2019年度に報告された大規模計算機システムの研究成果の一覧です。



超音速燃焼を考慮した圧縮性粘性流れの数値解析法に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

マッハ数3程度の超音速空気流中に音速の水素が噴射した場合の衝撃波/境界層干渉と水素拡散の挙動を明らかにするために,化学種の質量保存を含む3次元非定常圧縮性粘性解析を行った.大規模な並列を行うことで,効率的に計算結果を得ることが可能となった.そして,噴流の上流側のせん断層や噴流背後の後流域において非定常な渦が形成され,空気と混合していることが分かった.

Accessing the Accuracy of Density Functional Theory through Structure and Dynamics of the Water–Air Interface

著者|Tatsuhiko Ohto
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

シュレディンガー方程式を解いて原子に働く力を計算する密度汎関数分子動力学法(density functional theory molecular dynamics, DFTMD)を用い、水/空気界面における水分子の性質を様々な汎関数を用いて比較した。試した計算手法の中では、revPBE0-D3(0)が水の物性をよく記述することがわかった。

ビアンキ恒等式の破れによる新しい閉じ込め機構のモテ・カルロ計算による研究

著者|鈴木恒雄1, 平口敦基2,石黒克也2
所属|1大阪大学 核物理研究センター,2高知大学

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

ねじれのある時空上での格子ゲージ理論

著者|山本新
所属|東京大学 理学部

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

噴流-エッジ系における自励振動流のシミュレーション

著者|吉田尚史,松村竜典
所属|信州大学工学部

噴流がエッジに衝突すると噴流が上下に発振する.噴流エッジ間距離を変え振動の変化を調べることを目的とした.噴流-エッジ間距離5から12まで変化させた計算を行い,流れ場や渦構造を可視化した.エッジ先端近傍の速度波形が変化し、渦の数が変化することによって振動モードの変化が起きることを明らかにした.

ナフィオン中の輸送係数の計算

著者|清原健司
所属|産業技術総合研究所

ナフィオン中の水および電解質イオンの輸送係数を求めることを目的とする。水溶液電解質を含むナフィオンを、圧力場下および電場下に置いた場合の、水分子および電解質イオンの輸送係数を、速度相関関数から線形応答理論を用いることによって求めた。数種類の水溶液電解質を含むナフィオンについて、Darcy係数および電導係数を求めた。イオン種および含水率によるこれらの係数の変化を得ることができた。

負荷分散技法を用いた3次元粒子シミュレーションによる高密度プラズマ中でのプラズマチャンネル形成の研究

著者|羽原 英明
所属|大阪大学 工学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

イノベーション加速のための自己組織化マップによる解決手段の可視化

著者|西田泰士
所属|大阪府立大学ものづくりイノベーション研究所

特許文献データを用いて技術課題の解決手段の可視化を行い,新規アイデアの着想を支援する.単語レベルの共起確率ベクトル・相関係数ベクトル、そしてマルチビューを適用し自己組織化マップを構築することで,技術要素の直接的な関連性及び潜在的な関連性の視覚化を実現した.

高濃度に固体粒子を含む流れの数値シミュレーション

著者|辻拓也,田中敏嗣,鷲野公彰
所属|大阪大学大学院 工学研究科機械工学専攻

高濃度に固体粒子を含む流れでは,粒子スケールで起こる固体粒子間の衝突や,粒子-流体間の直接的な流体力学相互作用が,気泡やクラスターなどのメゾスケール構造の形成を引き起こし,さらにこれらの自発構造がより大きいスケールでの対流運動を誘起するなど,典型的なマルチスケール構造を持ちます.実際の工業的な応用では,多くの場合二相間の熱・物質輸送を伴い,さらには粒子サイズの不均一性や,非球形性が問題となることが多く,高精度な予測を行うには多くの物理因子を考慮する必要があります.本研究では,これらの素過程となる種々の現象のモデル開発に取り組んでいます.

Correlation between viscous shear relaxation and local stresses in liquids

著者|Iwashita, Takuya
所属|Department of Integrated Science and Technology, Oita University

本研究の目的は,液体金属の粘度の局所構造依存性を解明することである.この問題を解決するために,液体の局所せん断応力時間相関関数の初期応力状態依存性を調べた.結果,液体の局所構造パラメタの一つとして局所圧力を計算し,その初期圧力状態とせん断応力緩和の間に強い相関が存在することを見出した.圧縮環境下にある原子はせん断に対して速く緩和し,引っ張り環境下にある原子は遅く緩和することがわかった.さらに,材料によらない普遍性をもつことが示唆された.

低次元ナノ物質複合構造体の電子物性解明

著者|岡田晋
所属|筑波大学 数理物質系

本プロジェクトでは、各種異種物質ならびに外部電界と広義複合構造を形成した低次元ナノスケール物質に着目し、複合構造形成下における電子物性の変調の可能性を密度汎関数理論に基づく第一原理計算の手法と有効遮蔽媒質法を組み合わせることにより明らかにした。
 本年度は、立体形状を有する炭化水素分子、トリプチセンとテトラフェニルメタンに着目し、それらの重合構造体を考えることで、それぞれ2次元と3次元の共有結合炭化水素ネットワーク物質の物質設計を行った。これ等の重合構造体は極めて安定な炭化水素結晶系であることが明らかになった。さらに、sp2炭素領域の共有結合ネットワーク中の特異な配置から、いずれの構造もディラックバンドと平坦バンドの組からな特異な電子状態を価電子帯と伝導体に有する半導体となることを明らかにした。

電荷を持つ系の溶質加熱レプリカ交換法

著者|桜庭俊
所属|量子科学技術研究開発機構

レプリカ交換溶質加熱第二(REST2)法は分子動力学計算のサンプリング効率を上げ、高精度の計算を行うための計算手法である。本研究では電荷を持つ系のREST2法の挙動を調査することを目的とした。REST2法を実装したGROMACSをOCTOPUSに移植し、動作確認と検証をまで進めることができたが、当該年度はtool chain, job managerや認証系の問題等で研究が難航し、OCTOPUSでのプロダクトランに至っておらず、有意な結果を得ていない。

分子スケールで見た流体力学的境界条件

著者|大森健史
所属|大阪大学工学研究科機械工学専攻

分子動力学法で作り出したサブナノスケール流れが、固液摩擦係数の周波数依存性つまり粘弾性を考慮すればマクロな Navier 境界条件と Stokes 方程式で記述できるということを初めて示した.

加速器実験への機械学習の適用研究

著者|岩崎昌子,岸田直也,城庵颯,中祐介
所属|大阪市立大学 理学部

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

有限温度・有限密度の場の理論の研究

著者|河野宏明
所属|佐賀大学理工学部 物理科学科

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

時系列シングルセルデータ比較解析法の開発

著者|加藤 有己
所属|大阪大学大学院医学系研究科

遺伝子の発現量などから細胞状態の遷移過程を捉える疑似時間解析において、実験条件の異なるデータから得られる疑似時間経路を理論的に比較する計算手法が求められている。既存手法では線形構造の比較しか行えないため、経路に分岐が含まれる場合、その選択に解析者によるバイアスがかかっていた。本研究では、比較したい疑似時間経路に分岐が含まれるような場合に、客観的に比較可能な手法CAPITALを開発した。公開されているヒトの筋細胞データの組を用いたところ、マーカー遺伝子の発現ダイナミクスを正しく捉え、既報の結果と概ね合致したため、開発手法の妥当性がある程度示されたと考える。

Formation of planar structures with rollable and jumpable cubic modular robots

著者|Mak Kwan Wai
所属|Departement of Mechanical Engineering, Osaka University

This research focuses on the control algorithm of an innovative modular robot, which is a cube-shaped robot capable of performing rolling and jumping actions in multiple directions, and coupling with the other robots to form closely-packed structures. The configuration of the robot referenced to the actuator mechanisms developed in our previous research for allowing rolling and jumping actions to be performed by cubic robots in multiple directions, and the bonding mechanism included in a robot called M-block in previous research for allowing robots to form closely-packed structures of different 3D shapes. Because of the difficulties in building a swarm of new robots and conducting experiment under micro gravity environment, a computer simulation was conducted to investigate the interaction of robots with the proposed control algorithm under micro gravity environment. Due to the numerous magnets involved in the interaction between robots, massive computation on magnetic torque and force are handled in parallel using large-scaled computer systems OCTOPUS. The result has confirmed the effectiveness of the proposed algorithm in the construction of a planar structure under micro gravity environment.

