法(VQE)のシミュレーションの並列化に取り組んだ。量子回路エミュレータにはcuQuantumを用い、量子回路パラメータ勾配をMPI並列を使いプロセスごとに独立に求める方法を採用した。開発したコードを用いて、14量子ビットを使った水分子のVQE計算を使いGPUノードに於いてベンチマークをとった。1ノード8GPUで556秒、2ノード16GPUで279秒と高速化が達成された。

合成人口・建築物ストックを用いた高時空間解像度でのエネルギー需要モデリング

著者|山口容平
所属|大阪大学大学院 工学研究科

開発モデルはGISや国勢調査などの利用可能な統計情報から対象地域に立地・居住する業務施設・世帯を生成し、生成した業務施設・世帯に対して建築仕様、設備仕様等に関する多数のエネルギー需要決定因子を組み合わせて付与するSyntheticアプローチを採用した。各業務施設、住宅のエネルギー需要推計では、施設利用者、住宅世帯構成員の生活行動を確率モデルにより生成し生活行動に基づいてエネルギー需要を定量化する。このような仕様により将来における技術普及がもたらすエネルギー需要および二酸化炭素排出量の変化を推計可能である。開発モデルにより、東京都世田谷区、三鷹市、調布市、狛江市の民生家庭部門、業務施設ストックの二酸化炭素排出量削減可能性の評価を実施し、開発モデルが有用であることを確認した。加えて、日本全国の家庭部門のエネルギー需要を市区町村単位で推計、可視化し、長期変化の推計を行った。

洋上ウィンドファームの発電量予測のための高性能CFDツールの開発

著者|渡辺勢也
所属|九州大学 応用力学研究所

本研究課題は,大規模計算に適した格子ボルツマン法による流体計算とGPUを利用し,洋上ウィンドファームの発電量と風況を高精度に予測可能なCFDツールの開発を目的とする.風車は簡易的にActuator Lineでモデル化し,洋上の風況はTurbSimというソフトウェアを利用して作成する.開発ツールの検証とし,80基の2MW風車から構成されるデンマークの洋上ウィンドファームHorns Rev 1に対し,2m解像度・32億格子を用いた計算を4ノード32GPUで実施した.各風車の発電量を先行研究の観測データと比較し,開発したCFDツールは前方風車のウェイクの影響による後続風車の発電量低下を再現できることを確認した.12000秒のシミュレーション時間・1600000タイムステップの長時間の解析を実施し,ウィンドファームのウェイクの乱流強度などの統計量を評価した.

高分子物理モデルによるシミュレーション研究

著者|萩田克美
所属|防衛大学校応用物理学科

環状鎖が添加された高分子系の物性を詳しく評価するために、高分子物理モデルに基づく分子動力学(MD)シミュレーション研究を行った。GPUやCPUのHPC環境を効率よく活用する技術を確立するとともに、物性を調べる具体的なプロダクトランを行った。阪大のCPUとGPUの環境で、LAMMPS、HooMD-blueを相互利用し、Kremer-Grest模型のMD計算を効率よく実行するフレームワークを開発した。それらを活用し、高分子相分離構造、高分子結晶化、延伸破壊のMDシミュレーション評価手法などの種々の検討も合わせて行った。結果として、環状鎖を添加し高分子架橋ネットワークや関する系に関する論文を出版した。

Appearance of the Hoyle state and its breathing mode in 12C despite strong short-range repulsion of the nucleon-nucleon potential

著者|Hiroki Takemoto
所属|Faculty of Pharmacy, Osaka Medical and Pharmaceutical University

現実的核力として Argonne v_18 ポテンシャルを中心力のみで表現した Argonne v_4^’(AV4P)ポテンシャルを用い、12C原子核の低励起 0^+ 状態に関する理論計算を行った。AV4P が持つ強い斥力芯による相関は Unitary Correlation Operator Method により処理し、変分波動関数として Bloch-Brink 波動関数を用いた。スーパーコンピュータを用い、Generator Coordinate method により低励起状態の同定を行った結果、観測されている4つの低励起 0^+ 状態を同定することができた。これらの状態と α 凝縮状態を記述する Tohsaki-Horiuchi-Schuck-Röpke 波動関数との比較から 0_2^+ がα 凝縮状態であること、0_3^+ が 0_2^+ のBreathing mode であることが確認できた。

有限温度QCDのエンタングルメント・ネガティビティの格子計算

著者|Yukinao Akamatsu ,Masayuki Asakawa
所属|Osaka University

有限温度QCDの量子状態の量子相関を調べるために、混合状態のエンタングルメント指標であるネガティビティをレプリカ法により経路積分で評価する計画であったが、2022年度は主に計算の実行可能性について検討するに留まった。

有機ジラジカルの創出と機能開拓

著者|清水章弘
所属|大阪大学大学院基礎工学研究科

炭化水素を基盤とする様々な新規有機ジラジカルを設計し、一重項状態と三重項状態のエネルギー差を比較することにより、分子内および分子間の磁気的相互作用の大きさを見積もった。また、スピン密度を解析することにより反応点を予測し、単離するためのかさ高い置換基を導入する位置を決定した。

乱流および混相流の直接数値シミュレーション

著者|塚原 隆裕¹ 仁村 友洋² 神山 一貴² 中川 皓介² 平賀 惇之輔² 細井 理央² 松川 裕樹² 田代 雅哉² 栗原 稔幸² 高橋 拓海² 染谷 駿介² 岡崎 将太郎² 太田 佑² 新開 壮希² 菊池 紘太¹ 垣内 習作¹
所属|東京理科大学理工学部機械工学科¹ 東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻²

壁面せん断流の亜臨界乱流遷移現象における準秩序構造や遷移過程などの解明のため,本研究では各種クエット流や後退翼平板境界層などの直接数値シミュレーション(DNS)を行った.また,スカラー物質乱流拡散や粘弾性流体壁乱流に対する機械学習の適用可能性を,DNSデータに基づいて調査した.OCTOPUS環境下では,OpenFOAMによる二自由表面液膜の温度差マランゴニ対流などの解析も実施した.

前周期遷移金属イミド錯体・カルベン錯体とアルキンの[2+2+1]-環化付加反応に関する反応経路解析

著者|秋山 拓弥・山本 晶・寺石 怜矢・千賀 大輔・黒田 悠・毛利 朋弘・劒 隼人
所属|大阪大学・大学院基礎工学研究科

前周期遷移金属のイミド錯体・カルベン錯体とアルキンとの[2+2+1]-環化付加反応について、DFT計算による反応経路の解析と各反応過程にかかる自由エネルギーの計算を行った。特に、中心金属の違いが与える反応経路および活性化エネルギーへの影響を詳細に調査することで、本反応に対して最も高い反応活性を示す金属錯体を明らかにした。

厚さの無い薄板を含んだ気液二相流計算手法の開発

著者|青木尊之
所属|東京工業大学 学術国際情報センター

空間を格子で離散化する数値流体シミュレーションにおいて、格子解像度を上げることは計算コストに4乗で影響する。有限な格子間隔よりずっと薄い暑さの物体を含んだ流れの計算に対し、局所的に細かい格子を割当てたとしても計算コストは膨大で計算は非効率的である。単相流体計算であれば、Direct Forcing 埋め込み境界法が適用できるが、有限体積法の気液二相流計算ではVOF値を保存させる必要があるため、厚さ無しの薄板として板の両側にそれぞれ別の格子(配列)を用意し、流体計算が薄板を超えて相互に参照しないようにする。さらに、FAVOR法を導入して直交格子の方向に沿わない薄板に対して計算を行えるようにし、薄板が計算Cellを非常に小さい体積に切断する場合、計算が不安定になることを避けるためにCell Merging法も導入した。これらにより、厚さ無しの薄板を含む気液二相流計算が可能になった。

量子化学計算ソフトウェアNTChemの開発

著者|川嶋 英佑¹ William Dawson¹ Stanislav Kedžuch¹ Subodh Sudhir Khire¹ 水流 翔太¹ 神谷 宗明² 
所属|理化学研究所 計算科学研究センター¹ 岐阜大学 地域科学部 地域政策学科²

当研究チームで開発している量子化学計算ソフトウェアNTChemについて,adaptive density partitioning technique実装が,効率的に高速Fourier変換を実行しているかについて評価した.系は水素終端されたシリコンSi17H36で,計算レベルはPBE/3-21Gである.3-21Gを採用したのは,大きな基底関数系では実空間での通常の2電子積分がボトルネックとなるためである.Intel MKL (FFTWのラッパ) にリンクしたNTChemのベンチマークの結果,良好なパフォーマンスが発揮されていることを確認した.