熱放射・LES連成解析のための流入条件データベースの作成

著者|河合英徳,田村哲郎
所属|東京工業大学

本研究では街区の温度場・熱放射場の非定常的な特性を把握するための熱放射・LES連成解析を実施するために,準周期境界により作成された流入変動風にメソ気象モデルWRFにより作成された温度プロファイルをドライバ領域で与えることで風速と温度場の流入条件を作成した。その結果,ドライバ領域によって得られた流入条件では,WRFにより作成された温度の鉛直プロファイルを維持しながら,微細な変動を含んだ風速・温度場を持つ流入条件が作成されていることを確認した。

原子論に基づくMg{10-12}双晶変形の臨界応力の温度速度依存性評価

著者|石井明男,山添恵介,黒崎亮介
所属|大阪大学 基礎工学研究科

目的 六方最密構造Mgにおける{10-12}双晶変形はMgにおける塑性変形の主な担い手として重要であるがその変形の温度依存性評価は未だ明らかにされていない.本研究ではその臨界応力の温度依存性評価について原子論に基づいて明らかにする
内容 加速分子動力学法を用いて温度条件を変更してMg{10-12}双晶変形の発生する臨界応力を評価した.その結果を用いてオロワンの式に基づいて温度ごとの臨界応力を予測した.
結果  得られた臨界応力の温度依存性は常温での実験結果と良い一致を示し,さらに低温における臨界応力の温度依存性の変化が顕著であることがわかった.

パイロクロア磁性体におけるスピン・軌道ガラス転移の数値シミュレーション

著者|吉野 元
所属|阪大サイバーメディアセンター

不純物などの外的乱れなしで起こるスピングラス転移が、Y2Mo2O7というパイロクロア酸化物において30年ほど前から実験的に知られており、興味が持たれてきた。そのメカニズムは、理論的には未解明であった。我々はこの系におけるガラス転移に関する微視的理論模型を導出し、その性質を大規模モンテカルロシミュレーションによって明らかにした。具体的には、OCTOPUS上で、MPIを用いたノード内(48コア)並列計算を行った。用いた手法はレプリカ交換モンテカルロ法で、プロセス毎に温度の異なるレプリカのシミュレーションを行いつつ、プロセス間で温度の交換を行うというものである。本研究の結果、Y2Mo2O7においてスピンと軌道自由度が同時にガラス転移を示すことを発見した。

大規模並列密度行列繰り込み群法のGPU化

著者|曽田繁利
所属|理化学研究所計算科学研究センター

密度行列繰り込み群法は強相関量子系に対する数値的研究手法であり、特に1次元系に対して有効な手法であることが知られている。その一方、密度行列繰り込み群法の多次元系に対する高精度計算は、その量子揺らぎのため非常に巨大な計算コストを要することが知られており、この事情はエンタングルメント・エントロピーの面積則と対応する。しかしながら、近年の計算機科学の発展は密度行列繰り込み群法の2次元系への応用を十分可能にしており、数多くの研究成果も報告されている。密度行列繰り込み群法の2次元系への応用は、例えば量子モンテカルロ法ではいわゆる負符号問題のために適用することが困難な系に対しても適用可能であり、量子スピン液体状態のような新奇量子相の研究など様々な応用も期待される。本研究では、これまで開発してきた大規模並列密度行列繰り込み群法プログラム「paraDMRG」のGPU化を行うことにより、GPUが搭載されている大規模計算機での効率的な実行を可能にすることで、より広範な応用を促進することを目的とする。

破滅的忘却が軽減可能なニューラルネットワークの構造分析

著者|LU CHEN
所属|京都工芸繊維大学 情報工学・人間科学系

単一のゴールのみを学習させる代わりに、複数のゴールを切り替えながら学習させた場合、ニューラルネットワークの破滅的忘却が軽減できることが論理生物学の分野で示唆されている。本研究では、この知見を実データに応用し、複数のゴールを切り替えながら学習させた場合、破滅的忘却が軽減できることを確認した上で、得られたニューラルネットワークの構造的特徴を明らかにする。

高負荷燃焼と NOx 低減の同時機能実現に向けた CO2フリー燃焼器の開発

著者|奥村 幸彦
所属|香川大学 創造工学部

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

波長多重通信デバイスのためのフォトニック結晶構造の設計に関する研究

著者|山口 拓也, 森藤 正人
所属|大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 先進電子デバイス基礎領域

帯域幅が従来よりも広い、新たなフォトニック結晶直行格子導波路(OLW)を提案し、共振器からOLWへの光取り出し効率を計算した。計算には3次元FDTD法を用い、導波路有無によるQ値変化から結合効率を算出した。計算の結果、従来の導波路よりも帯域幅が2倍となり、光取り出し効率も良好な値となることがわかった。

Comprehensive understanding of mechanism of laser-produced magnetic field generation.

著者|Ryunosuke Takizawa
所属|Institute of Laser Engineering, Osaka University

目的 実験結果とシミュレーション結果との比較をするために、大型計算機が必要なため利用する

内容 金属平板に高強度レーザーを照射し,膨張するプラズマをシミュレーション計算する.用いるコードはFLASHと呼ばれる理想MHDシミュレーションコードである.これによって得られたパラメーターとモデルを組み合わせ,物理現象の解明に努めている

湖沼~河川~海域における流動・水質・物質輸送の数値解析

著者|中谷 祐介1, 井上 尚美1, 黄 若漪1, 石川 和樹2, 稲垣 翔太2, 戸村 祐希2
所属|1大阪大学 大学院工学研究科 地球総合工学専攻 , 2大阪大学 工学部 地球総合工学科

三次元数値モデルSCHISM,FVCOMを用いて,感潮河川,淡水湖,汽水湖,閉鎖性内湾,内海~外洋域における流動・水質・物質輸送のシミュレーションを行った.

Simulation study of action potential propagation in the heart

著者|津元 国親
所属|金沢医科大学 医学部

心臓不整脈の実体は、心臓組織上での旋回性興奮の発生にあると考えられている。遺伝性QT延長症候群や、薬物の副作用としての薬物誘発性QT延長症候群における致死性不整脈の発症は、心筋細胞レベルでの再分極異常(早期後脱分極:early afterdepolarization)の発生が引き金となって、旋回性興奮(リエントリー)の発生によるものと考えられている。しかしながら、そのリエントリー生成メカニズムは未だ明らかでない。
 心筋細胞の活動電位(細胞)モデルユニットを電気的に結合した6 cm × 6 cmの心室組織(シート)モデルに、再分極異常細胞ユニット(EADユニット)をクラスター状に配置し、興奮伝播シミュレーションを様々な条件下で繰り返し実施した(図)。EADクラスターのサイズ、シート内での位置、複数のEADユニットクラスターが存在した場合のクラスター間の相互作用の強度といったパラメータが、リエントリー生成に与える影響を検討した。
EADが発生することでEADユニットの興奮の終了(活動電位の再分極)が遅れる。EADユニットクラスター以外の非EADユニット(no-EAD units)は、既に興奮が終了しており、EADユニットとの間に大きな電位差が生まれる。この電位差によって、電流が発生し、すでに興奮が終了した非EADユニットを再び興奮させる。つまり、リエントリー(興奮の再入)を引き起こす。今回、EADユニットクラスターのサイズ(ユニット数)が心室組織全体の約20%以上を占め、かつ、そのEADユニットクラスターが組織辺縁部に近い場所にあるときに、旋回性興奮波の発生を見た。今後は、EADの発生からリエントリー誘発(致死性不整脈発症)までの条件を更に詳細に検討する予定である。

クォーク・グルーオン物質の閉じ込め相転移に対する、パーシステントホモロジーを用いたアプローチの模索

著者|大野 晃
所属|九州大学 理学府

クォーク・グルーオン物質の非閉じ込め相転移に現れる物理現象を解明するため、パーシステントホモロジー解析を用いた有効なアプローチを模索している。今回はその一環として、QCDの閉じ込め機構を説明するとされているセンターボルテックスの時空間配置がどのように温度変化するかを調べた。数値シミュレーションによってセンターボルテックス構造を計算し、パーシステントホモロジー解析を行ってその「穴」を表す位相幾何学的特徴(1次のホモロジー)を調べた結果、転移点において閉じ込めからsQGPの状態への遷移を説明する顕著な変化が確認された。

マイクロ熱工学に関する分子シミュレーション

著者|芝原正彦,植木祥高・藤原邦夫
所属|大阪大学大学院機械工学専攻

ナノ・マイクロメートルスケールのエネルギー輸送現象を原理的に理解して制御することを目的として,ナノ構造が凝縮過程や凝縮時の熱抵抗に与える影響を,分子動力学法を用いて調査した.また壁面での凝固現象が微粒子に及ぼす影響に関しても分子動力学解析を用いて現象解明を行った.そのために大規模可視化対応PCクラスタを用いた.

海洋中の乱流と混合に関する数値実験的研究

著者|吉川 裕、大倉 大樹、牛島 悠介
所属|京都大学大学院理学研究科

海面からの熱をエネルギー源とする台風は,海洋中に活発な乱流混合を引き起こす。この混合は海面水温を低下させるため,台風へのエネルギー供給も低下し,台風の勢力が弱まる。これまでの研究では,海洋中の混合を鉛直一次元過程で近似することがしばしば行われてきた。しかしながら,海洋中の3次元的な流れが,海面水温の分布や混合強度を変え,それが台風の発達に影響を与える可能性があることが示唆される。そこで,海洋中の3次元的な流れも再現し,1次元過程のみ場合と比較することで,海洋中の3次元過程が果たす役割を調べた。その結果,3次元過程は,海面水温の平均値を低下させるだけでなく,水へ分布の非対称性を著しく増加させることが明らかとなった。この非対称性は,台風の進路に影響することから,海洋の3次元過程が台風の進路に影響する可能性が示唆された。

仮想心臓モデルによる心臓電気現象シミュレーション

著者|稲田慎1, 中沢一雄1, 原口亮2, 芦原貴司3
所属|1森ノ宮医療大学保健医療学部, 2兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, 3滋賀医科大学情報総合センター・医療情報部

スーパーコンピュータ上に仮想心臓モデルを構築し,心臓電気生理学的シミュレーションを行うことで致死性不整脈のメカニズム解明や,予防・診断に役立てることを目的している.内容:心筋細胞の電気興奮に伴う電位変化(活動電位)を再現することが可能なユニット約2,000万個を組み合わせて心室形状モデルを構築した.モデルには,心外膜から心内膜にかけての電気生理学的性質の不均一性を組み込んだ.本研究では,遺伝性の心臓疾患の一つであるブルガダ症候群を想定し,心筋組織内の興奮伝導障害の領域を設定し,伝導障害と心室性不整脈の誘発性および持続性との関係について検討した.心臓電気生理学的検査を想定し,右室流出路の心内膜側を電気的に刺激し,不整脈が誘発されるときの応答をシミュレートした.伝導障害領域の大きさや,領域内におけるユニット間の電気的結合の強さなどの伝導障害の程度や,電気刺激の条件を変えながらシミュレーション実験を行った.伝導障害の領域が直径3 cm,ユニット間の電気的結合を正常の10%まで減少させると不整脈が誘発される場合があったが,電気刺激のタイミングが同一であっても,不整脈の誘発性は電気刺激の部位に大きく影響された.

2カラーQCDの低温高密度における層構造とトポロジーの解明

著者|伊藤悦子1, 飯田圭2,李東奎2,石黒克也3
所属|1大阪大学 核物理研究センター, 高知大学 理工学部, 慶應義塾大学, 2高知大学 理工学部, 3高知大学 学術情報基盤図書館

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

日本全国の位置情報付き仮想の個票合成手法の精緻化

著者|原田 拓弥
所属|関西大学 データサイエンス研究センター

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

負荷分散技法を用いた3次元粒子シミュレーションによる高密度プラズマ中でのプラズマチャンネル形成の研究

著者|羽原英明
所属|大阪大学大学院工学研究科

高速点火レーザー核融合における実スケール計算を可能とするため、ノードあたりの粒子数を動的に再割当てしてノード間負荷を均等にする手法を粒子コードに採用し、最大10倍程度の高速化に成功した。このコードを用い、大きさ数百ミクロンx数十ミクロンの計算領域において、空間分解能数ナノメートル、時間分解能数フェムト秒で、最大10ピコ秒まで計算を行い、高強度レーザーが高密度プラズマ中を侵入する際形成する密度チャンネル形成の実験結果再現に成功した。

Controlled growth of single-crystalline metal nanowires via thermomigration across a nanoscale junction

著者|Shuhei Shinzato, Shigenobu Ogata
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

流体においてよく知られている温度勾配下における質量輸送がナノスケールの金属材料においても発生することが観察されている。本研究はこの現象を利用したナノワイヤ生成手法を実験的、数値的に解析し、その制御手法を提案するものである。利用者は実験的に観察されているこの現象の詳細を明らかにするために、分子動力学法を用いて基材表面及びその直上にあるナノワイヤおける原子の拡散プロセスの解析を行い、結晶粒界における原子拡散が粒界面に垂直な引張荷重により促進されることを確認した。その結果、発表論文で行った実験及びFEM解析により推測された、引張荷重によるナノワイヤの成長の促進が裏付けられる結果を得ることができた。

MSDC-MDによる天然変性蛋白質の熱力学解析と構造予測

著者|下山 紘充
所属|北里大学 薬学部

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

輻射流体数値シミュレーションを活用したレーサー加工技術、及び物質・エネルキー創生の研究

著者|森芳孝
所属|光産業創成大学院大学

多次元輻射流体数値シミュレーションを駆使し、レーザー駆動超高圧を利用したレーザー加工プロセス、新物質創生、及びレーザー核融合エネルギー創生に関わるレーザープラズマ相互作用の学理を深めることを目的としている。本年度は、レーザー核融合研究として、大阪大学レーザー科学研究所で実施したGXII/LFEX実験の対向ビーム爆縮シミュレーションを行い、爆縮密度温度等、物理パラメータを解析した。得られた結果の概要は以下のとおりである。

(a) 二次元輻射流体シミュレーションコードSTAR2Dを用いて、実験に対応したレーザーおよびターゲット条件で爆縮シミュレーションを行った。レーザー条件は2種類の配位、ターゲット条件は2種類である。計算の結果、対向ビーム爆縮では非球対称な楕円体状の爆縮コアが形成されることが見出された。
(b) STAR2Dコードによる爆縮シミュレーションの結果をさらにポストプロセス処理し、爆縮コアからのX線発光を実験で使用したX線ストリークカメラに対応した感度分布を用いて計算機上で再現し、実験計測結果と比較した。その結果、概ね実験との良好な一致がみられたものの、爆縮タイミングについて、実験よりも計算が100ps程度遅れていることが見出された。この実験結果とシミュレーション結果の差の原因としてはレーザー吸収のモデリングにおける不正確さなどが考えられ、今後のコード開発及びプラズマモデリングの方向性が示唆された。