自由噴流の混合制御に関する数値シミュレーション

著者|辻本公一
所属|三重大学大学院工学研究科機械工学専攻

DNS(Direct Numerical Simulation)により,傾斜回転と脈動による衝突噴流の制御を行い,衝突距離と周波数比(=脈動周波数/回転〃)が伝熱特性に与える影響を明らかにした.傾斜角度を時間変化させた回転衝突噴流の制御を行い,回転周波数と傾斜角度の変動周波数(傾斜周波数)が同じ場合,領域中央部の伝熱が増加し,傾斜周波数が大きい場合,領域外縁部の伝熱が向上することを明らかにした.壁面が振動制御された複数の衝突噴流では,振動周波数や振動振幅が大きいときは伝熱の一様性が高くなることを明らかにした.平面液体自由噴流における噴流と周囲流体の密度比が噴流の拡散に及ぼす影響を明らかにした.

有機分子性結晶における分子間相互作用の解析

著者|桶谷 龍成
所属|大阪大学大学院基礎工学研究科

弱い分子間相互作用が支配的に働く有機分子性結晶中における分子間相互作用エネルギーを量子化学計算によって見積もり、その結晶構造を与える要因を探る。本年度の主な結果として、複数の成分が不定比で混ざり合う水素結合性有機フレームワークにおいて、成分間の分子間相互作用が非常に似ていることを明らかにした。

大規模多孔質場における反応輸送解析

著者|津島将司
所属|大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

多孔質内に充填された液相の蒸発挙動の解明のために二相格子ボルツマン法に蒸発を誘導する計算手法を導入して妥当性の検証を行った.その上で複雑な多孔質系へと適用し,蒸発挙動について基礎的な検討を実施した.

Interaction between the Photo-excited π System and the f System in Rare-earth-based Macrocyclic Ligand Complexes

著者|Santria Anas
所属|大阪大学 理学研究科

  氏名:Santria Anas 所属:大阪大学 理学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

MIへの適用を目指した量子化学計算

著者|山本 啓太, 吉安 勇人, 本村 肇, 木下 竣登
所属|大阪大学大学院工学研究科日本触媒協働研究所

機械学習を用いて材料開発を行うマテリアルズ・インフォマティクス(MI)においてデータの質と量が重要となる。本テーマでは量子化学計算を利用したMIについて検討を行った。具体的な計算内容としては仮想的に発生させたアクリル酸誘導体モノマー構造をもとにGaussian16を用いて構造最適化、エネルギー計算を行った。また、得られたデータを用いて主成分分析を行った。試薬ベンダー3社のHP上に記載されている構造情報をもとに行った計算結果と比較したところ、アクリル酸誘導体の主成分の広がりの方が小さいことが分かった。尚、約2万件の構造最適化計算におおよそ3.2万ノード時間を消費した。

スペクトル有効周波数分割多重の基礎検討

著者|小松和暉
所属|豊橋技術科学大学工学研究科電気・電子情報工学系 (2023/1/31まで)国立研究開発法人情報通信研究機構 ネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター ワイヤレスシステム研究室

スペクトル有効周波数分割多重方式(SEFDM: Spectrally Efficient Frequency Division Multiplexing)は,現在主流の直交周波数分割多重方式に比べて必要な周波数帯域幅を圧縮することができ,周波数利用効率に優れている.
しかし,特に多数のサブキャリアを有するSEFDMにおいて,有効な復調法は未だに開発されていない.
本研究では,大規模SEFDMにおいて優れたビット誤り率を達成するための変調方式と復調方式について研究する.

瀬戸内海における外洋起源有機物の動態解析

著者|中谷 祐介
所属|大阪大学 工学研究科

  氏名:中谷 祐介 所属:大阪大学 工学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

粘塑性流体乱流のDNSの実現と乱流構造の観察

著者|太田 貴士
所属|福井大学

粘塑性流体乱流のLESモデルを構築するための基礎的研究として,Herschel-Bulkleyモデルを用いて粘塑性流体のDNSを実行した.そして,乱流統計量と瞬時構造をニュートン流体の場合と比較することで,粘塑性流体の発達した壁乱流の特徴を明らかにした.また,流体の降伏応力の変化による乱流構造の変化にも注目した.特に,乱流統計量の観点から,速度ストリークや縦渦といった乱流構造の変化を定量的に調べた.さらに,流れの状況により変化する粘度を考慮した空間スケールの正規化を粘塑性流体乱流の予測結果に適用し,渦度変動強度や速度変動強度の壁からの距離,平均ストリーク間隔をニュートン流体の場合と比較し,その正規化の有用性を確かめた.以上のことから,粘塑性流体乱流の乱流構造の空間的特徴をニュートン流体の場合と同じように表現できる空間スケーリングの方法は,乱流構造に基づいた乱流制御の実現のために必要な知見になることがわかった.

ガラス系の遅いダイナミクスの分子動力学シミュレーション研究

著者|金 鋼
所属|大阪大学大学院基礎工学研究科

直鎖状高分子は絡み合いによってダイナミクスが理解されるが、環状高分子に対する理論モデルは未だ確立していない。近年になって、環状高分子溶融体においてランダムに複数の高分子鎖をピン留めすると拡散が完全に抑制されることから、ガラスの遅いダイナミクスとのアナロジーが示唆され注目を集めている。 我々はこれまでの研究で、ガラス形成液体の動的不均一性を定量化するのによく用いられているノンガウシアンパ ラメーター(NGP)を解析し、直鎖と環とで比較することで動的不均一性における形状の効果を調査し、高分子鎖間の相互作用がNGPによって特徴づけられることを明らかにした。本研究では、鎖の硬さ・系 の数密度を変化させることで、環状鎖の慣性半径がNGPの振る舞いに大きく影響していることを示した。

マルチGPU環境における大規模神経回路シミュレーション高速化の検討

著者|寺西勇裕,置田真生,伊野文彦
所属|大阪大学 大学院情報科学研究科

本研究の目的は大規模なスパイキングニューラルネットワーク(SNN)シミュレーションの高速化である.マルチGPUを用いた大規模なSNNモデルの実行において,性能低下の主な要因となる通信処理を効率化し,総実行時間を削減する. 提案手法は神経回路の特性に着目し,即時に伝達する必要のない神経活動に関する通信を遅延させ,GPU上の計算とオーバラップする.通信の一部を計算処理で隠蔽することでシミュレーション性能の向上を目指す. マカク視覚野モデル(400万ニューロン)に提案手法を適用し,正しいシミュレーション結果を得られることを確認した.提案手法によって,通信におけるデータ転送の約99%を隠蔽できたが,当初期待していた性能向上は達成できなかった.この原因は,GPU間の計算負荷の不均一によって生じた通信の待ち時間を隠蔽できないためだと判明した.今後は負荷分散の改善に取り組み,本手法と組み合わせることで高速化を期待する.

遠距離教師あり学習による遺伝子間の関係性抽出

著者|荒金 究
所属|大阪大学蛋白質研究所

深層学習モデルを用いた自然言語処理により、文献から自動的にシグナル伝達ネットワークを抽出することを目指す。そのための重要なステップとして遺伝子間の関係性を推定する必要があり、そのために遠距離教師あり学習手法を用いて関係性抽出を行うモデルを学習させた。

量子化学計算と分子動力学計算による界面イオン液体挙動のシミュレーション

著者|松本良明、樽井章太、柿木智紀、花森祐一郎、望月達郎
所属|大阪大学

電気化学において特に重要となる、電極とイオン液体の界面描像を分子レベルで明らかにするために、量子化学計算による電子状態計算と、分子動力学計算による分子挙動の解析を行った。結果、実験的に得られるイオン液体の紫外吸収スペクトルの帰属に成功するとともに、電極電位に応じた界面でのイオン液体の密度や配向を明らかにした。

熱流体物理の未解決問題の数値解析研究

著者|内藤 健
所属|早稲田大学 理工学術院基幹理工学部機械科学・航空宇宙学科

スーパーコンピュータを利用して様々な問題の熱流体数値解析が
おこなわれているが、例えば、直管内で乱流遷移する位置と入口乱れ強さの関係を解明で
きる数値解析や理論は存在してこなかった。当方では、確率論的Navier-Stokes方程式とその境界条件の理論を新たに提案し、それに基づいて、現象の解明を可能にしてきている。
またそれを、高効率ロケットエンジン,レシプロエンジンの性能検討に利用することを進めてきている。

レンサ球菌の大規模ゲノム情報解析による病原因子の探索

著者|大野 誠之; 山口 雅也
所属|大阪大学 歯学研究科

  氏名:大野 誠之; 山口 雅也 所属:大阪大学 歯学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

Development of brain information analysis technology

著者|Yu Takagi, Shinji Nishimoto, Koide Naoko, Takuya Matsuyama
所属|Graduate School of Frontier Biosciences Osaka University

ディープラーニング技術の内部表現と、fMRIを用いて計測されたヒト脳活動との相同性を検証した。
fMRIデータとディープラーニング技術の内部表現に対して、エンコーディングモデルおよびデコーディングモデルを適用することによってそれらの相同性を包括的に検証した結果、ディープラーニング特徴量が各レイヤーごとに異なる形で脳活動の異なる部位と対応していることがわかった。また、ディープラーニング特徴量を活用することで脳活動からのデコーディング精度が向上することがわかった。

Spatially heterogeneous RSB in layered p-spin models

著者|Yuki Rea Hamano¹ Hajime Yoshino²
所属|Department of Physics, Osaka University¹ Cybermedia Center, Osaka University²

Spatially heterogenous replica symmetry breaking (RSB) is a phenomenon in complex systems that has only been observed before in multilayer Perceptrons [1, 2]. There is however no reason that it should be unique to Perceptrons. Our aim in this research is to explore and characterize the properties of spatially heterogeneous RSB in simpler, canonical models of complex systems. To this end we study a generalized minimalistic model of quasi-1-dimensional spin glasses (SG) – the layered p-spin model – using replica theory. We focus on the simplest non-trivial case p=4. Our results show that at low temperature, successive layer-by-layer glass transitions cause the phase space of the model to form complex clusters. Just below the first glass transition temperature the first layer enters the full RSB phase, while deeper layers remain in the “liquid” phase. Then as one progressively lowers the temperature one observes that successive layers enter the 1-step RSB phase. Interestingly, the previous layers that were previously in the 1-RSB phase enter the 2-RSB phase, and so on. At very low temperatures the first layer is in a “full RSB + k-RSB” phase, a new hybrid phase that is not well understood and requires further research.

3D Numerical Simulation of Droplet Impingement with Splash

著者|Tianyi Wei ,Ryoichi Kurose
所属|Kyoto University

Droplet impingement has long been a hot topic among researchers for its ubiquitousity in industrial applications. Effect on the outcome of the impingement pertaining to ambient gas pressure and surface wettability are focused on in this research. 3D detailed numerical simulations, with gas-liquid interface tracked by Coupled Level-set and Volume of Fluid (CLSVOF) method, are performed to explore the possibility of utilizing 3D numerical simulations for the investigation of droplet impingement on dry surfaces. Our research found that 3D numerical simulations can reproduce the phenomena related to droplet impingement including a splash. Wettability influences the outcome of droplet impingement at the initial stage (i.e., when the droplet initially touches down on the surface and generates a thin film from the three-phase contact line) by triggering a larger average velocity magnitude in the generated thin film, together with a stronger variation on the azimuthal velocity distribution generated by the impingement immediately after the touchdown onto the surface. Ambient pressure significantly prompts the splash during the spreading of droplets on the surface after the impingement. A vortex above the tip of the droplet is observed in the investigation. The generation and extension of filaments after the impingement, which is usually referred to as fingering for its shape, is significantly suppressed under high ambient pressure.

第一原理計算手法に基づくルチル型TiO2 中の酸素空孔挙動の解析

著者|二宮雅輝, 藤平哲也,林侑介,酒井朗
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科

TiO2中の酸素空孔とその局所集積により形成する剪断面構造は、メモリスタ(不揮発抵抗変化)特性をはじめとするTiO2の物性に大きな影響を及ぼすことが知られている。本研究では、TiO2中酸素空孔の挙動と剪断面構造との相関を明らかにすることを目的として第一原理計算にもとづく解析を行った。代表的な剪断面である(121)および(132)剪断面を含む欠陥構造スーパーセルモデルを構築し、剪断面近傍サイトにおける酸素空孔の形成および移動の過程のエネルギーを系統的に評価した。

乱流熱伝達場の画像計測におけるノイズ低減手法の妥当性確認に向けた直接数値計算

著者|小田 豊
所属|関西大学システム理工学部

各種工業機械で見られる流れの多くは伝熱を伴う乱流場であり,熱設計のさらなる高度化に向けて乱流熱伝達の時空間変動の詳細を把握する必要がある。本研究では乱流熱伝達率の時系列画像計測で問題となる画像ノイズの低減手法を評価する目的で,実験と同様の平行平板間乱流を対象とした直接数値シミュレーションを行った。

Interaction energies between PIN1 protein and different ligands

著者|Eunice Gwee
所属|Hokkaido University

Utilised the Fragment Molecular Orbital method (FMO) as a cost saving approach to study interaction energies between different ligands and the active site of PIN1 protein. FMO, paired with the parallelization between CPUs, enabled us to better understand the interactions between ligands and the active site of PIN1 protein.

進化的アルゴリズムとガウス過程回帰によるAg(111)表面上シリセンの構造探索

著者|濱本 雄治
所属|大阪大学 工学研究科

  氏名:濱本 雄治 所属:大阪大学 工学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

マイクロ熱工学に関する分子シミュレーション

著者|芝原正彦・藤原邦夫
所属|大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

ナノ・マイクロメートルスケールのエネルギー輸送現象を原理的に理解して制御することを目的として,伝熱面の濡れ性やナノメートルスケールの微細構造が密度欠損長さと固液界面熱抵抗の関係に与える影響を分子動力学解析により調査した.また担体と接するナノ粒子の触媒反応に伴うエネルギー分配割合を分子動力学解析により詳細に調べた.そのためにOCTOPUSを用いた.

The Elucidation of Non-equilibrium States of Heterogenous Catalysis by Data-driven Multiscale Simulation: A Case Study of Methanol Synthesis

著者|Halim H Harry ; Ueda Ryo ; Yamada Yuki
所属|大阪大学 工学研究科

  氏名:Halim H Harry ; Ueda Ryo ; Yamada Yuki 所属:大阪大学 工学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

半導体デバイス向けCu-Cu固相接合部の界面接合機構に関する分子動力学シミュレーション

著者|巽裕章
所属|大阪大学接合科学研究所

先端半導体デバイスの接合において、はんだ付に代わる精密接合技術としてCu-Cu固相接合が検討されている。本研究では、上記技術における原子スケールでの接合機構の解明を目的とした。本研究では、接合される二つの面の結晶方位関係が、接合挙動に及ぼす影響について分子動力学シミュレーションにより評価した。その結果、両接合面の結晶方位が異なる場合において、急速な接合の進展が生じる可能性が示唆された。このことは、接合初期に形成される粒界構造の不安定さに起因することが推定された。

超音速燃焼を考慮した圧縮性粘性流れの数値解析法に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

極超音速流中に置かれたランプ周りの流れ場構造を把握するために,3次元非定常圧縮性粘性解析を行った.Re数は低いため層流としている.この解析により,3重点と強い弓形衝撃波を伴う衝撃波構造や壁面熱流束への影響を把握した.