Rotating detonation engine with water cooling system

著者|Edyta Dzieminska
所属|上智大学 理工学部

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

超音速 Batchelor 渦におけるヘリシティ不安定効果

著者|比江島俊彦
所属|大阪府立大学 工学域 航空宇宙工学分野

超音速流では変動の成長が圧縮性効果によって抑制されるが,線形安定性理論を用いてヘリシティ分布による不安定効果を見出した。その効果を非線形発達も含めた高次精度3次元数値計算でも確認した。

カイラルフェルミオンを用いた格子QCDによる中間子の研究

著者|和田 浩明1, 村上祐子1, 関口宗男1, 中村純2, 若山将征2
所属|1国士舘大学 理工学部, 2大阪大学 核物理センター

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

分子動力学シミュレーションによる水の誘電緩和スペクトルの起源探索

著者|岩下 拓哉
所属|大分大学 理工学部

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

Monopole effects on quark confinement and chiral symmetry breaking

著者|長谷川将康
所属|Bogoliubov Laboratory of Theoretical Physics,Joint Institute Research

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

格子QCDによるPc+ペンタクォークの研究

著者|杉浦拓也
所属|理学研究所 数理想像プログラム(iTHEMS)

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関
連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されて
いる。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を
含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作
用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、
閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

ニュートン流体・粘弾性流体の壁乱流遷移および混相流シミュレーション

著者|塚原 隆裕1, 河田 卓也1, 仁村 友洋2, 小田 和希2, 花房 真輝2, 福田 雄大2, 岡田 岬2, 榊原 諒太2, 竹田 一貴2, 藤村 俊介2, 森松 浩隆2, 荻原 大和3, 川津 晃貴3, 澄川 一夫3, 中川 皓介3,
所属|1東京理科大学理工学部機械工学科, 2東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻, 3東京理科大学理工学部機械工学科

壁面せん断流の亜臨界乱流遷移において,その遷移過程と発現構造は複雑で,理論的アプローチが困難である.本研究では,ニュートン流体流れの後退翼平板境界層やGiesekus粘弾性モデル流体流れのバックステップ流などの直接数値シミュレーションを行い,低レイノルズ数下での粘弾性による流動構造の変化や(ニュートン流体を含む)乱流遷移過程の変化を調査した.今年度は他に,テイラークエット流や,分散性粒子を含む固液二相流,OpenFOAMを用いた気液界面を含むミリスケール液滴・液膜の解析などを行った.

多次元仮想座標とカップルした分子動力学法を用いたmSin3複合体の立体構造探索

著者|速水 智教
所属|大阪大学 蛋白質研究所

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

密度成層・地球自転存在における海洋表層乱流混合パラメタリゼーションスキームの開発

著者|牛島悠介、吉川裕
所属|京都大学大学院 理学研究科

世界規模の海洋循環を再現する海洋大循環モデルでは大気海洋相互作用などに重要な混合層深度の再現性が不十分である。海洋大循環モデルでは混合層深度の再現するために乱流混合をパラメタリゼーションで表現しているが、このパラメタリゼーションには海洋で大きな役割を果たす密度成層の影響が十分に考慮されていないため、乱流混合を陽に再現可能な数値モデルを用いて乱流混合に対して密度成層が与える影響を明らかにし、その効果を定式化することで新たなパラメタリゼーションを開発することを目的とした。数値実験を行った結果、密度成層が強い深さにおいて従来のパラメタリゼーションから大きくずれることが明らかとなった。従来のパラメタリゼーションに成層の効果を導入することで、表層流速の鉛直分布の再現性が向上した。

ミルフィーユ構造の変形特性に関する原子論的研究

著者|Hajime Kimizuka, Kohei Ichioka, Hiroki Fukui, Yuki Iwai, Sohei Takahashi
所属|Osaka University

種々の金属系および高分子系ミルフィーユ構造のミルフィーユ構造の形成条件および変形特性を解析するために必要となる電子論的・原子論的シミュレーション手法の開発・整備を進めた.具体的には,(1)第一原理計算に基づく合金の熱力学的安定性評価,(2)分子動力学法に基づく変形素過程の抽出,(3)粗視化・加速分子動力学法に基づく高分子凝集体の状態探索,を行うための手法の整備・開発を実施した.

有限温度・有限密度領域における格子QCDの数値解析

著者|開田丈寛
所属|九州大学 理学部

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

フォトニックナノジェットを利用した微細加工に関する研究

著者|上野原 努
所属|大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

フォトニックナノジェット(Photonic nanojet: PNJ)は誘電体マイクロ球にレーザを照射することで発生するビームである.PNJの高分解能な強度分布制御によって,高分解能に加工幅や加工深さを制御可能なレーザ微細加工技術の確立を目的とする.加工対象であるシリコンにPNJを照射した際の強度分布をFinite-Difference Time-Domain法を用いた電磁場シミュレーションによって解析した.これによって,PNJを用いることでサブマイクロメートルスケールの加工が可能であることを解析的に明らかにした.

熱流体物理の未解決問題の数値解析研究

著者|内藤 健
所属|早稲田大学 理工学術院基幹理工学部機械科学・航空学科

スーパーコンピュータを利用して様々な問題の熱流体数値解析が
おこなわれているが、例えば、直管内で乱流遷移する位置と入口乱れ強さの関係を解明で
きる数値解析や理論は存在してこなかった。当方では、確率論的Navier-Stokes方程式とそ
の境界条件の理論を新たに提案し、それに基づいて、現象の解明を可能にしてきている。
また、それを用いて、高効率ロケットエンジンの性能検討を行ってきている。

構造関数モデルを用いた二次元乱流噴流のLES

著者|吉田尚史,佐藤遼馬
所属|信州大学工学部

構造関数モデルを用いたLarge Eddy Simulationで二次元乱流噴流の発達を調べることを目的とする.レイノルズ数6000, 10000の二次元乱流噴流をLESで計算し,統計量を実験値と比較し解析した.構造関数モデルは数値的に安定で,時間平均速度や乱れ強さは実験値と一致する結果が得られた.

格子量子色力学に基づくクォーク間ポテンシャルの精密測定

著者|駒佳明1, 駒美保2
所属|1沼津工業高等専門学校,2大阪大学 核物理研究センター

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

遷移金属触媒による炭素–フッ素結合変換反応の開発

著者|岩本 紘明、生越 專介
所属|大阪大学工学研究科応用化学専攻

炭素(sp3)-フッ素結合は非常に強固な化学結合の一つであり、その切断反応は困難な反応の一つとして知られている。当研究室では、電子豊富なニッケル錯体を用いることで、炭素(sp3)-フッ素結合切断が進行することを見出した。本研究では、このニッケル錯体による炭素(sp3)-フッ素結合切断過程を理論計算ソフトであるGaussian 09を使用した密度汎関数理論(DFT)計算によって解析した。その結果、ベンゼン環への電子供与を経由して炭素(sp3)-フッ素結合が切断されるといった、これまで提唱されたことのない反応機構によって本反応が進行していることが示唆された。

プラズマ気相法におけるラジカル反応のシミュレーション

著者|宮本 良之
所属|TASC グラフェン事業部

目的:銅表面上のグラフェンプラズマ気相成長メカニズムを解明する。
内容:メタン分子より発生するラジカル分子を予想し、銅基板との相互作用をシミュレーョンで調べた
結果:シミュレーョンにて CH ラジカルを銅基板に運動エネルギー10eVで衝突させた。 C-H結合分解は容易に起きず、さらに複雑な過程の存在が示唆された。