メガテスラ磁気再結合による極超高エネルギー粒子加速の3次元シミュレーション

著者|村上 匡且
所属|大阪大学 レーザー科学研究所

  氏名:村上 匡且 所属:大阪大学 レーザー科学研究所 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

Activation energy of homogeneous nucleation of Zr hydride: Density functional theory calculation

著者|Akio Ishii
所属|Osaka University, Department of Mechanical Science and Bioengineering

Considering the nucleation process of Zr hydrides as phase transformation from hexagonal closed-packed (HCP) to face-centered tetragonal (FCT) structure, we calculated the activation energy of the homogeneous nucleation process of Zr hydrides and atomic rearrangement during nucleation for Zr4H, Zr2H, ZrH and ZrH2 using density functional theory calculations and minimum energy path detection. At 0 K limit, although ZrH and ZrH2 have lower chemical potentials and are more energetically stable than Zr4H and Zr2H, the latter have lower activation energies for nucleation. At finite temperatures, the crossover of activation energies occurs around 300 K, where ZrH becomes the most possible candidate with the lowest activation energy. This was explained by the difference in the atomic rearrangement and change in phonon frequency during phase transformation. Zirconium

大規模閉鎖型BCMP待ち行列ネットワークの複数窓口への対応

著者|小宮山佑樹 大場春佳 水野信也
所属|静岡理工科大学 情報学部 コンピュータシステム学科

待ち行列理論の実社会への適用を目的に、待ち行列モデルの中でも柔軟なBCMP待ち行列ネットワークに対し、複数窓口に対応できるように、平均値解析法に並列計算を取り入れ、大規模閉鎖型モデルに対して計算を実施し、複数窓口に対応した大規模閉鎖型BCMP待ち行列ネットワークの性能評価指標の算出を行うことで、再帰計算におけるメモ化の有効性及び窓口数の増加による計算時間の変化を確認した。

進化的アルゴリズムとガウス過程回帰によるAg(111)表面上シリセンの構造探索

著者|濱本 雄治
所属|大阪大学 大学院工学研究科 物理学系専攻

シリコンの二次元物質であるシリセンは特異な物性だけでなく次世代の半導体デバイス応用の観点から注目されてきた。シリセンはAg(111)表面上で非自明なバックル構造を示すためSTMやAFM、LEEDを用いた構造解析が行われてきたが、膨大な数の安定構造の候補が考えられるため理論的な解析は主に実験結果に基づくDFT計算に留まっていた。本研究では進化的アルゴリズムとガウス過程回帰に基づく構造探索アルゴリズムGOFEEを用いて網羅的かつ効率的にAg(111)表面上シリセンの安定構造を探索し、既知の安定構造に加えて未報告の安定構造が多数存在することを明らかにした。本研究の成果は機械学習による二次元物質の効率的な構造探索の道を切り開くという点で重要である。

トンネル火災における煙流動の数値シミュレーション

著者|田中 太¹ 久米正一²
所属|福井大学 機械工学講座¹ 福井大学大学院 博士後期課程²

火災に特化したCFDコードの一つであるFire Dynamics Simulatorを使用して、トンネル火災時における煙流動の様子について数値シミュレーションを行った。CFDコードをOCTOPUSにて使用できる状態にして、各種テストを実施した。その後、数値シミュレーションと模型実験を比較して計算モデルの妥当性に関して検証した。

DFT simulation for Si etching using Pt catalyst and pure water

著者|Daisetsu Toh
所属|Osaka university, Department of Precision Engineering

(目的) 純水とPtを使用したSi(100)のエッチング機構の解明
(内容) 申請者は純水中でPtとSiを接触させ相互に運動させることでエッチングが進行し,ステップテラス構造を持つ原子レベルの平滑面を取得している.さらに本エッチング反応は液中の溶存酸素を抜いた脱気水中でも進行することを見出し,従来報告されている金属アシストエッチングとは別物であることが示唆された.そこで申請者は本反応がPt上での水分子の解離吸着(IS1→IS2)・生成されたOH基によるステップ端Si原子の過配位構造の形成(MS)・Siのバックボンドの切断(FS)からなる間接的な加水分解反応であると仮定し,本反応におけるエネルギー障壁の算出を実施した.
(結果) IS1(レプリカNo.1),IS2 (レプリカNo.2) ,MS (レプリカNo.3) ,FS (レプリカNo.12)のトータルエネルギーはIS1を基準とするとそれぞれ,0eV,0.42 eV,0.10 eV,0.16eVとなった.またMS→FSにおけるエネルギー障壁高さは0.84 eVとなりバックボンドの切断は室温でも十分に進行するといえ申請者の想定した反応が実系でも進行することが示唆された.今後IS1→IS2,IS2→MSにおけるエネルギー障壁の算出を進める.

三角柱セルを用いた周囲電界中の帯電航空機モデルのFDTDシミュレーション

著者|岡田 翔吾
所属|同志社大学大学院 理工学研究科

航空機が雷撃を受けるのは,雷雲下の電界により,機体端部に電荷が集まり,そこからリーダ放電が雷雲及び大地に向けて進展し始めるからである。逆極性電荷を発生させ,機体の電荷量を制御できれば,機体からのリーダの発生や進展を抑制することが原理的には可能である。本論文では,有限差分時間領域法(FDTD法)を用いて雷雲下の周囲電界及び45度の角度で傾いている航空機を模した。そして,航空機モデルの端部電界を解析した。航空機モデルが帯電していない場合,上端部の正電界が臨海破壊電界より高く,絶縁破壊が始まることが確認される。-200 nC帯電させた場合では,対応する臨界破壊電界よりも小さくなることが確認される。このことは,航空機に負の電荷を供給すれば,周囲電界における航空機のエッジ部や突起部の電界を緩和できることを示している。

回転基板上の液膜のLESを使用した流体シミュレーション

著者|佐藤雅伸
所属|(株)SCREEセミコンダクターソリューションズ、洗浄開発統轄部 装置要素技術開発一部 装置要素技術開発四課

回転する直径300mmのウェハモデルの中心供給された水が、基板上で広がる状態を 、OpenFOAMを使用して下記条件を組み合わせて計算した。
Software OpenFOAM v2012
ソルバー interFoam
Mesh数 26.3M
界面補足法 VOF
Turbulence Model LES
流量条件: 0.45LPM, 0.9LPM, 2LPM
回転数:800rpm, 1000rpm
粘度 : 1cP, 2.6cP
結果: 流量は、液膜厚よりも液速度に与える影響が大きいことや、粘度が高いと液広がり速度が低下する事などの結果を得た。
※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(JPNP20017)の結果得られたものです。

仮想心臓モデルによる心臓電気現象シミュレーション

著者|稲田慎¹ 原口亮² 芦原貴司³ 中沢一雄¹
所属|森ノ宮医療大学 医療技術学部¹ 兵庫県立大学大学院 情報科学研究科² 滋賀医科大学 情報総合センター・医療情報部³

仮想心臓モデルを構築し,電気生理学的シミュレーションを行うことで不整脈のメカニズム解明や,予防・診断に役立たせることを目指している.心筋細胞の電気的興奮に伴う電位変化(活動電位)を再現することが可能なユニット約300万個を組み合わせて心房モデルを構築した.洞結節から発生した電気的興奮が心房内を伝播する間に不整脈を誘発させる電気刺激を左心房に与え,不整脈を誘発させた.不整脈を誘発する電気刺激を与えるタイミングを変更しながらシミュレーション実験を繰り返し,不整脈の誘発性および持続性について検討した.その結果,心筋細胞の電気生理学的特性や細胞間の電気的結合が不整脈の持続性に影響を与えることが明らかとなった.

電離層中のイオンのサイクロトロン運動

著者|山中千博
所属|大阪大学大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻

高度 200 km を想定し、電場 Ey = 0.1 m V / m、Bz = 25000 n T、O, O2, N2 の数密度をそれぞれ 1016 / m3とし、イオンのサイクロトロン運動の軌跡を求めた。中性粒子との衝突の効果が極めて大きいことが示された。

磁気流体シミュレーションによる原始星への質量・磁場降着過程の研究

著者|高棹 真介
所属|大阪大学 理学研究科

  氏名:高棹 真介 所属:大阪大学 理学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

FNO for vehicle bridge interaction system and damage prediction

著者|金 哲佑
所属|京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻

目的:
•Propose FNO (Fourier Neural Operator) to learn mappings between damage field and structural responses, which only utilize data from a bridge at the healthy state to predict the bridge at the damaged state, and
•Examine VINO numerically and experimentally in structural simulation and SHM.
内容:
•Establish Vehicle-Bridge Interaction (VBI) numerical and experimental dataset,
•Train and test the FNO by numerical data,
•Fine-tune by experimental healthy data, and validate by experimental damage data.
結果:
•Forward FNO for prediction of structural responses was more accurate and faster than FEA (Finite Element Analysis) once it is trained, and
•Inverse FNO for damage prediction could determine, localize, and quantify damages from structural responses.

計算科学による複合材料設計

著者|山崎隆浩、荻原寛之、籾田浩義、赤田巧
所属|大阪大学工学研究科住友電工共同研究講座

第一原理計算プログラムを用いて界面を含む構造のエネルギー計算を行い、それらの結果を教師データとしたニューラルネットワークポテンシャル(NNP)を作成し、より大規模な古典分子動力学計算を行うという一連の手順を確立した。第一原理計算プログラムはPHASE/0(2022.01)を用い、NNP作成にはDeePMD-Kitを、古典分子動力学計算にはLAMMPS(+DeePMD)を使った。原子種が3種を超える場合に教師データの不足により古典分子動力学法計算が破綻するなどの事象が発生した。教師データを適切に補うための知見を積み重ねている。また、鉄鋼材料中の母相に対する析出物の整合性(3種の界面構造モデル)の第一原理計算プログラムによる評価を試みたが、1,000原子規模では歪のたまらない構造を作るのに充分でない、初期界面構造モデルが適切でないと界面で激しい原子拡散が生じるなど、いくつかの課題が明かになった。

Transport of fast-electrons produced by intense laser-plasma interactions with PHITS code

著者|Shinsuke FUJIOKA¹, Ryunosuke TAKIZAWA², Tamaki MAEGAWA³, Takumi TSUIDO⁴, King Fai Farley LAW⁵
所属|Institute of Laser Engineering, Osaka University¹, Dept. Phys., Graduate School of Science, Osaka University²-⁵

(Objective) Interaction between high-intensity laser light and matter produces high-energy or fast
electrons. In laser-driven inertial confinement fusion, the energy distribution of the fast electrons
is one of the critical parameters that determine the heating efficiency of fusion fuel. However, it
is hard to measure directly because an electric field around a plasma confines a significant portion
of the fast electron in the plasma. In this study, we develop a method to estimate the energy
distribution of the fast electrons from the spectrum of X-rays emitted by them traveling in a
plasma.
(Description) The process of bremsstrahlung X-ray emission by fast electrons with multiple quasimonoenergetic
energies in the matter is calculated using the Monte Carlo simulation code PHITS
for radiation generation and transport installed in OCTOPUS. The energy distribution of fast
electrons was obtained by reconstructing the experimentally observed X-ray spectrum with the
linear sum of the above Bremsstrahlung X-ray spectra.
(Results) The energy distribution of electrons was successfully estimated from the X-ray spectrum
obtained in the experiment. From the energy distribution, it was directly observed that the fast
electrons were trapped by the electromagnetic field formed around the target.

Origin of the nucleation preference of coherent and semicoherent nanoprecipitates in Al–Cu alloys based on atomistically informed classical nucleation theory

著者|Heting Liao, Yujie Jia, Yangen Li, Shihao Zhang, Hossain Rana, Dan Wei, Fanshun Meng, Junping Du, Shuhei Shinzato, Shigenobu Ogata
所属|Department of Mechanical Science and Bioengineering, Graduate School of Engineering Science, Osaka University.

The age-hardening response during the heat-treatment process of Al–Cu alloys is significantly and non- linearly influenced by the type and size of metastable precipitates formed. In Al–Cu alloys, a semicoherent phase, usually observed after the formation of coherent Guinier–Preston (GP) zones during aging, is the key strengthening precipitate. Thus, identifying the energetics of preferential nucleation of these precipitates is essential for clarifying the optimal conditions for the formation of precipitates that effectively contribute to hardening. In this study, using classical nucleation theory (CNT) along with a recently developed machine-learning-based interatomic potential with near first-principles accuracy, we characterized the nucleation preference of coherent GP zones and semicoherent θ’ nanoprecipitates in Al–Cu alloys at various temperatures and solute concentrations. Our atomistically informed CNT model revealed the overall temperature and solute-concentration dependencies of the nucleation barriers of the nanoprecipitates, which determine the crossover temperatures at which the ease of formation of each precipitate alternates at the solute concentration of interest. The predicted results were in good agreement with the previous experimental observations. The findings of this study contribute to furthering the understanding of the driving forces for nucleation of precipitates in Al–Cu alloys at an atomic level and provide theoretical guidance for identifying the optimal age-hardening response.

準古典マッピング動力学シミュレーション法プログラムの実装とベンチマーク

著者|鬼頭 宏任¹・木村 明洋²
所属|近畿大学 理工学部¹・名古屋大学大学院 理学研究科²

多くの色素サイトを持つ光合成系の光捕集機構を調べるために、電子非断熱分子動力学シミュレーションのプログラムを実装しベンチマークを行うことを目的とした。2019年に提案された新規準古典マッピング動力学法である修正線形化半古典(mLSC)法を採用し、MPIによる並列化プログラム実装した。その結果、FMO光合成アンテナ蛋白質3量体に対する24サイトモデルの励起エネルギー移動を、SQUID汎用CPUノード群・4ノード並列でシミュレートすることに成功した。

DNSデータを用いた乱流予混合火炎の数値計測に関する研究

著者|坪井 和也
所属|岡山大学

内燃機関の更なる高効率燃焼のためには内燃機関内の乱流火炎を高精度に計測してその構造やメカニズムを明らかにする必要がある.利用者は最近,直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation: DNS)で厳密に計算された実際の火炎と同等な取り扱いが可能な乱流火炎データベースに対して,計算機上で光学計測と同様な計測を行う数値計測を創成し,その手法を確立した.本研究では,内燃機関における乱流火炎の光学計測の高精度化を目的とする.
計測精度に影響を及ぼすと考えられる乱流予混合火炎面(等温面)と流速の関係について,数値計測により検討した.
火炎面(等温面)近傍の主流方向流速分布において,流速0m/sの等値面は等温面に沿って変化している.このことから等温面と流れとの間の関係性が確認された.

原子核密度汎関数法によるエキゾチック原子核の集団励起モードの系統的記述:中性子ドリップ線近傍核から超重核の統一的理解へ向けて

著者|吉田 賢市
所属|京都大学 理学研究科

  氏名:吉田 賢市 所属:京都大学 理学研究科 概要: 2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

津波浸水被害予測の高度化

著者|撫佐 昭裕
所属|東北大学サイバーサイエンスセンター

目的: 津波浸水被害予測シミュレーションのクラウドバースティング環境における有効性の評価を行う.
内容: 本シミュレーションは,大規模地震発生時にリアルタイムに津波被害予測を行うために開発されたものである.そのため,現在利用しているSQUIDシステムが混雑している場合にも本シミュレーションをいち早く動作させる必要がある.ここで,有効と考えられる手段としてクラウドバースティングがある.本研究では,クラウドバースティングを用いてSQUIDシステムからMicrosoft Azureへ本シミュレーションを転送・実行し,その有効性の評価を実施した.
結果: 評価にはOCTOPUS,SQUID(汎用CPUノード群),Microsoft Azureのそれぞれ1ノードを用いた.評価では実行時間とコストを比較した.その結果,Azureの実行時間はOCTOPUSの1.7倍とSQUIDの2.4倍であった.また,コストはOCTOPUSの85倍とSQUIDの41倍でもあった.被害予測はより短時間で行う必要があり,本評価によって今後クラウドバースティングを考慮した高速化が必要であることが判明した.

物理シミュレーションとコンピュータビジョンのための幾何学的深層学習の開発

著者|松原崇
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科

データが持つ対称性などの幾何学的構造を保存する深層学習である幾何学的深層学習を開発し,物理シミュレーションとコンピュータビジョンに応用する.これによって,データからの保存則の発見,生成モデルの意味空間の幾何学的構造の利用,距離同変な畳み込み演算などを実現する.

分子動力学計算によるポリマーDB構築

著者|一岡優里
所属|旭化成株式会社 デジタル共創本部 インフォマティクス推進センター R&D DX部

(目的) MIによる高機能ポリマー探索を行うため、分子動力学計算データベース(DB)を構築すること。
(内容)大量のポリマー種に対し、分子動力学計算ソルバーのLAMMPSを用いて複数の物性値を計算、その結果を蓄積することでDB構築を行う。
(結果)約3000種のポリマーに対し密度や比熱等の物性計算を実行、MIに用いるためのDB構築が完了した。

直接数値計算による多孔質体内混相流の研究

著者|竹内雄人
所属|京都大学大学院農学研究科

直接数値計算により、流体パラメータと濡れ性による多孔質体中への流体の浸入様式の変化を調べることを目的として研究を行った。CUDAを用いて二相格子ボルツマン法を実装し、多孔質体内混相流シミュレーションを行った。Bo数、Ca数、接触角分布による流体浸入の変化を調べ、Boが小さいとフィンガー状に浸入しやすい、接触角が小さいとピストン状に浸入しやすい、接触角が小さい粒子からなる間隙を流路ととりやすいことが推察された。