全原子モデル自由エネルギー解析に基づくポリマー材料への成分収着動態の解明

著者|Ryota Matsuba1, Hiroyuki Kubota1, Nobuyuki Matubayasi2
所属|1Japan tobacco Inc., 2Osaka University

目的:ポリマー材料への低分子成分の収着性を全原子モデルで解析する
内容:分子動力学(MD)シミュレーションとエネルギー表示溶液理論を用い、セルロースアセテートに低分子成分(H2O、CO2、N2、CH4)が収着する際の自由エネルギーを計算した。セルロースアセテートはアセチル置換度の異なる3水準を対象とした。
結果:H2Oは他成分より収着自由エネルギー変化(ΔG)が大きく、極性分子が収着しやすいことが示された。CH4のΔGはおおよそ0であり、セルロースアセテートへ収着しにくいと考えられる。また、アセチル置換度が増加すると各成分においてΔGは減少しており、置換度2が最も低分子成分を吸収しやすいことが示された。

Lattice simulations in Z3-symmetric QCD

著者|Hiroaki Kouno
所属|Saga University

Z3対称な格子QCDの計算とそれに関連する計算を行った。
特に有限温度・有限密度領域における計算を行った。
位相クエンチ近似を使用しているので、現在の段階の結果はアイソスピン化学ポテンシャル存在する場合と同等の状態に対応する。
温度が一定のとき、化学ポテンシャルが増加するとポリヤコフループの絶対値は増加する傾向が見られた。

Rh(III)モノヒドリド錯体を触媒とした不斉水素化反応の反応経路探索

著者|長江春樹
所属|大阪大学大学院 基礎工学研究科

当研究室でこれまでに開発してきた3つの塩素によって架橋されたRh(III)モノヒドリド錯体による不斉水素化反応について、新たに単離した単核錯体をモデルとして、錯体の立体の評価および反応経路探索を行った。

分子動力学/N体問題アプローチによるプラズマの集団現象のシミュレーション

著者|沼田龍介
所属|兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科

クーロン相互作用に支配されるプラズマの集団的ダイナミクスとその背後にある階層構造を明らかにすることを目的として,ミクロな運動方程式からプラズマのマクロ現象を再現するシミュレーションプログラムを開発した.大規模並列粒子シミュレーションコード開発フレームワークFDPSを用いてコード開発を行い,プラズマ中の基本的集団現象であるデバイ遮蔽のシミュレーションによってコードの動作確認を行った.周期境界条件下で系内の電子の運動を解き,イオンのポテンシャルが遮蔽される現象を再現した.周期境界条件の実装のために,Particle-Mesh 法と近傍領域のイメージ粒子を考慮する方法を実装し比較した.

圧力変動に伴う運動量の乱流輸送過程に及ぼす成層の影響評価と海洋乱流混合層スキームの改良

著者|牛島 悠介
所属|京都大学 理学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

CeドープされたYAG結晶における光励起後のFranck Condon緩和の第一原理計算

著者|宮本 良之
所属|産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

壁面せん断流中の粘弾性流体の流動に関する研究

著者|仁村友洋
所属|東京理科大学大学院 理工学研究科

水などのニュートン流体に比べ,界面活性剤溶液にみられる粘弾性流体の流動は複雑である.粘弾性流体では,せん断流中で形成されるミセル構造などによって生じる付加的な応力が乱れを誘起したり,抑制したりする.しかし,そのメカニズムは十分な理解がされていない.本研究では,直接数値解析によって複雑な粘弾性流体の流動現象を理解する.

大規模多孔質場における気液二相流動解析

著者|津島将司
所属|大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

大規模多孔質場の構造形成過程について,気液二相流挙動の解析が可能な格子ボルツマン法を適用し,ファンデルワールス状態方程式パラメータに対する計算安定性の評価を行った.その上で,大規模多孔質系における二相流挙動について検討した.

低温高密度領域における2カラーQCDの相図と超流動性の解明

著者|伊藤悦子
所属|慶應義塾大学 自然科学研究教育センター, 大阪大学 核物理研究センター, 高知大学 教育研究部 自然科学系 理工学部門

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

Measuring Φ100 mm aspheric mirror by Non-Contact Three Dimensional Nano-profiler Using Normal Vector Tracing Method

著者|Mikiya Ikuchi
所属|Osaka University

我々は、非接触かつ自由曲面の測定が可能な形状測定法として、法線ベクトル追跡型非接触ナノ形状測定法の開発に取り組んでいる。本研究では、実際にΦ100 mm凹非球面ミラーの形状測定を行った。その結果、試料作製時の切削痕由来と思われる同心円状の形状誤差があることが分かった。

DNSを用いた乱流予混合火炎の数値PIV計測に関する検討

著者|坪井 和也
所属|岡山大学

乱流予混合火炎において重要な特性のうち,火炎変位速度を求めるために必要な局所流速の計測精度を評価するため,DNS(直接数値シミュレーション)データを用いて現実のPIV(粒子画像流速測定法)により近い数値計測手法(数値PIV計測)を構築する.
未燃混合気と既燃生成物の密度比を変化させた3次元DNSによって構築された乱流予混合火炎のデータに対して数値PIV計測を行う際に,トレーサ粒子の粒径が計測された局所流速に及ぼす影響について,DNSによって算出される局所流速と数値PIV計測によって計測された局所流速の値を比較して検討した.
本研究の条件下においては,未燃混合気と既燃生成物の密度比が高い場合,トレーサ粒子の粒径が大きい方が,DNSと数値PIV計測の局所流速の間で全体的に高い相関が見られた.

開いたキャビティを過ぎる三次元非圧縮流れにおける統計的構造のシミュレーション

著者|吉田尚史,成田翔,伊佐治賢人
所属|信州大学工学部

開いたキャビティを過ぎる三次元自励振動流の渦構造を解析することを目的とする.キャビティアスペクト比2.0について直接数値シミュレーションを実行し,自励振動と渦構造を可視化した.せん断層とキャビティ内の速度と圧力の各種統計量の分布構造を可視化し調べた.

爆轟現象の解明とその応用に関する研究

著者|坪井伸幸
所属|九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系

水素/空気予混合気に対する詳細化学反応モデルを使用して,2次元及び3次元の非定常圧縮性粘性解析を行った.今年度は粘性の影響を考慮した,高次精度スキームを使用した2次元,3次元デトネーションについて解析を実施し,粘性の影響を評価した.

Ab initio approach to light nuclear systems based on quantum chromodynamics

著者|Hidekatsu NEMURA
所属|RCNP Osaka University

Comprehensive study of generalized baryon-baryon interaction including strangeness is one of the important subject of nuclear physics. In order to obtain a complete set of isospin-base baryon interactions, we perform a large scale lattice QCD calculation with almost physical quark masses corresponding to $(m_{\pi}, m_{K})\approx(146,525)$~MeV and large volume $(La)^4=(96a)^4\approx(8.1~{\rm fm})^4$. A large number of Nambu-Bethe-Salpeter correlation functions from nucleon-nucleon to $\Xi\Xi$ are calculated simultaneously. For the moment, we focus on the strangeness S=-1 channels of the hyperon interactions by means of HAL QCD method. Strong repulsive forces are found in Sigma-Nucleon systems.

ニュートリノ・核物理に基づいた超新星爆発および原子中性子星の研究

著者|住吉光介
所属|沼津工業高等専門学校教養科

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

Large scale atomistic simulation of defects and hydrogen behavior in iron

著者|Fanshun Meng, Shigenobu Ogata
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

大規模分子動力学シミュレーションによりbcc鉄に点欠陥(vacancyおよびinterstitial)を導入した原子モデルを作成し、作成した原子モデルに対して水素原子を導入した場合と導入しない場合とでこれらの点欠陥の拡散挙動がどのように変化するかを解析した。その結果 水素の有無にかかわらずinterstitialの拡散はvacancyに比べて速いことが確かめられた。また、水素の有無によるこれらの拡散速度の変化については、温度や水素濃度によって水素の影響が変化することがわかったが、その変化のばらつきが大きく、系統的な結果を得るためには今後さらに慎重な解析が必要であることがわかった。

格子ボルツマン解析の大規模多孔質反応輸送場への適用

著者|津島将司
所属|大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

大規模多孔質場における反応輸送解析を対象として,格子ボルツマン解析の適用可能性ならびに並列化による計算性能向上について評価した.その上で,反応流動解析を実施し,多孔質構造内局所反応分布の時系列変化について検討を行った.

二次元球座標系FDTDを用いた電離圏と大地を伝搬する雷電磁界パルスのモデリング

著者|山本 純也
所属|同志社大学大学院 理工学研究科

二次元円筒座標系FDTD法(Finite Difference Time Domain)は二次元空間で三次元的に電磁界解析を行うことができるため,メモリの節約が可能になる。しかし,セルの形状が長方形のため地球の曲面を無視できる範囲での電磁界解析にしか適さない。一方で,二次元球座標系FDTD法は地球の曲面を考慮できるため,300 kmを超えて伝播する雷電磁波の計算にも有効である。本研究では,二次元球座標系FDTD法に必要な電磁界更新式の定式化を行い,垂直電界の実測波形と比較することで二次元球座標系FDTD法の適用可能性の検討を行った。

Development of energy demand models for cooperative distributed EMS

著者|Yohei Yamaguchi
所属|Graduate School of Engineering, Osaka University

本研究は国勢調査等の社会調査データから日本全国の世帯を乱数生成し、生成した模擬人口を用いた生活行動、エネルギー需要シミュレーションを行い、住宅のエネルギー需要を高い時空間解像度で推計するアプローチを確立した。この結果、世帯構成、気象条件、住宅・設備の集積状況が重要な因子となりエネルギー需要が形成されていることが明らかになった。

勾配流法を用いたNf=2+1 QCDのエネルギー運動量テンソルの研究

著者|谷口 裕介
所属|筑波大学 計算科学研究センター

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

2次元電子系のストライプ型電荷秩序パターンにおける光学スペクトル

著者|岩野薫
所属|高エネルギー加速器研究機構

2次元電子系においては、電子が規則的に並んだ電荷秩序が発生するが、様々な電荷秩序の光学励起状態に予想される多電子励起性が興味深い。これまで電荷自由度に注目したスピンレスフェルミオンモデルを6×6の格子で扱い、光学伝導度、および、各励起エネルギーにおける多電子励起性を求めてきたが、本年度は特にストライプ型電荷秩序を対象に解析を行った。スペクトル(σ)と電子励起数(Nex)を各振動数ごとに求めたところ、スペクトル形状は比較的鋭いが、Nexを見ると、励起数は最大で6程度と比較的大きい。これは1電子励起と多電子励起が混在していると大まかに理解される。

ハイブリッド汎関数を用いた水界面物性の第一原理分子動力学シミュレーション

著者|大戸 達彦
所属|大阪大学 基礎工学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

レーザープラズマの2次元放射流体シミュレーション

著者|砂原 淳1, 城﨑 知至2
所属|1Purdue大学原子力工学科/大阪大学レーザー科学研究所, 2広島大学 大学院工学研究科

これまでに開発した2次元輻射流体シミュレーションコードSTAR2dに対して、本年度は流体ソルバーの改良や、相対論電子ビーム輸送ルーティンの組み込みを行った。また、開発したコードを以下の解析を行った。
(a) レーザー核融合爆縮過程をシミュレートするため、2次元輻射流体コードSTAR2Dの開発を進めた。本年度は流体ソルバー空間精度向上と境界条件設定の改良を行うとともに、保存量保存性の改良を進めた。また、開発したコードを爆縮過程のシミュレーションに供して、解析を行った。

(b) X線顕微鏡などの応用を目的とした軟X線源開発として、テーブルトップのジュール級レーザーを平板金ターゲットに照射し、生成される金アブレーションプラズマからの軟X線生成過程をシミュレートした。2次元輻射流体コードSTAR2Dでレーザーアブレーション過程をシミュレートし、得られたアブレーションプラズマの時間・空間プロファイルと輻射放出・吸収係数テーブルを用いたX線光線追跡シミュレーションにより放出輻射特性を評価した。シミュレーション結果と先行実験悔過とは、軟X線放出時間・空間プロファイル、照射レーザーから軟X線への変換効率等においてよい一致を示した。これより、シミュレーションの妥当性が確認された。今後、レーザー照射条件・ターゲット厚さを変えたシミュレーションを進め、軟X線放射の高効率化を目指す。

国民生活シミュレーションに基づく住宅・業務施設のエネルギー需要予測

著者|山口 容平
所属|大阪大学 工学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

乱流渦キャビテーションによる乱流変調と壊食の予測

著者|太田 貴士
所属|福井大学

クエット乱流において,気液相変化による密度変化と,流れ場とキャビテーションの相互作用を考慮した圧縮性気液二相流の直接数値シミュレーションを実現した.そして,乱流中に発生する渦キャビテーションを観察し,乱流渦とキャビテーションの相互作用のメカニズムを明らかにした.さらに,乱流渦キャビテーションによる圧力波から壊食を予測することで,乱流渦に起因するキャビテーション壊食の特徴を調べた.その結果,乱流渦の直下とその周囲において,キャビテーション壊食が発生する可能性が高いことを示した.

距離依存性をもつ自発超伝導の磁場による安定化

著者|兼安 洋乃
所属|兵庫県立大学 大学院物質理学研究科

金属/超伝導接合面から距離変化した超伝導では、自発磁化軸に平行な外部磁場は自発磁化状態を安定化させる。この磁場中の自発磁化状態の安定化により、常磁性電流とchirality変化が起こることを、Ginzburg-Landau理論により説明した。結果として、D4h対称性のEu、Eg既約での自発磁化状態が安定化する磁場による自由エネルギー減少は、常磁性電流と距離におけるone-nodalなchirality変化をもたらす。このone-nodalなchirality変化は、自発磁化状態の安定化のための磁場によるエネルギー減少が全距離において起こることで生じる。この機構について、秩序変数と自由エネルギーの距離依存性を数値計算から示して、更にone-nodalなchirality変化に対応した秩序変数の距離における符号変化を自由エネルギー磁場依存項に関係した近似式として導出することで説明した。

LES study of turbulent flow fields over hilly terrains ? Comparisons of inflow turbulence generation methods and SGS models

著者|Tong Zhou
所属|Tokyo Polytechnic University Wind Engineering Research Center

Large eddy simulation (LES) is performed to numerically simulate the turbulent flows over hilly terrains with smooth surface. Two types of inflow turbulence generation methods, wind tunnel replication method and consistent discrete random flow generation method, are used to simulate the approaching flows for LES study of turbulent flow fields over simplified topography. The advantages and limitations of these methods are discussed in the context of flow patterns and turbulence characteristics. The performance of three different subgrid-scale models are investigated: standard Smagorinsky model (SM), (b) coherent structure Smagorinsky model (CSM) and dynamic Lagrangian Smagorinsky model (DLSM). The numerical results obtained from the CSM and DLSM are in relatively poor agreement with those of the experiment. The size of the recirculation region predicted by the CSM and DLSM are smaller than that of the SM. It is found that the closed-wake region is formed behind the 2-D ridge, while the open-wake region is established on the leeward side of 3-D hill due to the existence of the secondary flow. The open-wake region is well reproduced by the SM rather than the CSM and DLSM. The non-Gaussian characteristics of wake flow and the topography-driven twist effects are also examined.