Viscosity and elementary excitations in molecular liquids

著者|Iwashita, Takuya
所属|Department of Science and Technology, Oita University

本研究の目的は,高温液体の粘度と局所構造緩和の関係性を明らかにすることである。先行研究において液体金属の粘度と構造緩和時間の関係性を特徴付けることに成功したため,本研究では,より複雑な低分子量の分子性液体までその考え方を拡張し,その適用可能性について調べた.結果,粘度の源である応力の時間相関関数は,高温状態でさえ振動モードと緩和モードに分離でき,その緩和モードが局所構造緩和と関連していることを見出した。

輻射流体数値シミュレーションを活用したレーザー加工技術及び物質・エネルギー創生の研究

著者|森 芳孝¹ 砂原 淳²
所属|光産業創成大学院大学¹ Purdue 大学²

我々の研究目的は多次元輻射流体数値シミュレーションを駆使し、レーザー駆動超高圧を利用したレーザー加工プロセス、新物質創生、及びレーザー核融合エネルギー創生に関わるレーザープラズマ相互作用の学理を明らかにすることである。本年度、2次元輻射流体シミュレーションを大幅に改良し、空間2次精度に向上させるととともに二温度化収束精度を向上させた。金属スズにレーザーを照射する条件で計算を行ったところ、レーザースポット周りのプラズマ分布で大きな計算結果の違いが求められた。速度の空間精度向上によると考えられる。

流体中の粒子の挙動解析

著者|古林 卓嗣
所属|大阪大学 工学研究科 NTN次世代協働研究所

(目的)流体中の粒子挙動を計算し、粒子が流体物性に与える影響を明らかにする。
(内容)粒子の形状等を変更し、それらが流体物性に与える影響を調査した。
(結果)粒子の形状等が流体物性に与える影響を数値計算の観点から明らかにすると共に、実験との整合を得た。

深層学習による点群の分類を用いた単一材料で構成された未知形状の建設廃材の重量推定

著者|清水大翔
所属|大阪大学 工学部 環境・エネルギー工学科 共生環境デザイン学講座 環境設計情報学領域

建造物の解体時や建築施工時に発生する廃材のうち再利用可能な廃材を現場で分類する必要があるが,人件費や安全性の観点から分類作業を自動化することが対策として挙げられ,自動機器開発の研究が行われている.しかし耐荷重量の限界まで持ち運びが可能となり,建造物の解体撤去作業等の時短につながる重量推定の機能は実装されていない.本研究では点群と3D instance segmentationを使用して単一材料で構成された廃材に対して自動分類と未知形状にも適用可能な重量推定の双方を可能にした.検証に使用した27個の廃材のうち19個ほど形状・種類を自動分類し,重量の実測値に対する割合誤差が12.9 %±6.5 %の精度で推定された.

Resonance phenomena in light nuclei

著者|Takayuki Myo
所属|Faculty of Engineering, Osaka Institute of Technology

1)中性子過剰He同位体、及びミラー核である陽子過剰核における共鳴状態を理論的に調べた。特に過剰な中性子群/陽子群が原子核中で集団的に振動する新奇な共鳴状態を予言し、その状態が遷移強度関数に与える影響を示した。
2)共鳴状態の期待値は一般的に複素数となり、その解釈は未解決であった。本研究ではグリーン関数を用いることで、共鳴状態の複素期待値をエネルギーに関する強度関数に変換できることを定式化した。具体的に半径の期待値へ適用し、強度関数の形状を議論した。

エンジンシリンダ内燃焼現象の数値シミュレーション

著者|河原伸幸
所属|岡山大学学術研究院自然科学学域

目的 エンジンシリンダ内の燃焼現象(特に,化学反応)に関して,現象把握を目的に,乱流・化学反応動力学計算を実施した.
内容 エンジンシリンダ内の燃焼現象に関して,燃料/ガス噴射,火花点火,火炎伝ぱ,エンドガス部自着火,圧力波生成などの様子を圧縮性を考慮した3次元CFD技術により計算した.化学反応機構として
   素反応モデルを用い,一例として副室式ガスエンジンを対象とした.並列計算を実施するために,OCTOPUSを用いた
結果 一例として副室式ガスエンジンにおける燃料/中間生成物の生成・消費過程を解析した.

シングルセルデータ高精度比較解析アルゴリズムの開発

著者|加藤 有己
所属|大阪大学大学院医学系研究科

シングルセルデータから導出される細胞集団の疑似時系列経路を比較することで、細胞の時間経過を制御する因子を同定できる可能性がある。ところが、従来は線形の経路同士でしか比較できず、分岐のある経路をグローバルに比較することができなかった。本研究では、木構造の疑似時系列経路を効率良く比較するツールCAPITALを開発した。人工データやヒト、マウスの骨髄細胞データを用いてCAPITALを評価した結果、他手法より高精度であり、実データにおける細胞型のペアを正しく対応させることに成功した。

乱流輸送現象の解明に向けた数値シミュレーション

著者|本告遊太郎
所属|大阪大学基礎工学研究科

本研究では,乱流がどのように粒子を輸送するのか,一方,粒子は乱流をどのように変調させるのかを解明するために,数値シミュレーションを実行した.

局所シュレーディンガー方程式法に基づく原子・分子の精密量子化学計算

著者|中嶋 浩之
所属|量子化学研究協会研究所 第四部門

本研究は、原子・分子のシュレーディンガー方程式の正確な一般解法として提案された自由完員関数理論と局所シュレーディンガー方程式法によって、化学反応に重要なポテンシャル曲面を精密に計算する方法を発展させた。強い静的電子相関を持ち量子化学の理論検証のベンチマークとして用いられるH4分子への応用では、シュレーディンガー方程式の絶対解として正確な化学精度を満足するポテンシャル曲面の計算に成功し、従来法よりも遥かに高精度な結果を得ることができた。

Development of a machine-learning force field for high-entropy alloy

著者|Tatsuhiko Ohto
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

9つの元素を含む高エントロピー合金の触媒活性を求めるための機械学習力場を構築した。密度汎関数法による分子動力学計算を行った上で、その結果をガウス過程回帰により学習させ、古典力場を生成した。その機械学習力場を用いた古典分子動力学計算から表面構造の候補をサンプルすることで、網羅的な触媒活性の評価を行った。

Detailed design of BNCT-SPECT considering coincidence counting between detection elements

著者|Mikito Yagura
所属|Quantum Reaction Engineering

BNCTの治療効果をリアルタイム計測するBNCT-SPECT装置において、治療場に存在しうる全ての放射線を考慮したシミュレーションを行い、非同時計数法と同時計数法によるノイズ低減の効果とBNCT-SPECT装置の性能を正確に評価することを目的に研究を行った。PHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)を用いて、頭部に中性子ビームを照射し、検出器中心位置での中性子・γ線フラックスを求める計算をはじめ、各計算で多大な時間がかかることが予想されたため、「SQUID」を使用した。
結果として、計算時間が研究室で使用しているPCの使用時に2〜4週間かかる計算を1日以内に短縮することができた。計算短縮のおかげで、BNCT-SPECT装置の性能を正確に評価することができた。

歯科診療室の個室における実データを用いた汚染空気の滞留シミュレーション

著者|南部恵理子、野﨑一徳
所属|大阪大学歯学部附属病院

自然換気による歯科診療室内の換気効率の評価のため、CFDシミュレーションを行い空気齢を可視化することを目的として研究を行った。方法として、CADソフトにて製作した歯科診療室個室の三次元形状を元に、Star CCM+を用いて、歯科診療室内の自然換気および空調稼働時の気流を可視化した。その結果、自然換気のみの場合、気流から外れた箇所では空気齢の値が高くなったのに対し、空調や局所換気装置を稼働することによって室内全体の空気齢の値が低くなり、換気効率が向上することを明らかとした。

Development of a method for predicting physical properties of new materials using the GAN method

著者|Tamio Oguchi¹ Hiroshi Matsumoto² Kohei Hashimoto³
所属|OSAKA University, OSAKA, Japan¹ DAIKIN INDUSTRIES, LTD., OSAKA, Japan² DAIKIN INDUSTRIES, LTD., OSAKA, Japan³

ダイキン工業ではMaterials Informatics(MI)の導入を推進し、様々なフッ素材料の開発にMIを活用しているが、MIの物性予測モデル構築には大量の学習データを必要とする。しかし、現場には学習データに適したデータは少なく、データ不足がモデル開発に支障を来すケースもある。本研究では学習データ不足を解決するため、高精度な疑似画像を生成できる敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network)を用いた物性予測モデルの開発について検討を行う。今年度はデモ画像データを用いてSQUID上でGANが稼働し、高精度な疑似画像が生成できることを確認した。次年度からはダイキン工業において実際に取得した材料の画像データを適用する。

微小スケールにおける流体運動の現象論的モデルに関する研究

著者|大森健史
所属|大阪公立大学工学部機械工学科

近年のMEMS技術の進展に伴い,微小流路内での流動制御の重要性が増しているが,制御のベースとなる現象論(例えば壁面上での流速に対する境界条件)は未確立である.本研究では,分子動力学法による計算結果を流体力学に基づき解析し,微小スケールにおける流体がしたがう壁面境界条件について,特に壁面の分子スケールの粗さが固液摩擦に及ぼす影響について調査した.

ストリングから生成されるアクシオン暗黒物質のスペクトルの解析

著者|齋川 賢一
所属|金沢大学 理工研究域

  氏名:齋川 賢一 所属:金沢大学 理工研究域 概要: 2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

大規模胸部CTデータセット及び読影レポートを用いたRadiomics解析

著者|佐藤 淳哉
所属|大阪大学 医学系研究科

  氏名:佐藤 淳哉 所属:大阪大学 医学系研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

Numerical simulations in particle and nuclear physics

著者|Hiroaki Kouno
所属|Saga University

主に格子QCD等の計算とそれに関連する計算を行った。配位を生成し、物理量を計算した。アイソスピン化学ポテンシャル存在する場合の計算も行った。
得られたデータについてパーシステントホモロジーを使った解析(トポロジカル・データ解析)を行った。

超温度場におけるナノ金属材料で生じる固相対流現象の原子シミュレーション

著者|新里秀平、Shihao Zhang、Fanshun Meng、Junping Du、尾方成信
所属|大阪大学大学院基礎工学研究科

108K/mを超える非常に大きな温度勾配(超温度場)に置かれたナノ金属材料において、内部が固相を保ったまま対流に類似した原子拡散が起きることが実験により観察された。本研究では超温度場におけるナノ材料の固相対流現象の詳細を原子シミュレーションを用いて明らかにするために、非平衡分子動力学法により材料内部の原子拡散挙動および低温側接点界面における原子分布及び発生する応力の解析を行った。その結果、表面において高温側から低温側へ、内部において低温側から高温側への原子拡散が生じること、および界面において内部と外周で原子の密度が異なり、それによりback-stressが生じていることが明らかになった。

遺伝子発現に摂動を与えた際の発現変動解析

著者|西村建徳
所属|金沢大学がん進展制御研究所

コントロール群と一つの遺伝子発現をノックアウトした群でRNAシークエンスを行い、得られた生データをプロセッシングした。その後、二群間比較を行い、有意に変化した遺伝子をスクリーニングした。その結果、多くの遺伝子で発現変動が見られた。今後、その中でも意義のある変動遺伝子を実験により検証する。

輻射流体シミュレーションによるプラズマのモデリング

著者|砂原淳¹, 粂田智洋², 城﨑知至², 難波愼一², 森田大智³, 山本直嗣³ , 森田大樹⁴, 久米真樹⁴, 空本龍弥⁴, 新沼大登⁴, 杉浦使⁴, 中山勇冬⁵, 東口武史⁴,富田健太郎⁶, 西原功修⁷
所属|パデュー大学原子力工学科¹, 広島大学先進理工系科学研究科², 九州大学総合理工学府³, 宇都宮大学工学部⁴, 宇都宮大学地域創生科学研究科⁵, 北海道大学工学研究院⁶, 阪大レーザー研⁷

我々の研究目的は輻射流体シミュレーションにより、レーザー生成プラズマのモデリングを行うことにある。レーザー生成プラズマは幅広い分野で使われており、我々が計算対象とするのはレーザー核融合、レーザープラズマ光源(極端紫外光源)、レーザー核融合ロケットの磁気スラスター、レーザーアブレーション加工等である。これらを研究する日本の各大学と共同研究を行い、輻射流体シミュレーションと実験結果を比較し、実験のモデリングのみならず、レーザー生成プラズマの学理を明らかにする。また、シミュレーションの計算精度を実験結果との比較から確認し、輻射流体コード開発に活かす。本年度、2次元輻射流体シミュレーションの計算精度向上を図ると共に、実験で観測される複雑なレーザー生成プラズマのダイナミクスを解析した。

Effects of incorporating a deep-unfolding framework into a deep neural network: implications for image restoration

著者|Tatsuki Itasaka, Masahiro Okuda
所属|Doshisha University Faculty of Science and Engineering

ディープラーニングを用いた画像復元手法では,一般的に高い性能を得るDeep-learningを用いた画像復元手法では、一般的に高い性能を得るために大規模なデータセットが必要となるが、取得コストによってそのようなデータセットの取得が困難なタスクも存在する。このような場合、データセットが小さくなりがちで、小さなデータセットで学習したモデルではオーバーフィッティングや低い汎化性能が発生する。このような問題を回避するために、モデルベースの最適化手法が画像復元に広く採用されている。そこで、本論文では、ディープニューラルネットワークとディープアンフォールディングネットワークを組み合わせることで、特に学習データ量が限られているという非理想的な条件下で、汎化性能を向上させる方法を提案します。ディープニューラルネットワークは、ディープアンフォールディングネットワークの前処理を行う。提案手法をノイズ除去や画素補間のための小規模データセットに適用し、ディープニューラルネットワークの汎化性能が向上していることを確認した。

Chemical ordering effect on the radiation resistance of a CoNiCrFeMn high-entropy alloy

著者|Yangen Li , Yujie Jia, Shihao Zhu, Yuta Ebi, Taisei Sugiyama, Takashi Yajima, Heting Liao, Hossan Rana, Yuji Sato, Shuhei Shinzato, Shigenobu Ogata
所属|Osaka University

The chemical ordering of CoNiCrFeMn and its effect on radiation resistance is analysed in this study via Monte Carlo (MC) annealing simulation and molecular dynamics (MD) radiation damage simulation. MC annealing at a lower temperature of 600 K forms an initial stage Cr-rich region in CoNiCrFeMn due to a strong chemical ordering-driven phase decomposition, whereas, annealing at a higher temperature of 1100 K forms a chemical short-range order (CSRO). MD radiation damage simulation shows that the Cr-rich region formed by 600 K annealing accelerates the aggregation and the evolution of defects, facilitating more dislocation loops formation. On the other hand, the CSRO structure formed by 1100 K annealing effectively delays the growth of defect number and tends to reduce the dislocation density and defect diffusion, suggesting better radiation resistance. However, the CSRO structure is destroyed by radiation, thus these advantages of CSRO will disappear in due time if CSRO cannot heal. Fortunately, since the CSRO can recover at working temperature of 1100 K, we speculate that under the working temperature of 1100 K and with a modest radiation damage rate, the advantages of CSRO can maintain for a long time. We finally discuss the condition of the CSRO preservation by proposing a CSRO radiation damage – diffusion healing competition model.

心臓大血管手術における術前評価や術者トレーニングに応用可能な3次元臓器形状を得るためのディープラーニングを用いた医療画像セグメンテーションの可能性

著者|白川 岳
所属|吹田徳洲会病院

  氏名:白川 岳 所属:吹田徳洲会病院 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

縦渦導入型SRストラットと衝撃波を用いた超音速燃焼

著者|比江島俊彦
所属|大阪公立大学 工学部 航空宇宙工学科

マッハ3.5の超音速流中で SRストラットが作り出す縦渦と二つの交差する斜め衝撃波が,ストラット後縁から噴射される燃料水素とどのように反応し,短距離で超音速燃焼が実現できるのかを数値計算で調べた。

セリウムを含む多核クラスター錯体の電子状態解析

著者|川上友美・玉木颯太・松崎光真・森裕樹・長江春樹・劒隼人
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科

セリウムを含む多核金属錯体が光応答性を示す性質を軌道エネルギー準位に基づいて理解することを目的として、セリウムのみからなる6核金属錯体や、セリウムと他の複数の金属元素からなる多核金属錯体の電子状態解析を行った。特に4価のセリウムを含む多核金属錯体が可視光領域に吸収を持つ最大の要因が、セリウム中心の低い4f軌道に由来することを明らかにした。