嵩高い置換基を有するフェナントロリン配位子を有するコバルト錯体の理論計算

著者|上田 耀平
所属|大阪大学大学院 基礎工学研究科

新規に合成を行った2,9-位に嵩高い置換基を有する0価のコバルト錯体の電子構造、および末端アルキンとの反応における反応機構に関する知見を得ることを目的に、Gaussian 09 を利用してMulliken の電子スピン計算と末端アルキンとの反応時のエネルギー計算を行った。Mullikenの電子スピン計算の結果、不対電子がコバルト中心上に局在化していることを確認した。また、末端アルキンのC-H結合がコバルト中心にσ配位した中間体の存在を理論的に明らかにした。

格子QCDによる有限温度・有限密度QCDの検索

著者|若山将征,中村純,保坂淳
所属|大阪大学 核物理研究センター

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

4D-CT画像計測に基づく左心房内血流の数値流体力学シミュレーション

著者|大谷智仁, 和田成生
所属|大阪大学大学院基礎工学研究科

左心房内血栓症の発症メカニズムに対する流体力学的観点からの検討にむけ,患者の4D-CT画像計測に基づく左心房内血流の数値流体力学シミュレーションを行った.左心房の壁面運動が,左心房内部の血流の攪拌,ひいては内部血流の滞留を抑制する役割を持つことが示唆された.

高強度レーザープラズマ相互作用の流体シミュレーションに対する影響

著者|畠中 健,長友 英夫
所属|大阪大学レーザー科学研究所

目的 プラズマの密度スケールが長い領域に高強度レーザーを照射した際に顕著に起こるレーザープラズマ相互作用(LPI)を考慮した流体シミュレーションコードの開発を行うために、その影響のモデル化に取り組む。特に、電磁粒子(PIC)シミュレーションを用いて現象の数値解析を行い、データ収集、および現象の詳細な解析を行う。
内容  PICシミュレーションを用いて、長いスケール長のプラズマ中 でのLPIで発生する誘導ラマン散乱(SRS)、誘導ブリリアン散乱(SBS)をからの反射光スペクトル、および高速電子スペクトル等のデータ収集を行った。
結果 SRSとSBSによる反射光スペクトル、および発生する高速電子スペクトルのデータを収集した。従来研究に比べ、様々なスケール長、レーザー強度に対する現象について、長時間のシミュレーションを行うことができた。これによって、キャビティの発生、absolute SRS, convective SRSなどの成長に伴う反射光や高速電子の発生に強い影響を及ぼすことが分かり、今後のモデル化を進める上で、非常に有効なデータを蓄積することができた。

電離層プラズマ中の分極に関するシミュレーション

著者|山中千博
所属|大阪大学大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻

スーパーコンピューターを用いた2 流体シミュレーションを実施し、電離層プラズマ中の分極過程を評価した。計算機で与えた条件の下で、時間とともに分極が大きくなっている事が示された。今年度は、空間的、時間的に広大な範囲におけるプラズマ模擬実験のための、方法の構築をさらに進めた。

Accelerating In-Transit Co-Processing for Scientific Simulations Using Region-Based Data-Driven Adaptive Compression

著者|Marcus Carl Wallden
所属|大阪大学 情報科学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

QCDにおけるグルーオン励起とアーベリアン・ドミナンスの研究

著者|大畑宏樹,菅沼秀夫
所属|京都大学 理学研究科

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

エンタングルメントエントロピーを用いた静的クォーク・クォーク間のカラー創刊の研究

著者|高橋徹1,金田(延与)佳子2
所属|1群馬高専,2京都大学

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

微粒子がイオン液体に与える影響

著者|植木祥高
所属|大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

陽陰イオンから構成される高温液体である溶融塩にナノスケールの微粒子を混合した際の熱物性の変化を調査することを目的とした.分子動力学法を用いて熱伝導率に与える影響を調査した.また,固体表面上でのイオン液体の濡れ性に関する調査を行った.数値解析にはOCTOPUSを用いた.

自由噴流の混合制御に関する数値シミュレーション

著者|辻本 公一
所属|三重大学大学院工学研究科機械工学専攻

DNS(Direct Numerical Simulation)により,複数の自由噴流を配置し壁面に衝突させる衝突自由噴流について,多数配置した場合の流動解析,噴流自体を周期的に移動(振動)させる制御,開花噴流による制御を行い,伝熱特性を評価した.19本の多重衝突自由噴流を解析した結果,多重衝突噴流の伝熱性能の向上のためには吹き上げの発生を抑制することが必要であること,1列に並んだ4本の噴流を列方向に周期的に振動させることで比較的一様な流れ場と伝熱性能が得られること,開花噴流を特定の周波数と衝突距離の下で壁面に衝突させることで,ほぼ一定の均一な伝熱特性が得られることを明らかにした.

イオンビーム照射を受ける液体Li噴流内部の乱流熱輸送に関する研究

著者|帆足英二
所属|大阪大学大学院工学研究科 環境エネルギー工学専攻

核融合炉材料試験を実現するための核融合中性子源では、液体リチウム(Li)ターゲットに重陽子ビームを照射することで高エネルギー・高フラックス中性子場を形成するが、ビーム照射に伴う熱を除去するためにLiは高速で流される。施設の安全性や効率化を考える上で、液体Liターゲット内部の熱輸送現象を詳細に把握することは重要な意味を持つ。そこで本研究では熱負荷を受けるLi噴流内の乱流熱輸送のメカニズムの解明を目的とし、これまでなされていなかった大規模LES計算を実施した。結果として、底面壁近傍における乱流熱拡散と渦構造との相関を捉えることができた。

Large scale atomistic simulation of crack propagation in amorphous metals

著者|Hongxian Xie, Akio Ishii, Shigenobu Ogata
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

大規模分子動力学シミュレーションにより金属アモルファスを作成し、作成した原子モデルに対して同シミュレーション手法を用いてせん断負荷を印加することにより、金属アモルファス材料中のき裂成長過程を解析した。これまでより大規模なモデル(650nm x 82nm x 4nm) を用いることにより、切り欠き部から原子ひずみの高い領域が帯状に形成され、せん断き裂が成長する過程をより長時間観察することができた。これによりこれまで明らかになっていないせん断帯の幅やせん断部での温度上昇に関する詳細な知見が得られた。

レーザー核融合ロケットにおける円錐形推進剤の推進性能評価

著者|山村 徹, 枝本 雅史, 森田 太智, 川邊 智, 山本 直嗣, 町田 貴大
所属|九州大学大学院 総合理工学府

円錐ターゲットの推進性能を評価することを目的とし、円錐ターゲットと球状ターゲットの2つの場合において核融合反応が起きた直後を仮定して高温の核融合プラズマが推進剤を加熱し膨張する過程を二次元輻射流体コードStar2Dで計算し、両者を比較した。
数値計算の結果、円錐ターゲットの円錐推進剤の81 %は加熱されない事が分かった。また、輻射流体計算の終状態となる時間の推進剤部分の運動エネルギーと内部エネルギーの合計は計算体系全体のエネルギーの0.33 %であり円錐推進剤はほとんど推力に寄与しない事が分かった。球状及び円錐ターゲットの力積はそれぞれ12 Ns、0.75 Nsであった。運動量変換効率はそれぞれ47 %,55 %であった。

有限温度・有限密度2カラーQCDの相図と超流動性の解明

著者|伊藤 悦子
所属|慶應義塾大学 自然科学教育研究センター 特任講師

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

低次元強結合フェルミオン系の励起状態における集団運動

著者|岩野薫
所属|高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

混相流数値シミュレーション

著者|杉山 和靖
所属|大阪大学 大学院基礎工学研究科

VOF法/MTHINC法,Boundary Data Immersion法に基づく気液二相,流体構造連成コードの整備を進め,MPI並列版の動作確認を行なった.OCTOPUSを使用してのプロダクトランは行なわなかった.