第一原理計算によるホイスラー合金の材料探索

著者|佐藤和則
所属|大阪大学 大学院工学研究科

第一原理計算によりホイスラー合金系の電子状態を計算し、機能材料のマテリアルデザインを行うことを目的とし、FLAPW法によるバンド計算コードHiLAPWを用いて、ホイスラー合金の電子状態を網羅的に計算した。計算で得られる電子状態密度をもとに系の安定性などを調査し、元素の組み合わせを変えることで第一原理計算結果のデータベースを作成した。

深層学習を用いたカラーキャラクタイラストの自動着色

著者|秋田健太
所属|九州大学芸術工学府

本研究では、カラーイラスト制作において、非常に手間のかかる、手書きイラスト線画の着色の自動化を目指す。線画の自動着色では、ユーザが色の指定を行えるようにするため色ヒントの入力が可能な場合が多く、本研究では色ヒントとして参照画像を使う。自動着色を行う際に、既存研究では、色のみの反映しかできないため、瞳の詳細やハイライトの反映も可能にし、より人が行う着色に近い、自動着色を本研究では目指している。

深層学習を用いたスーパーコンポジット電気絶縁材料の創成

著者|嶋川 肇
所属|東京大学 工学系研究科

  氏名:嶋川 肇 所属:東京大学 工学系研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

マルコフ連鎖とネットワーク中心性を用いたネットワークセキュリティの評価方法の提案

著者|水野信也
所属|静岡理工科大学 情報学部 コンピュータシステム学科

組織におけるネットワークには,各種サーバ,クライアントPCやストレージなど様々な役割があり,コンピュータ同士が密接に繋がってネットワークが構成されている.本研究では,日々作り出されているネットワークログを用いて,コンピュータ間の通信状況を把握し集約する.そして,各コンピュータをマルコフ連鎖の状態として,コンピュータ間の通信における推移確率行列から,同値類の算出を行い,次数中心性を用いて,それぞれの同値類における中心的なコンピュータを算出する.同値類が多くなるほど,ネットワークはセグメント化されており,感染などの拡大は防ぎやすい.またマルコフ連鎖でシミュレーションを行うことで,どのくらいの単位時間で感染が拡大するかを得る.

フォトニックナノジェットを利用した微細加工に関する研究

著者|上野原 努
所属|大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

フォトニックナノジェット(Photonic nanojet: PNJ)は誘電体マイクロ球にレーザを照射することで発生するビームである.PNJの高分解能な強度分布制御によって,高分解能に加工幅や加工深さを制御可能なレーザ微細加工技術の確立を目的とする.PNJを用いたレーザ加工の自由度向上のために,マイクロ球へのレーザ照射条件を検討した.Finite-Difference Time-Domain法による電磁場解析を行い,集光ビームの伝搬特性を利用したPNJの姿勢制御方法を新たに提案し,加工実験によりその有用性を実証した.

舶用プロペラ運航モニタリングのための海中アンテナ設計

著者|菅 良太郎
所属|国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)

本研究では、陸上の既存無線通信システムとの周波数共用を可能とし、かつ舶用プロペラモニタリングシステムに適用可能なアンテナの設計及びプロペラを含む船舶を構成する部品周囲の電磁界分布を定量的に明らかにすることを目的として、FDTD法を用いたシミュレーションを行った。謝辞 本研究開発は総務省SCOPE(受付番号JP215003003)の委託を受けたものです。

表面濡れ性パターンを駆動力とするフラクタル開放型マイクロ流路における、液滴輸送・収集の構造機能相関の系統的理解

著者|甲斐 洋行
所属|東京理科大学

  氏名:甲斐 洋行 所属:東京理科大学 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

気候変動による大雨の増加が閉鎖性海域の塩分場及び養殖二枚貝の生理状態に与える影響の定量化

著者|南部正裕
所属|京都大学 農学研究科 応用生物科学専攻

気候変動によって日本では極端な降水が増加することが予測されており、沿岸域の低塩分化の強化や長期化によって、海洋生物に影響を及ぼすことが懸念される。本研究では閉鎖性海域である石川県七尾湾をモデル海域として、河川流量を降水量から推定する河川モデルとこれを反映させた海洋モデルを作成し、これに気候予測データセットに基づく将来降水量を入力することで、海域の塩分変化と、それに伴うマガキの生理状態への影響を定量化した.

運動論的レーザー吸収による非熱的高速電子発生に関する研究

著者|高木 悠司
所属|大阪大学 理学研究科物理学専攻/レーザー科学研究所

電磁プラズマシミュレーションコードを用いて,強度1014-16 W/cm2 のレーザーと臨界密度以下のプラズマとのピコ秒スケールの運動論的相互作用における高速電子の発生について調べた.境界条件を変えた高解像度大規模計算を行い,シミュレーションの解像度や境界条件が高速電子発生に影響していないことを確かめた.今後発生機構等についてより詳しく調べる予定である.

多孔質を対象とした反応流動解析手法の研究開発と大規模構造への展開

著者|津島将司
所属|大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

格子ボルツマン法による電気化学反応輸送解析手法を多孔質電極に適用し,随伴変数法を用いた最適化手法についての定式化ならびに実装を行い,GPU化に向けた改良を実施した.

MDシミュレーションによる高分子材料の誘電率評価

著者|北井 孝紀
所属|東京大学工学系研究科

本研究者のグループでは、平衡分子動力学(平衡MD)計算によって高分子材料の複素誘電率および線膨張係数等の物性を評価する一定の手順を設定した。本研究ではその方法を多数の分子に対して適用し、まとまったデータを取得することを目的とした。MD計算にはMPI並列の効率が良いCPUノード群を用い、2022年度において500種類を超えるホモポリマー材料について計算を完了した。また得られたデータに特徴量選択手法を適用し、目的物性のためのスクリーニングに有用と考えられる分子構造に関する特徴量を抽出した。今後、これらの成果をまとめて発表を行う見込みである。

湖沼,流域,河川,海域の水環境シミュレーション

著者|中谷 祐介¹ 鹿島 千尋¹ 懸樋 洸大¹ 山根 成陽¹ 出口 博之¹ 鶴田 脩² 門脇 大典²
所属|大阪大学 大学院工学研究科 地球総合工学専攻¹ 大阪大学 工学部 地球総合工学科²

流動水質モデルおよび流域水文水質モデルを用いて,各種水域の流動・水質・物質輸送の数値シミュレーションを行った.

探針増強ラマン散乱と密度汎関数理論によるヘリセン分子の光学活性評価

著者|服部卓磨
所属|大阪大学大学院工学研究科物理学系専攻精密工学コース

探針増強ラマン散乱は、ナノスケールという高い空間分解能で分子のラマンスペクトルを取得できる手法である。一方で、単分子レベルであるがゆえに、空間平均されたラマンスペクトルとは異なり、分子の配向によってスペクトル形状が異なる。そのため、配向に依存したスペクトルを計算し、実験データと比較した。OCTOPUS内のgaussian16を用いて、実験で用いているヘリセン分子のラマンスペクトルをDFTで計算した。配向を考慮すると、実験結果とよく一致することがわかった。また、現在ROAスペクトルを実験的に取得することを試みており、DFT計算結果を取得した。

乱流・混相流の数値シミュレーションと機械学習

著者|竹内伸太郎,岡林希依
所属|大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

乱流,気泡や粒子などを含む二相流,伝熱,潤滑,流体-構造連成解析,界面現象などを対象として,数理モデルの開発,解析手法の高度化・高精度化,現象の解明,データ駆動型モデルの開発を目指している.

キャビテーション乱流のCFDデータベースを用いたデータ駆動型キャビテーションモデルの開発に関する研究

著者|岡林 希依
所属|大阪大学 工学研究科

  氏名:岡林 希依 所属:大阪大学 工学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。  

強磁場中における大振幅電磁波と高密度プラズマとの相互作用に関するプラズマ粒子シミュレーション

著者|佐野孝好
所属|大阪大学レーザー科学研究所

高速電波バースト(FRB)と呼ばれる天体現象では、ミリ秒程度の短い持続時間の高輝度電波放射が観測されている。この天体の放射源及び放射機構については未解明であるが、マグネターと呼ばれる強磁場磁気圏を持つ中性子星との関連が指摘されている。そこで、我々はFRB で予想されるような極限プラズマ下での波動粒子相互作用をPIC シミュレーションを用いて解析している。

異なる並列計算機システム間において連成計算可能なフレームワークの研究開発

著者|Zhou Jingde
所属|京都大学 情報学研究科

  氏名:Zhou Jingde 所属:京都大学 情報学研究科 概要:2022年度公募型利用制度で採択された課題です。