脈動乱流場における運動量と熱輸送の非相似性 -熱的境界条件の影響-

著者|小田 豊
所属|関西大学システム理工学部

エンジン筒内の熱損失を高精度に予測する乱流伝熱モデルの開発を目標に,その基礎的な乱流場である脈動を伴う乱流熱伝達場を対象として,運動量輸送と熱輸送の非相似性が生じる機構について検討を行った.2019年度は熱的境界条件が非相似性に及ぼす影響を検討した結果、脈動乱流における非相似性は熱的境界条件が運動量輸送と相似な境界条件においても生じることを示した。

減衰全反射遠紫外 (ATR-FUV) 分光法と量子化学計算を用いた電極界面イオン液体の電子状態解析

著者|今井 雅也
所属|大阪大学 基礎工学研究科

2019年度公募型利用制度で採択された課題です。

Materials exploration by using materials informatics (MI)

著者|Genta Karino, Daisuke Tsukio, Satoko Tanigawa, Ken Saito.
所属|Graduate School of Engineering, Osaka University.

新規無機化合物の化学的安定性を見積もるためのモデルを構築するために,Materials Projectデータベースから15万件のデータをダウンロードし,深層学習により任意の組成の1原子あたりのエネルギーを予測するモデルを構築した.平均絶対誤差が0.19eVのモデルを構築できた.これにより新規化合物の化学的安定性をある程度予測することができるようになった.

Atomistic prediction of the temperature- and loading-rate-dependent first pop-in load in nanoindentation

著者|Yuji Sato, Shuhei Shinzato, Shigenobu Ogata
所属|Graduate School of Engineering Science, Osaka University

材料のナノインデンテーション試験中に観察され、局所領域での材料の機械的強度に根本的に関連する最初の変位バースト現象(第一pop-in)の発生荷重の温度・押し込み速度依存性を予測することを目的とし、896000原子を含むBCC解析モデル結晶をEAMポテンシャルで駆動してナノインデンテーションの分子動力学解析を実施した。解析中にて圧子直下に生じる原子応力状態を獲得し、その結果を基にNudged Elastic Band法を用い、第一pop-inに起因する転位核生成の活性化エネルギーを求めた。そして確率モデルから異なる温度・押し込み速度下での第一pop-inの確率分布を求めることで予測を行った。予測した第一pop-in発生荷重は温度が高くなるほど、また押し込み速度が遅くなるほど低くなり、実験での温度・押し込み速度依存性の傾向と一致していることから、本手法によって第一pop-in発生荷重が予測可能であることを確認した。

ポスト「京」に向けた航空交通流の大規模計算と可視化プログラムの開発

著者|安福健祐
所属|大阪大学サイバーメディアセンター

本研究は複数の相互作用する航空機モデルで構成されるマルチエージェントシステムをベースに、安全性、効率性、ロバスト性を備えた最適なフライトスケジュールの議論に利用しやすい大規模航空交通流シミュレーションツールの開発を目的としている。その開発段階では、大量の航空機軌道データを扱うためのビジュアルアナリティクスツールを開発して活用している。シミュレーションと実際の航空交通流データに対応して、データ同化ステップと最適化結果の有効性を直感的に検証できるインタラクティブな可視化プログラムを提案した。

グラフアルゴリズムにおける効率的ベクトル計算機実装

著者|高島 康裕
所属|北九州市立大学

2018年度の研究で問題になっていたバンクコンフリクトの確認を行なった.その結果,OpenMPをしないときにバンクコンフリクトが発生する状況が確認された.同じコードでOpenMP利用では発生していない.なお,この後,SX-Aurora環境で確認したところ,発生が見られず,原因究明はできていない状況である.

ReaxFF の材料科学分野における大規模化学反応系への応用

著者|牧野 有都
所属|大阪大学大学院 基礎工学研究科 衝撃科学共同研究講座

ReaxFF1) は、結合の生成・開裂を記述可能な反応力場を搭載した反応分子動力学計算プログラムである。この反応力場は、量子化学計算データに基づいて決定されているため、高い精度で化学反応を記述できる一方で、量子化学計算手法と比較して、数オーダー速い計算速度を有している2)。この特徴から、燃焼反応3,4)、触媒反応5)、および高分子合成反応6)など様々な分野で応用されている。
 我々は、この特異なプログラムを活用して、材料科学分野における複雑な化学反応が関与する現象の理解を進めたいと考えている。そこで、まずは ReaxFF の基本的な使い方を知ると共に、計算精度と速い計算速度の確認を目的に様々な先行文献の追試を行うこととした。例えば、Strachan 等によって報告された3)、広く知られた高エネルギー物質である RDX ([cyclic-[CH2N(NO2)]3) の熱分解挙動に関する研究を再現計算した。各反応条件における二酸化炭素や水などの低分子生成量の時間挙動は、先行文献と良い一致を示した。他にも様々な分野での ReaxFF 応用事例の再現計算を行ったが、いずれも先行報告と類似の結果を得た。よって、基本的使用法を修得すると共に、ReaxFF の反応ポテンシャルの精密さ、および高速計算に対応していることを再確認した。
 今後は、ReaxFF の特徴を生かして、今まで適用が困難であった材料科学分野の大規模な化学反応系へ適用することにより、複雑な反応ダイナミクスが現象を支配している新たな領域での研究を開始する予定である。

Fully self-consistent Relativistic Brueckner-Hartree-Fock theory for nuclear matter

著者|Sibo Wang
所属|Peking University,School Of Physics

核物理研究センターでは、サブアトミック世界の強い相互作用の基本原理である量子色力学(QCD)を中心に、素粒子・ハドロン・原子核物理学とその関連分野にわたる研究を、全国の共同利用研究者とともに行っている。スーパーコンピューターは、大規模計算を必要とする理論的な研究を中心に使用されている。その内容は、格子QCDによる数値シミュレーション、原子核構造及びハドロン物理現象論の数値的な解法を始め、深層学習の加速器実験への応用を含む。

(i) 格子QCD
ハドロン分光学(質量などの計算)とハドロン間相互作用、クォーク間相互作用、有限温度・密度における真空の性質・状態方程式、閉じ込め・カイラル対称性の問題

(ii) 少数多体系・原子核構造
3-4核子系の精密計算、原子核密度汎関数法

(iii) 機械学習
加速器実験への応用(加速器の運転制御、Belle実験・ILC実験での信号識別・フレーバー識別、ILC SiDカロリメータのエネルギー較正)

(iv) その他
2次元格子フェルミオン系、超新星爆発、弦理論

Interglueball potential in SU(2) lattice gauge theory

著者|Nodoka Yamanaka
所属|University of Massachusetts, Kyoto University

SU(N) Yang-Mills理論におけるグルーボールは暗黒物質の良い候補であり、宇宙の中規模構造の形成において重要である暗黒物質間の散乱を研究する必要性がある。
本研究では格子ゲージ理論におけるHALQCD法を用いてSU(N) Yang-Mills理論におけるグルーボール間相互作用を計算し、近距離における斥力的な振る舞いを示した [1,2,3]。
また、グルーボール間の散乱断面積を計算し、銀河の衝突の観測などからSU(2) Yang-Mills理論のスケールパラメータに対する制限を導出した。